王様の耳はロバの耳

言いたいけど言えないからここにうずめる

木村達成さん写真集感想メモ

ハイステ福岡公演と大千秋楽ライビュの感想メモを書いている途中ですが、
ここで木村達成さんファースト写真集『PARADOX』が我が家にも届いてしまったのでその感想をメモせざるを得ない。


せざるを得ないでしょ…!!!!


以下、メモ。雑ですみません。
便宜上勝手にタイトルつけてますが一個人の印象です。
ネタバレしていますのでご注意ください。



・直筆サイン本が届いた
祀りました。



・表紙
最高か



・裏表紙
っ…



・表紙
最高か



・裏表紙
いわゆるクソ生意気な顔してるけどトビオちゃんとは全然違うしその指!!!!



・裏表紙の帯
何も知らない人が「予測不可能なミステリースペック」って言葉見たら「不思議ちゃん系の人なのかな?」って思いそうっておもいました(余談)



・ディーラー
あー、わかるわかるこんな感じね、木村達成さんの演じそうな役のイメージってこんな感じ。



・パジャマ
ちょ、まっ、えっいきなり????枕抱えてるのとクリームつけてるやつなんなの?????こんなあざとい写真なのにあざとみ感じられないのどういった能力なの?????



・ホテルマン
衣装の色合いがイギリスのネズミ捕獲長の擬人化みたいだってずっと言ってる。

m.huffpost.com

捕獲長が自身の職場を案内してくださってると思うとキリッとした表情も胸熱。最後寝ちゃってるの最高に猫。



・その次のスクエア柄のスーツ
パジャマがアリスのDormouseならこちらはWhite Rabbit的な?
写真集見てて一番最初にはっとしたのがこの1ページ目なんですけど、彼はなんでこんなに不安げな表情してるんですかね?ホテルマンより大人っぽいのに所在なさげ。パジャマより普通のシチュエーションなのに戸惑いが大きい。比べてみるとパジャマくんは好奇心旺盛な感じだったなあ。設定の妙ですね。おもしろい。



・ヘルシーたつなり
7ページ目、ハイキューで日向が時々する目みたいな目しててチリッ…ってなりました



トランプマン、白シャツ
この髪型にこのシチュエーションにこのポーズ、下手したらギャグだから…。「顔とスタイルがいい」ってお芝居をする上で足枷になることもあるんだろうけど、やっぱ常識を捻じ曲げられる超圧倒的才能だと思い知らされます。



・信長
紙面の圧がすごすぎてフッフwwwwってなる。
顔めっちゃ男臭いのになぜか全身からは女性のような色気というか艶が漂ってるからギャップについてけない。この人なんなんだ。



・からのハリーポッター
高低差すごすぎてキーンとなるやつ!!!!!!!

この首元のゆるさ…。
この表情は私の中の木村さんのイメージにはなかった。いわゆる純真無垢、夢見がち、儚げ、茫洋、諦念、薄幸、その先にある狂気、みたいな。ありがちな人物設定だけどそういう役を演じる木村さんというのは考えたことなかったなー。
この写真集は木村達成大プレゼン大会の様相を呈している。



・からのベッド
秘密の花園か……っ!!!!コリンくん…。
こんな柔らかい表情するんですね。



・海
感情を表現するんじゃなくて表出させることが得意な役者さんのファンにあまりなったことがないので、木村さんのこういうところにはいつも感心させられる。



・屋上
一番普通の格好してるから逆に一番非日常性を感じますね……「えっ、こんなイケメンその辺にはいないね?」的な意味で……
あと私どうしても吸ってる仕草好きから抜け出せないんですごいあああってなりますね…身体に悪いんだけどね…かっこいいんですよね…!!!


逃亡者みたいな顔してるのめっちゃかっこいいから、多分これテレビでやってたらもし私木村さんのこと知らなくても録画すると思う。さすがの私でも木村さんのかっこよさに気づくと思う。
今回の写真集のマイベストページは金網越しのとこです。



・ディーラー(再)
この写真集、構成スゴクイイデスヨネ…
こっちは前髪降りてるのもワカッテマスヨネ…
最初わかるわかるとか知ったような口きいてスミマセン…
愛憎入り混じってるの最高ですね…



・オフショット
3ページ目の右下なんつー表情してるんだよ……ほんとこれどんな設定してたんだろ。



・メッセージ
23歳の木村さんが今度はどんな表情を見せてくれるのか楽しみです。



・裏表紙
はっ…メッセージ見てからこの写真見るとこれからいっちょやったるか的な顔に見える…!指先には未来が…!



