王様の耳はロバの耳

言いたいけど言えないからここにうずめる

ミュージカル『スリル・ミー』の『九十九年』について書く

スリルミーのパンフのMusical Numbersのページを見ました。
そこに「M21 九十九年 Life Plus 99 Years」と書いてあったことにめちゃくちゃ驚いたので、もう一つ記事を書くことに決めました。


以下、木村さん前田さんペアの『九十九年』(配信版)について、好きなところを書きます。
私=木村達成さん私、彼=前田公輝さん彼、わたし=筆者です。



⚫︎ 日本語版のタイトル

原題『99 Years』じゃなくて『Life Plus 99 Years』なんだ!!!!というのがパンフを見て驚いた点です。
なるほど確かにWikipedia「刑罰 終身刑+懲役99年」って書いてあった……そのことですよね。(追記:パンフのあらすじにも書いてありましたね(今読んでる)。)
そのタイトルがそのまま『終身刑と懲役99年』となるのではなく『九十九年』と訳されているところがまず好きで、しかも『99年』じゃなくて『九十九年』と漢字表記になっているところにまた強いこだわりを感じます。
実際に込められている意味はわからないけど、漢字だとより文学的なイメージになりますよね……普段ニュースとかで見る表記って「懲役15年」とかのアラビア数字だと思うんですが、通常そう書かれているものがそうじゃない漢数字で書かれることで、ただの具体的な「年数」から何かしらの意味を持つ「歳月」になる感じがします。
あと今さらっと流してしまったんですが、端折られた『Life(終身刑)』という部分もタイトルとしてすごく重要な部分だと思っていて、『九十九年』にはない「死ぬまで」、という意味合いを見出せると思うんですよね。その重要な言葉を省いた思い切りの良さがすごいなって……でも省いたのが頷けるくらい、『九十九年』という言葉には見た目も響きも特別感があります。
それとあと、日本語で「九」が「苦」を想起させるために縁起が悪いとされている点もこの『九十九年』という言葉の印象にうっすらと影響を与えていて面白いなあと思います。


⚫︎ 「九十九年」の音のおさまりの良さ

これすごくない?!!!!??!
原曲のほうではなんて歌ってるんだろう!?って知りたくなるくらい、
「きゅーじゅーきゅーうねーんー」という言葉の響きがメロディとピッタリあいすぎてて最高じゃないですか???
一回聞いてからそのあとずっと歌ってるもん。「きゅーじゅーきゅーうねーんー」って歌いながらカレー作ったもん。
これ何がすごいって、「九十九年」のもとの発音も「きゅーじゅーきゅーねん」って伸ばし棒が入ることなんですよもともと伸ばしてるところがメロディ上でも伸ばされてるんですよねだから気持ちよく口ずさめるんだと思うんですよすごすぎない!?
しかもさあ……標準語での「九十九年」の発音は「きゅーじゅー⤵︎きゅーねん⤵︎」だと思うんですけど、この歌では「きゅーじゅー⤴︎きゅーねん⤵︎」って「九十九」の途中で音程が上がるじゃないですか!!ここで盛り上がりが生まれることにより「九十九」という言葉により強い思い入れがもたらされてるんですよね!!!!すごい!!!!


⚫︎ 三拍子

このブログで何度でも書いてるんですけど私は三拍子(6/8拍子含む)がほんとうに大好きなのでもう三拍子なだけでひれ伏すしかないんですよね。
三拍子、めちゃくちゃ「数奇な運命感」出るじゃないですか……………………………エリザベートのマイヤーリンクしかり、アナスタシアのOnce Upon a Decemberしかり………この作品だと他には『♪死にたくない』が三拍子だと思うんですが、この二曲が三拍子であることにより、彼が私の手のひらの上で踊らされてる感が増すんですよ……特に、死にたくないはワルツっぽいので余計に。私に搦め捕られていく彼の哀れさが三拍子によって暗示的に強調されていると思います。


⚫︎ 長調短調が混ざり合ったようなメロディ

これ短調なんですか長調なんですか……?わからないんですけど短調ですか………?哀愁を帯びたメロディなのに「九十九年」のところはどこか清々しさもあって、彼の戸惑いと私の勝利宣言が入り混じるこの歌にぴったりだなって感動しています。


⚫︎ 私「信じていたよね 君は」の目の表情の切替え

ここだけじゃなくて、木村私、目を見開いたり細めたりのタイミングがメロディの空白が生む情緒とぴったり合っていて完璧。見ていて本当に気持ちいい。あと1番の終わり(最初の私パートの終わりの99年のあと)で口を開けて息を吐くのが台詞や歌詞と同じくらい意味を持ちすぎてて最高。


⚫︎ 「判決は出た」のタメ

サビ前のこの歌詞、からの「きゅーじゅーきゅーうねーんー」は最高すぎる。『九十九年』は全体的に次の歌詞が気になるように書かれている気がする。


⚫︎ 私「僕のものだ」での満面の笑み

木村私、本気で喜んでるし心の底から嬉しそうだしすごいなあと思って……「所有宣言された彼の気持ちについてまったく意に介さない」様子なのが本当にこのひと本物だと感じさせてすごい。その上で、「一緒に死ねるならそれも悪くない」のあの笑顔ですから……と来ての、「怖くなったか?」でちょっと不安げな表情を見せるのがまたこちらの情緒の胸ぐらをぐいぐい掴んで離さないんですよね!!!!


