王様の耳はロバの耳

言いたいけど言えないからここにうずめる

観劇報告書 〜ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』を観た

※ ネタバレをしています
※ 1000文字あたりで収拾がつかないことがわかりましたが、書くことを止められませんでした
※ 止められない衝動は、うまく付き合わないと身を滅ぼしますね
※ 見出しもつけずにただひたすら1万字書いてしまったので正気の沙汰じゃないです
※ こんな報告書出したらクビになります



2021年9月9日、ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』の初日公演を観ました。
その時のメモはこちら


その後、チケットを追加して
・松下アンダーソン
・木村ダニエル
・加藤ジャック
の回も観ました。


以下、その時の印象を中心に、思ったことを書きました。


時系列めちゃくちゃですみません
表記ゆれもすみません





松下優也さん演じるアンダーソンが登場して歌い始めた瞬間、私には松下アンダーソンの過去が「視えて」しまったんですよね…


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図1. 視えたやつ



・悪そうな奴は大体友達(昔は明るくていい奴だったので)
・松下アンダーソン、①なんとなく立場のイメージよりも若そうに見えた②歌声が甘甘の甘で素敵だった③容姿の系統が木村ダニエルと近いと感じた(似ているわけではないが方向性が同じというか…)④「そういう」キャラを私が好き などの信仰上の理由により私には完全に彼の過去が「視えて」しまっ



・しかもカテコの松下アンダーソン、たぶんなんらかのリミッターを解除して松下優也を出してきてるのでやばい


・松下アンダーソンは長男だから(長男だから?)若い頃は常に男らしく周囲を引っ張っていかなければという意識があって(ロンドンにも家父長制みたいなのあるかしらんけど)、だからポリーにとっては年下だけど「お父さんみたい」に思える(アンダーソンがそう思われたいと知っている)こともありつつ、彼のそんな強がりが可愛らしくもあった
・アンダーソンが引っ張っていたけど、きっと包み込んでいたのはポリー
(・現在:そんな、付き合ってる時は一切弱みを見せたがらず自分を頼りになんてしてこなかった彼が「頼みがある」と言ってくるなんてよっぽどのことだとわかったので即答のオーケイ)




・和樹さんアンダーソンの過去は全然違って、叩き上げという印象。
・ポリーと和樹アンダーソンの関係は本当に歌詞の通りで、和樹アンダーソンはきっとそのままの意味で「お父さんみたい」なんですよ…
・ポリーが脆く、悲しく、強いんだけど少女のような心の花が見え隠れする本当にいい女に見えるのは和樹アンダーソンの隣にいる時だなって……
・松下アンダーソンの時は母性とか年上としてのしっかりさみたいなものがあって、それもすっっっごくいいんだけど、
・単純に好みというか刺さってしまうのは和樹アンダーソンとエリアンナポリーの並びなんだ……どっちのアンダーソンがいいとかじゃない、どっちのポリーが好きかなんだ……
・シングルキャストなのにWポリーの解像度が高すぎる。エリアンナさんすごい。





・あと和樹アンダーソンはすごく乾いている印象で、逆に松下アンダーソンは湿度が高いなと。
・ロンドンという街の気候までは変わらないんだけど、この事件の質感が変わる。和樹さんはザラッ…とした感じで、松下さんはゴム人形を撫でている感じ。
・語り手が違うと同じ物語でもこうも違うんだなーと…!!すごい良きWキャストですねアンダーソン……





・ダニエルの印象にも変化があって、松下アンダーソンは歌声がとても甘いのと、自分の運命に向き合いきれない拗ねみたいなものを感じるから、そこに木村ダニエルが並んで歌うと(声も含めた)ダニエルの生真面目さが際立つんですよ。
・そのおかげで、『♪最後のチャンス』のところでダニエルが「必ず捕まえてください!!」とか真正面から大真面目に言ってるのがすごく引き立つんですよね…
・さらに結末を知っていると「この人何言ってるの?」という怖さもより大きくなって。これが“化学反応”ケミストリー……