・DVD
スマボで買うとメイキングDVDがついてくるんですけど、40分くらいあって動くしたまに喋るのでおすすめです。
私あまりこういうイメージカット的なのに慣れていないので、たまにその音楽なに…!?てなる。
映像だと印象が変わるところもあって、ちょっとした仕草に色気が出てたりもするしヘルシーたつなりのところとか「そんな曲がるの…!?」とか思えていいです。引き笑いも見れる。個人的には足の裏払ってるところになんか木村達成みを感じましたね…よくわからないけど…
私はこれで胃もたれが少し良くなりました。(販促)



・その他
私はもともとジャニオタなんですけど、雑誌媒体に恵まれているジャニーズのタレントさんですら、個人でクローズアップして取り上げてもらえるのは本当に稀なので、写真集しかも128ページ分もの世界をたった一人のために用意してもらえるというのはとっても贅沢なことだなあと思います。
そしてそれを役者として使い切ってくれたのが最高にかっこいいと思ったので、これからもどうぞそんな感じで信じた道を歩んでください…!


あ、あとわりとトンチキ(褒めてる)なシチュエーションでも馴染むというか溶け込んじゃうタイプの役者さんなんだな〜というのが新たな発見で(独特の力学で成立させてる感もある)、
その結果としてタイトルの『PARADOX』=矛盾とか逆説はそんなに感じなかったんですけど、para(=beyond)+doxa(=opinion)で定説に逆らうとか予想に反して的な語源らしいって聞いてそれしっくりくるなと思いました。
いわば「超えていく」
私の中のこの写真集の印象にぴったり。
まさに(?)予測不可能なミステリースペックですね。




(12/9追記)
この記事の木村さんのコメントを見て追記。
natalie.mu

コンセプトはparadox(矛盾)、様々な世界・シチュエーションの「木村達成」を木村達成が表現してみました。


そうか全部木村達成なのか………!!!
この世界に飛び込めば木村達成もこうなる、ということですねつまりたつなり的ドラマツルギーということですね。
うわー、それ見方変わるなあ。もっかい見よ。おもしろいなぁ。





あらためて、木村達成さん23歳のお誕生日おめでとうございます。







(2018年1月追記)
気づけば発売から一年が経過していたのでネタバレしますが、この記事でスゴクイイと言っていた構成がこちらになります。



ところどころに写っている数字とディーラーさんだけが再登場する意味。
これは一つの解釈ですけど、他にも何か仕掛けがあるんじゃないかって見返してしまいますよねーー。
もっかい見よ。

ハイステ “烏野、復活!” 感想メモ(ネタバレあり)