⚫︎ 彼「君を(うんうんうん)認めよう」←この頷き

前田彼はまだ虚勢を張っている、というのがこの頷きだけでものすごく伝わってきてすごい。そして「君は孤独だ ひとり」と最後のカードを切った時の笑顔が、その次に映る木村私の本物のそれとは明らかに違う強がりの笑顔なのがもうこの二人最高か!!!!!!


⚫︎ 「永遠とは言わない 死ぬまでは」の表情の対比

彼の引き攣った顔と私の笑顔、お二人の背格好が似ているから余計に対比が引き立つ。
ここの「死ぬまでは」は終身刑が背後にあると思うんですが、ここで「永遠とは言わない 死ぬまでは」って言ってるのに最後に私が「永遠に」って言ってるの、私は「死ぬまで」が「永遠」とほぼ同義と思ってたんだろうな、と解釈しました。19歳だから………若いから………それが彼が早々に「先に」亡くなってしまったことによって崩されたから54歳の木村私はあんなふうになってしまったのではないか、と考えております。(3ペア見たのですが(本当は全部感想書きたい)松也さん松岡さんの54歳の私が木村さんに比べて生気があったことに驚いてしまったので……)木村私は本気で彼を自分のものにできたと思っていたのに、彼の早逝によって全てが完璧だったはずの私の計画が潰えてしまった。私の唯一の(本当に唯一の)望みが断たれてしまった。その後の人生、どんな気持ちで送ってきたのか……とも思うし、むしろ前田彼は亡くなるまでどんな気持ちで生きていたのだろうとも思う。


⚫︎ 彼「九十九年」の顔

私の「永遠に」の前の彼の「九十九年」、彼が99年という年月の途方もなさを感じている顔だーーーーーーッッッッって思わされてガツンときました。わたしは『♪死にたくない』ですら前田彼はまだ虚勢を張っていると思っているんですが、ここでついに仮面と鎧が割れた!という感じで、「やっと会えたね」と思いました。本物の彼にやっと会えた……ここでの頷きは「君を認めよう」の時の頷きとは違う、「出てしまった」頷きなんですよね。前田彼の仕草や表情、本当に雄弁で彼の人となりを余すことなく伝えていて、1秒たりとも見逃したくないと思わせてくれました。


⚫︎ 「永遠に」

スリルミー、永遠という類の言葉がよく出てきていて、キーワードのひとつだなと思って一瞬全部ピックアップしたい衝動に駆られたんですが時間が許さないのでやめました、何度も言うけどなんで一日は24時間しかないの!!!??
気になったのは、『♪契約書』で「二人は正式に結ばれる 対等な立場で 永遠に」って彼が言ってるし、最後は「二人を決して離さない 永遠に」って二人で言ってるんですよね。
で、実際なんだかんだ彼も律儀に契約を守っていたわけなのに、私はどうしてその契約では満足できなかったのかなあと。(わたしは前回の感想にある通り木村私は久々の放火のあたりからもう殺人にエスカレートすることを見込んで全てを計画していたと解釈しています)
色々考えたんですけど、ひとつめは、彼に殺人を続けさせるわけにはいかなかったから。うまくいったらきっと次はもっとエスカレートする。でも、それを止めることはできない。(私は彼がそれでしか幸せを感じられないことを知っているから)だからこうするしかなかった。ふたつめは、これから先、自分にも結婚の話とかが出てくるに決まってるから。同姓間の性交渉が違法であった時代に、彼とずっと一緒にいられるのは刑務所しかないと考えた。みっつめは、紙上の「契約」なんかじゃなくてもっと魂と魂の結びつきを求めていたから。よっつめは、彼がいずれ契約を守らなくなることがわかってたから。とか色々あれこれこねくり回してたんですけど段々どうでも良くなって、いや私は最初から「彼とともに生きていくため」って言ってるよなってなりました。ただそれだけ。それを実現しようとしたらこうなりました!ってだけなんだよな……と思うと、私の純粋さとその結末が哀しすぎて……しかも、それをこの時の私はまだ知らない。だからこんなに満面の笑みで嬉しそうなんだと思うともうたまらないです。
余談なんですが、色々こねくり回して考えてた時、一方で彼の欲しかったものって(私とは正反対の)「自由」だったんじゃないか……?と思えてきて、木村私「自由?……自由」って後者の「自由」で目に生気が宿ったのってそのことに思い当たったからなんじゃないかなんて思ったりもしました。


⚫︎ からの泣き顔

最後「永遠に」で呆けたような笑顔から満面の笑みになって、すぐ54歳の私になる、その間の一瞬、私、泣いてますよね!!?!!?泣いてますよね!!!!???どうして泣いてるの!?!!やっぱり彼が負けるところは見たくなかったから!!!??あとなんだろう!!??色々考えちゃう!!、!そういうとこなんですよ!!!!!私が木村さんの演技にさっくりハマってしまうのは!!!そういうとこ!!!!!
これからもよろしくお願いします!!!!
以上!!!!!