・一方和樹アンダーソンは恫喝的で荒さと威圧感があるので、細身のダニエルがちょっと頼りなくも見えるというか……
・だからダニエルが和樹アンダーソンに中毒症状を指摘するところ、できる医者っぽくて大好きなんですけど、根に持ってるのかな、ちょっと反撃したかったのかなとも思えて「かわいいわね(byグロリア)」と思いました。アンダーソンたちに基本ずっと敬語を貫くところも好き。(「おい、なにやってんだ!!!!」も好き)
・あ、これは松下アンダーソンの時に気がついたんですけど、椅子ごと蹴っ飛ばされたシーンでそのあとダニエルがずっと左腕をおさえてて、私の中のグロリアが「痛かったのね 大丈夫?」と言っていました。(本当の怪我じゃなければよいけど…)





・最初の事件報告の歌のところで、「若い紳士ヅラで娼婦を誘い出し大金をちらつかせ…」みたいなこと言ってた気がするんだけど、ここはもうアンダーソンはジャック=ダニエルだと思って言ってるんですよね…?1888年ジャックであるダニエルも娼婦に大金をちらつかせてたのか…!と思って…余計にえぐいなあと……それもう娼婦に一緒にアメリカ行こうって言ってた米国人医師とやってることかわりないじゃんね……悪意の有無の差だけ。それは外からはわからない。



・というかそもそもの話で、モンローがお金の話をよくしてるからそこまで目立たないですけど、ダニエルも悪気なくお金で解決してきた人ですよね。お金を欲しがってないからそんなに目につかないだけで。
・最初の馬車の事故の時もそうだし(これは聖人みたいな行動だけど、ダニエル自身がお金に困っていてもできたかわからない)、遺体の不法取引もそう、グロリアをアメリカに連れて行けるのもそう。木村ダニエルの真っ直ぐさ、一途さはお金によって持続できている面がある。
・それが崩れるのが二幕で、ダニエルはお金で解決できなくなってしまってから本格的に暗闇の道を邁進し始めたなあと…
・というか、お金という自分で倫理的に問題ないと思い込めなくもないギリギリ最後の手段を失ってすらも「止まることができなかった」のが重要なのかな
・木村ダニエルの「1万ポンド出すと言っても」みたいな言葉の“1万ポンドだぞ1万ポンド!!なんで誰も遺体を提供しない!?”みたいに思ってそうなお金の価値を強調する言い方が最高なんですよね……
・多分ダニエル無意識だから余計に。お金で動く人がいるだろうとナチュラルに思っている。
・自分は100万ポンド出されてもグロリアの遺体を売ることなんて絶対できないはずなのに、1万ポンドでそれができる人がいると信じてる。純粋で真っ直ぐで一途な人を支える「お金」というゲタの存在と、悪意のないナチュラルな傲慢さ。


・お金で解決できなくなって、墓を荒らし(いやここでもお金払ってるのかな?)、「もっとひどいこともお話ししましょうか」みたいなこと言ってるからなんか他にもやってるのか…「自分でも罪深い人間であることはよくわかっています」みたいな台詞の言い方も、逆ギレっぽくて好きなんですよね


・グロリアへの愛のために倫理観なげうって突き進んでてここまででも十分やばいんだけど、それでも殺人はできない、自分は医者だから、ってこれも木村ダニエルは本気で言ってんですよね……彼は本当にいつでも本気で、嘘ってたぶんほとんどついてない
・木村ダニエルの意識的な嘘、グロリアへの「お腹が空いたかな」と「馬車の事故があったから新鮮な内臓もらってきたよ、お金は払ったから大丈夫だよ」くらい…?
・そこのシーン見るとダニエルは表情も内容も、本当に嘘が下手なんですよね……馬車の事故って「初めて会った時」じゃん…………そりゃバレるよね……



・この「嘘をつくのが下手なダニエル」を見せられたからこそ、グロリアへの愛と同じくらい大切にしたい「医師としての良心」を確かに持っていると感じさせるんですよね。言う時動揺してないし、本当にそういう目をしてるから。
・一点の曇りもない目、「誠実だからこその迷い」を感じさせる口調、そういうのが上手い方だなあと思います、木村さん。