10月28日にハイステ東京公演初日を観てきたので感想メモ。



※記憶力と動体視力がないので妄想と思い込みと脳内補完で書いてます。全体的に現実とは違う可能性ある。すみません。


※ネタバレしかありません。ネタバレなしの感想はこちら



オープニング

もうオープニング始まる時の「くるぞ…くるぞ……」っていう気配からの音が鳴り始めた段階でドキドキしちゃってもう!!もう!!!!
まずイントロで「前作メインテーマのアレンジだ」ってわかったところで心の中でツッキー並みのガッツポーズしたし(好きだから)、そのアレンジが攻めてて本当に期待を裏切らない格好良さで心の中で膝バンバン叩いたし(好きだから)、キャラ紹介ももう縁下がジャンプ持ってるのとか前回の山口ツッキーのとこのセルフオマージュって感じで縁下さん握手してくださいって感じだし(持ってましたよね…?)、当のツッキー山口はちょっとマリオちっくなコミカルな動きになってて可愛いし、前回ノスタルジックな効果音だったのが今回お腹に響く重量感ある効果音になってるのすごい精神的進化を感じさせるから、ほんと前回のオープニングを踏切板にしてさらに跳んでる、大、躍、進、って感じで気分的にはここだけで帰ってもいい…ありがとうアイア……また会う日まで……ってくらい満足でした。
で、特に何が最高かって、今回高校名がでっかく映し出されるところですね。日向が影山が研磨が青根が、っていうより烏野バーサス音駒、烏野バーサス伊達工、烏野バーサス常波でいきますってスタンスがそこから伝わってくるし、「烏野高校」とか「青葉城西高校」って文字そのものに思い入れあるから字面が目に飛び込んできただけで理屈じゃなく鳥肌ブワッてなる。大量の台詞がガガガッと出てくる感じとかほんとカッコいいんだけど、ファンの作ったMADっぽくもあって愛を感じるんだよな…気合の入ったタイポグラフィいい……
そんでやっぱ最後に出てくる主人公2人は「トリ」としての安定感があってですね……
ネタバレなしのほうにも書いたんですけど、原作ハイキューに数多ある比喩表現と「舞台」という表現の場は物凄く相性が良いと思っていて、今回初っ端に出現していた「ゴミ捨て場」の舞台装置としてのしっくり感とかまさにそれだと思うんです。比喩がダイナミックでかつ叙情詩的だから舞台映えするんですよね。まだ出てきてないけど、山口の槍とかも考えただけで興奮します。
そんな中でも、やっぱり影山の「王様」ってモチーフは本当にかっこよくてズルいし、それを存分に利用して攻めてくる演出はすごい好き。影山の影が王様で影山がバサァ!とかさあ!(興奮)
そして大トリの日向ですけど、今回後ろが実際に開くのすごい効果的でしたよね…!そっから出てきてバク転とか、盛り上げるわー。っていうか、須賀さんがいなかったら演劇ハイキューってまた全然違うものになってたんじゃないかと思いますよね。存在感と、いい意味でのメジャー感。「常波を出さなきゃハイキューをやる意味ないです」と言える彼が座長でいてくれて良かったです……ってオープニングにして巡り合わせのありがたみみたいなの噛み締めてました。
OP前の「信じて飛べ!」のシーンといい、2人が主役として物語の四足歩行(?)の前足部分を担ってるからこそのこの立ち上がりだなぁと思ったので、ほんとこの超絶アンバランスコンビは永久不滅であってほしい………



永田崇人さん / 孤爪研磨

実は今回一番期待していて、めちゃくちゃその期待に応えてくれた人。
永田さん、やばいね…? まず須賀さんの日向とのサイズ感が丁度いい……カテコとかで周りが大きい中2人が並んでるのかわいい……
そして佇まいがすごく研磨くん。立ってる時の猫背な感じはもちろんなんですが、動いても動いても全然覇気を感じさせないんですよ。みんなと一緒に踊ったりしてて確かに運動量こなしてるのに、研磨くんのシルエットは力まないし疲れてる様子も見せない。ぽーーー、じーーーー、(擬態語)ってしてるんですよね。で、声も全然「張ってる」感じがしないのに、そのくせよく通る。ずっと脱力してて、この舞台の売りである「熱」を唯一、ぜったいに出さないんですよ(ただなんか平熱は高そう)。これすごくないですか!??人なのに!生身の人間なのに!!しかも結構キレよく踊ってるのに!力が抜けてる感じって、本当ならなかなか出すの難しいですよねー。どうしてもどこかしら凝り固まったりしそうなのに。
わりとシニカルな感じもよく出てて、なのに犬岡くんに話しかける時だけ言い方が優しくてちらっと先輩っぽいのも好き。
一番おおっと思ったのが影山の布団をひっぺがしたところで、きっとこの方、すごく肝の座った人ですよね…?たぶんこれ急なアドリブじゃなくて稽古の時からやってたんじゃないかと思うんですけど、やり始めたのがご本人だとしたら永田さんの感覚って演出のウォーリーさんのセンスにすごい近いんじゃないかってちょっと思いました、いや、私ウォーリーさんのこと何も知らないんですけど。
観客が相手を影山と見るにしても木村達成さんと見るにしても、彼があのタイミングで布団剥がして一番面白いのは間違いなく影山ですよね。影山のほうもリアクション正解ですごい良かった。
アニメージュの対談では「木村さんにちょっと人見知りしています」「怖いです」っておっしゃってましたけど、それを言っても大丈夫だと見抜いてる感じ、ご本人の人懐っこさと研磨の人見知りは表裏一体で、ある意味根底通じてるっぽくていいな〜と思いました。