・で、自分では良心に反してできないけれど、グロリアも諦められないからジャックにお願いした(ダニエル本人はそう信じていた)→グロリアにバレた→もうグロリアを悲しませたくないからやめよう→告発→「絶対に捕まえてくださいね!!」→やってしまった の流れ、本気で本人は最後まで気づいてなかった感じで演じてると思うので、なんかこの、「ダニエルは本気、ダニエルは大真面目」だけど「はたからみるとやばい」の凄みがすごい(凄みがすごい)
・ダニエルは一幕から大真面目、二幕も大真面目、ずっとずっと、真犯人に気付くまで大真面目。



・医者としての良心&グロリアを悲しませたくないダニエルの愛が本体に残り、たとえグロリアが悲しんだとしても他の人間よりもグロリアを生かしたいと願うダニエルのエゴが1888年ジャックとして分裂したというふうに現時点の私は受け取っています
・ダニエルと1888年ジャックに心が引き裂かれたことまで含めて「木村ダニエルの中では一貫性がある」というのが個人的な印象。
・医者としての良心を放り出すことができたなら、グロリアへの愛を諦めて自分のエゴを優先することができたなら、彼の心は引き裂かれたりはしなかった。自分の意識の上でジャックを演じることができなかった点こそ、ダニエルの良心や愛の強さを物語っていると思うんですよね…
・『♪もう止められない』時点、グロリアに秘密にしておければ悲しませることはないからジャックの力を借りていても大丈夫、という理屈でダニエル本体は立ってると思う
・グロリアに知られていたとなると話が変わってくる
・グロリア的にはジャックが実行犯だろうがダニエルが実行犯だろうがもはや悲しみは変わらないと思うんだけど、ダニエルにとってその違いは大きかったんだろうなあ
・告発時点で残された最善の道は、医者としての良心&グロリアの気持ちを優先してジャックを捕まえ罪を償うことだし、実際ダニエルは本気でそれをやろうとしていた。(自分がジャックだと知らなかったから)
・グロリアを苦しめてまで自分のエゴを優先させられないと思っての告発だったはず
・それでも止められなかった、1888年ジャックが出てきてしまったっていうのはもうエゴの暴走でしかないと思うんだけど、そこまで相手に「生きていてほしい」と強く願えるのって、それはもう、一周まわって愛と呼んでもいいんじゃないかって思ってしまったよ………


・なんならダニエルが犯人だってダニエル本人が一番最後に気付いてるくらいの勢いだよね…
・研究室でもアンダーソンは鎌をかけたりしてわりとずっと疑ってるよね
・自ら手を下すことはアウトで、他人にお願いすることはセーフってその線引きどうなってるんだよと思うんだけど、木村ダニエルの良心にとっては本気でそこだけが拠り所だったんだろな…まあどっちも自分だったんだけど…
・ていうか本当に、なまじグロリアを生かす可能性のある術をダニエルが持っていたことが不幸の始まりだなあと……



・ダニエル、「小説のように出会ったんだ♪」って歌うけど、仮面舞踏会とかならわかるけど遺体の不法取引現場なんだが…!?襲われかけてたんだが…!?という気持ちが拭えない。
・ダニエルフレンズは何も知らないから笑ってさすがかっこいいねとか言ってるけど、私は知っているので聞き流せない
・特異だなあと思うのは、この「周りには不法取引のことを知られていない」状況について、必死で隠してるとか、後ろめたく思っているとか、そういう意識上の二面性みたいなものが全く感じられないこと。普通になにも悪いと思ってなさそうだけどそれなら隠さないで言っちゃうだろうから、隠してはいるんだよな、ということを踏まえるとあのなんのひっかかりもない朗らかさは本当になんなんだろうと思う。
・「ピュアで真っ直ぐで医者としての使命と愛に邁進するダニエル」。最初から最後まで一貫してる