音駒メンバー

黒尾さんの厨二耽美な言動、クロ本人が面白がってやってると考えると急に中村悠一みが出てきてめっちゃ推せる。その一方で締めるとこは締めるキャプテンらしさはきちんと残ってるからすごい安心感ありました。回想シーンの人形とかなにハッチポッチステーション?って感じなんだけど、黒尾さん自身の「どこまで本気かわからない」雰囲気とうまく合ってるから成立してるんだよなー。「ふざけてる」んじゃなくて「HAHAHAイッツジョーク」って感じがするというか。黒尾さんの厨二と主将のバランス感が今回の舞台の綱渡り感そのものだったと思うし、一人時間差のとこの見てる側が色んな意味で半笑いになる感じホントいいからもっともっと突き詰めてほしい。
猛虎さん、今回の舞台からの参加なのにちゃんと輩感で田中さんと渡り合ってたの盛大に拍手したい。犬岡くん、犬感すごくて癒される……。海さん、海さん感すごくて癒される……。このお二人は今回のハイステの良心。夜久さん、ダンスのキレが「恐いっスねェ」ってめっちゃ言いそうなキレでちょっと自分でも何言ってるかわかんないんですけどやっぱり役として語る手段は台詞だけじゃないんだなって思いますね。福永さんのアクロバットは音駒のインパクトを決定的なものにする打ち上げ花火。見た目が派手な技はそれだけで会場を盛り上げてくれますね。まさに値千金。
音駒はチームとして動きにも演技にもまとまりがあったし、前作を経ている烏野チームに「勝つ」だけの説得力があった。台詞で「しなやか」という言葉が出てこなくても観客の大多数が「しなやか」と評するんじゃないかと思えるくらい、的を射た振付と体現力でした。



合宿シーン

あの布団の入れ替わりはほんと最高でしたね。あれ誰が考えたんだろう…!ちょっとドリフ的な場面転換でもあり、観客とお約束を取り付けた瞬間でもあり、空間と時間の両方を捻じ曲げて最短距離にする工夫でもあり。ああいうシンプルな「驚き」ってライブ感を引き立ててくれますよねーーー。



音駒戦シーン

音楽のピコピコ感、鬼に金棒な影山のドット絵、音駒の「にゃー」ってやるポーズとかは別に実際に原作本編に描かれてるわけじゃないんですよね。
研磨の「ゲーム」や音駒の「ねこ」というモチーフ、あとはコミックスのおまけ絵(鬼に金棒)やカラー絵で描かれていたものだったりが積み重なって生成されてるイメージだと思うので、それがまた演技やダンス、映像、照明、音響に分化して複合的に具現化されてるのはほんと演劇のスタッフワーク総動員って感じでめっちゃ感動しました。


もうひとつ印象的だったのは、音楽が試合中の日向と影山の物語を際立たせようとしていなかったところ。この辺のスタンスが前作と全然違うなと思いました。「日向の速攻がとめられる」からの「ふわっ…」って結構な大事件なのでもっともっと煽る音楽にできたと思うんですけど、そこをあえて重低音響かせるだけにしたりとか前後と曲調をそこまで変えなかったりでドラマチックにしてこなかったの、かなり驚きました。「主役として持ち上げないんだな」、と。いやもちろん日向も影山も周りよりフィーチャーされてはいるんですけど、あくまでゲームの流れの中でという感じで、ここらへんがOPで高校名出してくる意図とも繋がってくるのかな〜。
(書きながらゲネプロチラ見せ動画見てたら、結構盛り上がってたっぽいので記憶違いかもしれません…)



新井將さん / 青根高伸

正直なところ、最初に「ロックオン」って言い出した時は「ち が う」と思いました。青根さんは!!!声に出してロックオンとか言ったりし な い!!!ただ、そこから先、ラップバトルや日向との握手、ラストまで含め、新井さんは演劇というジャンルにおいて最高の青根さんを演じてくれたと思っています。会見のコメントからご本人も観客に受け入れられるか不安だったのではと感じましたが、それをおくびにも出さず、全力で、本意気で、迷いなく演じ切ってくれて、見ててちょっと泣きそうになりました。新井さん、思いっきりやるの怖かったんじゃないかなあ。そんなことないかなぁ。そんな弱い人じゃないか。全然知らないけど。だってラップだよ?ラップなんか原作の青根さんやるわけないじゃん。それを観客の前で胸張ってやるのは、人によっては、怖いよ。この舞台は青根さんの度胸にかかってたと思うなぁ。心から「良かったです!!!」って言いたい。



伊達工メンバー

二口さん笑っちゃうくらい二口さんですごい、好き……。あのなんかちょっとだけ上半身ムチっとした感じとか、微妙に舌巻く喋り方とか、いわゆるギャグシーンの時のアニメでしか見たことないようなコミカルな動作とか。その反対側の振り幅で二口くんの後悔の重さもきちっと表現してくれたところ、技量が違うなと思いました。こういう方が職場に一人いてくれると頼もしい。
作並さん、今回私の心に一番グッときたシルエットでしたね……かわいいしめっちゃリベロ……レシーブきれい……。茂庭さん、鎌先さん、笹谷さんのお三方の伊達工感すごくないですか?伊達工がなにやっても伊達工っぽさを保ってたの、この方々の存在感あってこそな気がします。絵面がっょぃ。伊達工の動きって今までのハイステの試合シーンとは少し違う作業も入ってたと思うんですけど、今回のキャストさんたちがその実現を成功させてくれたことでさらに今後の展望もひらけましたよね。