・「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」この若山牧水の歌が初日にダニエルを見ている間ずっと頭の中をぐるぐるしてて、最初は暗めの舞台上でダニエルが眩しすぎるな…くらいのイメージだったんだけど、進むにつれてこの染まらなさはなんだろうと思うようになった
・この歌にはずっと孤高とか高潔とか、そんなイメージくらいしか持ててなかったんだけど、周囲とまじわらない、そまらない、その状態の先か後には狂気にも見える何かがあることがあって、それがはたからは「美しく見える」こともあるのだと、そんなふうに思いました
・(感想文)
・その状況において「白鳥は哀しからずや」と問われれば、「哀しくはない」のかもしれないなーと、そのための「狂気のようにも見えるもの」だから。それは愛とか使命とか情熱とか、そういうものなんだろうね
・止められない衝動は多くには理解されないからこそ、その人をその人たらしめるものであるんだろうなあ(1万字の怪文書を書きながら)



・「船は待ってくれないぞ〜」への「心配するな!」の言い方、シャンドン伯爵の「夢じゃない!」を思い出して好き
・「アメリカに連れて行く」も影山とかジャンミッシェルとか思い出したり…木村さん、すっごく成長してるけど、昔の良さもそのまま連れてきてくれている


・一幕終盤でグロリアと再会して、全てを知って絶望してうずくまって………からの顔を上げて「僕のせいだ」がめちゃくちゃいい、あの瞬間からダニエルの地獄が始まってるし、「思い込みの強さ」の針がビーーン!と振り切ったのが見えた。木村ダニエル、あそこでもう全ての腹を括っている。1888年ジャックが自分だっていうのは本人が一番予想外だったかもしれないけど、どんな最悪の未来も受け入れて修羅の道にも堕ちる覚悟がもうこの時点で見えてる。
あの一瞬の切り替えが最高だよ〜〜〜


・死体の布バサァが鮮やかだな…


・よく出てくる「らららら~らら~ら~ら~ら~ら~らら~ ら~らら~ら~ら~♪」のメロディが好き
(#JTR語彙力がなさすぎて伝わらない感想選手権)


1888年のジャックはダニエルなんだなーとあらためて思うと、「愛に犠牲はつきものだ」ってジャックが言ってダニエルがハッとして「犠牲」「犠牲」「犠牲」と同じ言葉の繰り返しで意味が変遷していくところ、あそこもダニエルのターニングポイントよね……正当化のための言葉を見つけてしまった
・普通「愛に犠牲はつきもの」の犠牲って自分サイドに出る犠牲な気がするんだけど、ダニエルの思う犠牲ってなんなんだろな なんかこう、グロリアへの尊い愛というもののためなら多少他の人が犠牲になっても仕方ないみたいなニュアンスのように感じるんだけど、まだよくわからないな。
・ダニエルさん「そういや十万ポンド減ってないな〜」とかは思わなかったんだろうか。



・ダニエルの帽子とマント着るとこのジャックとのマント捌きシンクロかっこよ!!!
・でもあの格好よく考えたら普通に1881年ジャックになりすまそうとしてるのね…1888年ジャックは「真実の愛(エゴ)」で動いてる分本当にやることがえぐい
・紳士的な格好だからご遺体にマント被せてあやしいとこに立ってても職質とかされないのね….



・『♪こんな夜が俺は好き』、ダニエルのエゴが言ってんのか…と思って聞くと結構普通にそのようにも聞こえた。




・加藤ジャックは絶対的な概念
・口笛の音は大地が震える音
・ダニエルは「俺だけの傀儡」
・属性:地 or 神

・堂珍ジャックは心の隙間に吹き込んでくる風
・口笛は本人が吹いてる
・ダニエルは「兄弟」
・属性:風(とにかく風)