伊達工戦シーン

伊達工が歌い出したときの「やられた」感半端なかったです。思い返せば、ドキュメンタリーDVDで音楽の和田俊輔さん(天才)が「もともとメインテーマは歌にしようという話になってた、歌一回も提出しませんでしたけど。」とおっしゃってたので、そのエピソード踏まえたらいつ誰が歌い出してもおかしくなかったんですよね。歌わないなんて言ってないし。
伊達工の「鉄壁」、重量感、強豪感を表現するのに人の声を使うっていうのはほんとなるほどなーーと思いました。なんか屈強な戦士みたいでしたね。
個人的にそっからさらにラップいっちゃうっていうのもその演出自体は全然違和感なかったので(「青根さんが」という点は強烈でしたが)、どうやら賛否両論あるっぽい気配を今更ながらに察知して「ああ、そうだよね……」と。私はノー天気に「おお、すげーな」という感じだったのですが。
というのも、原作の伊達工戦は他の試合に比べて台詞的には「静か」な印象があったので(青根さんのモノローグがないからかも)、この試合が舞台の最後に来てしまう構成は下手したら盛り上がりに欠けるんじゃないか、と思っていたんです。しかも烏野側も旭さんのトラウマが中心なので、前作とちょっと似ちゃってるんですよね。原作として物語が続いていく分には問題ないのですが、舞台として2時間半に区切ったからこその難しさで、旭さんがトラウマを乗り越えるところで普通にメインテーマかけちゃったら「またかよ」ってなるし、かといって伊達工側のドラマチックなモノローグもそんなに多くないし(茂庭さんの「一回倒したスパイカー一人止めらんなくて」はめっちゃかっこよかったですね)。
なので、その課題を声出し、歌、挙げ句の果てにラップバトルなんていう無茶苦茶力技な盛り上げ方でクリアしたの心底感服しました。
ただ、ミラーボールだけは「ミラーボールwww」ってなりましたけどね。私、わりとなんでも受け入れちゃうんですけどミラーボールだけは「ミラーボールwwwwww」ってそらなりますよ。光がこちらにもくるせいで舞台上に限定されていた空間が客席まで拡がるっていうまさに鉄壁を壊した向こう側疑似体験みたいな絶大な効果があるんですけど、それを上回るミラーボールという存在のフィーバー感がすごすぎて、スガさんが見たい光ってそんなイケイケなやつなの……って思いましたし、でもそういうなんでもありみたいなのはほんと好きです。劇団ハイキューだけあってさすがの雑食性。舞台に制約なんてないからなぁ。なんかミラーボールのこと考えてたらどんどん記憶薄れてきて自信なくなってきたんですけど、あれ?伊達工、歌ってましたよね…?


そういえばミラーボールに気を取られて忘れてましたけど、伊達工の「鉄壁」を物理的に小道具として出してきたのも結構衝撃的でした。前作も羽根があったので流れでいうと不思議ではないんですけど。なんか、しつこいようですけど比喩を具現化するんだなあって。たとえばペダステは役者さんの表現力や観客の想像力を信頼して極力削っている気がするので、ハイステが逆にどんどん物理的視覚的に表現する方向へ進んでるのとても興味深いです。こっちにあるのは別に役者や観客への不信ではなくて、「出 た !!」っていう驚きと快感かなぁ。いややっぱ原作の世界観かな。それぞれの原作の空気にふさわしい舞台化ですよね。
話が逸れるんですが、烏野や音駒、伊達工に比べると青葉城西って比喩描写やチームを象徴するようなアイテムがほとんどない気がするんですよね。だから前作で青葉城西側の「イメージ」の具現化みたいなのもなかったのかもなぁと。今回のオープニングの及川さん・岩ちゃん組のイメージも青葉城西というより「阿吽の呼吸」でしたし。動物や言葉遊びのモチーフもないんですよね。オーケストラや大王様もチームを表現しきれてはいない気がするので、じゃあ青葉城西の象徴は何かっていうと、たぶん及川さんそのものなんですよ。彼の存在こそが青葉城西のシンボルなので、ハイステが次の青葉城西戦をどう仕上げるのかは物凄く興味があります。(あればの話…あってほしいなー)