・ジャックも最高のWキャストですよねーーー加藤ジャックはすべての父だし、堂珍ジャックは笛を吹く悪魔という感じ……




・『♪もう止められない』の「目をつぶればいい」みたいなところ、目を瞑ってるお顔の造形と白手袋の構図の美しさがやばすぎる 手で目を覆いきらないのが天才 宗教画かと思った
・『♪俺がジャックだ』で見せてくれた狂気は、「やってくれるであろうと思ってくれた狂気」を何倍増しにも最高にしたやつなんですけど、『♪もう止められない』は「知らない木村さん」なんですよね……
・正確にはこの前の出演作「The Last 5 Years」の『♪ If I Didn't Believe in You』や『♪ Nobody Needs to Know』で初めて観た木村さんなんですけど、そこからさらに表現力が深まっていて、こんなに情感を歌に込めることのできる木村さんは本当に知らないなあと思いました。
・木村さんの光の演技も闇の演技も見たことはあって、今回それらの表現はさらに強度が上がっているけど、「深海に連れて行かれて目を瞑って光を思い出す」みたいなお芝居を見たのは初めてです。
・難しいな。何言ってるかわかんなくてすみません。
・チェロみたいに響く低音が本当に好きです。






・え、木村ダニエル良すぎない?(初心)




・『♪俺がジャックだ』はそれだけで2時間くらいやってほしい
・もし万が一映像が残らないなんてことがあるならこの歌をグリブラでやってくださいWOWOWさま 全組み合わせでお願いします
・雷鳴時の二人の吹っ飛び具合好き
・今まで見てきたダニエルはなんだったのかと思うくらいの木村ジャックの瞳孔の開いた目
・抑圧からの解放と昂揚を感じる
・机の上の治安が悪い
・メスを後ろに投げるときの放物線がきれい
・指の背で唇をぬぐった!!天才!!
・指の鉄砲パン
・表情も仕草も本物のジャックたちより少しだけガラが悪いと思う
・たまに目、赤くない?照明?
※ 追記:配信ラジオ「K MC倶楽部(仮)」にて、ダニエルの目に映るグロリアという光を表現するために下手側の強いライトの光を目に入れながらやっている、という旨のお話がありました。(13:30頃から)
だからほんとにここでも赤い照明を目に映してるかもしれない!わからないけど。



・『♪カオス』の途中まで、アンダーソンとダニエルとモンローの正義と倫理観(全員おかしい)のぶつかりあいを飲み込むのに必死すぎてグロリアのことを忘れてしまうので、彼女が出てきた時「まだ人いたーー!!!!」と思う
・あのカオスなシーンの歌のタイトルが『♪カオス」なの、作ってる人もカオスだと思ってるんだな~って思えてすごく良い


・カオスのシーンはお芝居や動きや立ち位置やテンポ感のバランスをひとつでも間違えるとめちゃくちゃ空回りするか観客ポッカーンになると思うので、場を白けさせたり観客を置いてけぼりにすることなくちゃんと劇場全体をゴールへと駆け上らせていて本当にすごい。(脱落する人もいるだろうけど)みんなクライマックスに連れていく!!!という熱量に圧倒される。お芝居はもちろんだけど組み立ててる演出がすごいんだろうと思う。


・ここでの『♪もしかしたら』リプライズ、パートを入れ替えて歌われることで「あの時グロリアはどう思っていたのか」=「初めて会った時 心が震えた」とダニエルと同じような気持ちだったことが明らかになるわけですけど、ねえ、ダニエルはわかってるかわからないけどこのグロリアの「心が震えた」はダニエルみたいに恋とか愛とかだけの話じゃないんですよね。
・ここから抜け出せるかもしれない、新しい世界に飛び立てるかもしれない、自分を愛してくれる人と幸せな生活を送れるかもしれないっていう、夢とか生きる希望とかそういう、人の目が再び輝きだすための全てをダニエルはあの時くれたんですよね
・彼女があの時もらったものは、変な話、ダニエルがグロリアと出会って得たものと等価ではないと思うんですよ。
・だからこそ、たとえ記憶がなかったとしても、無意識のエゴの大暴走だったとしても、1888年ジャックは娼婦に大金をちらつかせたりしてはいけなかったんですよ。もちろん殺害そのものがダメなんだけど、その前に一瞬でも彼女たちに希望の光を見せて心を震わせさせたことがどれだけ罪深いことなのか、たぶんダニエルには理性があってもピンとこなくて、そういう人だからこそ、無意識とはいえ一線を越え罪を犯してしまったのかもしれないと思う。
・でも、そういう人だからこそグロリアに光を与えられたのだという、このねじれを、ねえダニエルが早くわかってたらこんな不幸は起きなかったよねと思いました。
・長く生きられなくてもアメリカに行けなくても病気の恐怖と常に戦わなくてはいけなくても、そばにいて手を握ってくれる人さえいてくれたら、どんなによかっただろうか。




・『♪風とともに』でグロリアにお花をあげていたお姉さん、そうやって祝福して送り出せるのすごいよね……表情での感情表出が最小限で、すごく納得感があって……碓井菜央さん、ダンスもかっこよくて素敵でした。ダニエルの最初の犠牲者も碓井さんだったかな…?
・女主人の菅谷真理恵さんの歌は聴いただけで気持ちがスカッとして耳が10歳若返る。
・床に増えていく新聞紙、色々なシーンで効果的に使われているけど、娼婦が切り裂かれたときに血しぶきの表現でバッと飛び散るとき、号外を配るときみたいな動作で撒かれるので、視覚的比喩表現が二重三重にもなっていて、かつ効率的で美しいなあって……娼婦の血はそのまま特ダネになると。抉る演出



・田代さんモンローの小悪党ぶりは、赤塚不二夫作品のサブキャラの中に紛れ込ませても霞まない。
・大衆の代弁者であり、煽動者ではない
・お金のためだけに動いているような気がしていたけど、「ジャック・ザ・リッパー 」と命名したことを誇らしげにアピールしたりするの見るとやりたくて新聞記者という職をやってるんだなと感じる。たとえ大金が手に入っても仕事はやめない感じがする
・新聞記者という本分への執着が最後に勝ってしまったからこその最期の「あと一枚!」かなあと 大金を手に入れたいだけならあそこで逃げても十分だったでしょと思う 引き際を見誤ったことがモンローが一番最後に何を優先したかを表しているのかなって。モンローは(自分の中の)正義、ダニエルはエゴ、アンダーソンは(最後の最後に)愛。
・田代さん、腰を落としてあちこちにあらわれて、スクワットみたいに体力使いそうですごい 棒立ちの瞬間が訪れない


・グロリアが亡くなって、ジャックが帰って、憑き物が落ちて、目的を失ったときに、それでも木村ダニエルは目が死なないんですよね。撃たれてしまうまでに、グロリアとの希望を感じさせるようなエネルギーすらあって、私はここがすごく木村さんらしいと思いました。死を前にして生に手を伸ばす、『エリザベート』のルドルフもそうだった。
・2階席から観たら、最期に伸ばしたダニエルの手がてのひらひとつぶんグロリアに届かなかったのがよく見えました。



・アンダーソンがポリーを囮に利用したこと、松下アンダーソンは「自分の運命ときちんと向き合いきれないままポリーに甘えてしまった」感じで、和樹アンダーソンは「愛やエゴよりも自分の本分、使命を優先しようとした」という感じ。
・前者は木村ダニエルと相似形、後者は対称。和樹アンダーソンはもっとエゴを優先しても良かったんじゃないかと思っちゃうし、そういう生き方で多くのものを失ってきたからこその依存症のように見えるし、ポリーはそれをずっと見てきたんだろうなって…………


・記憶違いかもしれないけど最初の歌でアンダーソンは「消えてくれ」みたいなこと言ってましたっけ?なんかそれと窓に映るジャックをあわせて、ダニエルは死んだけどアンダーソンの中のジャックは結局消えてないんだなあと思った気がしたけど幻聴かもしれない。
・これだけダニエルについてあれこれ言っておいてあれだけど、信頼できない語り手決勝戦でコカイン中毒のアンダーソンが勝ってしまったからには、この物語はひとつも信用できるところはないというのが、ねええええもううううう


・初日に刺さった、アンダーソンが語るのをやめた理由の話(再)。
また台詞全然覚えられなかったんですけど、「ダニエルの話は世に出してはいけない、なぜならポリーや他の娼婦たちがただのロマンチックな物語の小道具になってしまうからだ」みたいなの。前のメモでは「大衆に消費される」云々を書いたんですけど、実はこの台詞を聞いて真っ先に思い出したのは、ニュージーランドにおけるモスク襲撃事件の容疑者について語った、2019年のアーダーン首相のスピーチでした。

「テロの目的の1つは、悪名をとどろかせることだ。だから私は今後、男の名前を言うことはない。むしろ命を奪われた人たちの名前を呼ぼう。ニュージーランドは男に何も与えない。名前もだ」
NHK政治マガジンより)

劇場から一時的に現実世界のこの言葉を経由して、また劇場に戻った時、一気に身に迫ってきたのが、モンローが「ジャック・ザ・リッパー」というキャッチーな名前を付けたことの罪深さでした。
そして、この襲撃事件のあらまし…「容疑者が銃を乱射する様子を自らSNSで配信した」「動画は削除後も拡散され続けた」を頭の中でなぞり、ああ、変わらない、変わらない、と思ったのです。
ホワイトチャペルの中と外。新聞紙面の中と外。スマホの画面の中と外。
物語を必要とするのは、いつだって外の人なのだと。
そしてもうひとつ、こちらは家でその記事を読んで、劇場のことを思い出したのですが…


この記事が一般的にどのような捉え方をされたのかわかりませんが、劇場で私が観たものは、このような「仮説」記事の、そのさらに延長線上にあるものなのだと強く意識しました。
なぜか時間が経つにつれ、第三者が断片を集めて繋ぎ合わせ、語り始めてしまう。当事者たちを差し置いて。
口を閉ざしたアンダーソンのことを思わずにはいられませんでした。いや架空の人物だよ。
名作演劇は繰り返し上演されることが多いからこそ、舞台上に作り上げられたその世界の土台にはつねにその上演された時代ならではの空気があり、受け手が思い起こすものも時代によって変わっていく、そこのクロスオーバーがまた作品の血肉となっていくのだねと思いました。








・ていうか一幕で「ぼーくにーまかーせてー」って入ってきた医者のダニエルさんかっこ良すぎない!!?


・一回「ジャック」を「ソヤッ」と打ち損じたために、事あるごとにソャッがサジェストされてしまう 勢いが良すぎる やっとジャックザペッパーが出なくなってきたところなのにソャッ


・これ小野さんを見ないことには始まらなくない?????小野さんダニエル、動画や写真でしか見れてないけど絶対にやばいんだよな……雰囲気が柔らかい
・でもこのままだと身を滅ぼすからほんと……
・今まで見たのだと加藤アンダーソン、木村ダニエル、堂珍ジャックのバランスが好きです。
・松下アンダーソンは別枠で心の中のホワイトボードに貼り付けました。とりあえず録画したまま見られてないメタマクを見ようと思います。どれくらい出てくるのかな…!!


・カテコの木村さん「俺が殺人鬼 俺が殺人鬼」
理性的で誰にも流されない私「他にもっとカテコらしい歌があるのでは」
本物の私「最高!!!!!!!!!!」
感想を書く私「引き裂かれそうでした」
・そういえばカテコのこの歌の最後、木村さんがアーーー⤴︎⤴︎てめちゃ高音に上げるんですけど、2階だとあんまり聞こえなかったのでもったいない!!!!!!聞かせて!!!!!と思いました あれすごい最高なので




・ついったーから残しておきたい初日の感想の転載
木村ダニエルが一番最初にバーンと登場した時、本人の放つオーラ・衣装・照明・位置取りなどなど総動員した結果の驚きの眩さが「しゅ、主役〜〜〜〜!!!」って感じだったのであの時点でもはやすべて見届けた…ありがとう…(日生劇場に住みたい…)という気持ちになりました



おわり!