常波戦シーン

常波については勢い余ってネタバレなしの方でつらつら書いてしまった…。池尻さん、すごい良いですよね……。ライビュでどうなってるのか一番楽しみなキャラクター、役者さんです。



バレーボールやってたよ

ここと、あと32敗のところは原作の流れでカットされてた時点でどちらかがラストに来るんだろうなーと思ってたんですけど、まさかの両方だった。最後に複数のシーンを再構成して寄せたことで二時間半の物語としての座りが格段に良くなって、安定と信頼の脚本力…って思ってたんですけど、それ以上に胸が高鳴ったのは、池尻さんや二口くんたちが後悔を口にするシーンで烏養さんがいたことですね。ここに烏養さんを配置するって、烏養さんに後悔を語らせるって、すごいなって。ハイキューの表面だけなぞってたら絶対出てこない発想だと思いました。



お前がコートに君臨する王様なら

録音と生声の輪唱ってめっちゃアツい。初演がリアルに一年前なんですよね。「なぞる」行為、好きです。
さっきも書きましたが今回、日向と影山が前足とラストの後ろ足となってしっかり立っているからこその物語の座りの良さなので、周りに呑まれることなく無闇矢鱈に周りを呑むこともなく、立つべきところで立ってくれているのが本当にありがたいです。
やりようによっては「主役なのにパッとしなかったね」みたいなこと言われる危険性もある立ち位置に回されたなかで、それでも「引く」ことができる須賀さんは流石だし、木村さんはなんていうか健気だな、と思いました。



木村達成さん / 影山飛雄

まず最初に書いておかなきゃいけないと思うのは、「私の中の影山と木村さんの影山は完全に袂を分かっている気がする」という点です。(悪い意味ではないんですが気分を害された方がいらしたらすみません…!!)
勝気な見た目、ガッツポーズとかの動き、アニメ版にも近い地声、イントネーション、そういう外郭は完璧なんです。影山まじ影山。でも、中身がなんか違う。なんとなくがなる頻度が高いなと思ったのと、あと、降って湧く表情が柔和。そしてこれこそが多分私が今回ハイステを見て良かったと心底思わされた点のようなので、その件について全く文句はないですね……ええ……
わかりやすく「違うな」と感じたのは、原作では「………んぬん………」って言ってたのに舞台では月島に食って掛かってたところと、原作では試合後の研磨くんに声掛けられなくて文字背負ってたのに、舞台では「セッター…」ってわりと朗らかに話しかけたところです。
特に後者はこれこそプロジェクションマッピングタイポグラフィの無駄遣いができるのではと思ったのでちょっと残念。ただ、このシーンの影山は、人としてものすごいリアルなんですよね……!!
最初研磨くんに話しかけようとして逃げられちゃって、そのあとわいわいやってるそれぞれのグループにふらふら寄ってくんですけど、全部輪に入れなくてなんとなく所在無さげにうろうろしてるんですよ。なんか、そういう人よくいるじゃないですか。ハブられてるわけでもないのになんとなく集団で浮いちゃうというか。その感じがリアルで刺さったし、さらにすごいなと思ったのが影山自身が全然それを気にしてない顔してるんですよね。むしろちょっと嬉しそうな雰囲気すらあって、はたから見たらすごいぼっちなのに本人はチームの中にいる感触を味わってるんですよ。これ、布団のシーンでも似たような顔してて、この空気がめっちゃ影山だなって!!影山じゃないんだけどめっちゃ影山だなって!!!それで挙げ句の果てに空気読まずに朗らかに話しかけてスガさんに「タイミング」って言われるんですけど、原作の影山は絶対あんなふわっと研磨くんに話しかけたりしないのに、突っ込まれても「え、そうなんすか」みたいなあの表情、現実に影山みたいな人がいたら実際こんな感じかもしれないって思いました。バレー、好きなんだなって。びびりますよね。そんなセリフ一言も言ってないのに、この人バレーバカなんだなーってしみじみ思いました。



青根さんや前作の縁下さんは、嫌な言い方をすると演劇としての面白さの犠牲になったキャラクターだと思っていて、ただそれが悪いことかというと必ずしもそうではなく、「『ハイキュー!!』の世界観を『演劇』で表現するなら、これがベストだ」と感じる選択だったと思います。でもこれが推しキャラクターであってもそう言えるのか?というとなかなか難しくて、やっぱり推しの推しどころが消滅してたら悲しいよなと…。
そんなことをつらつら考える中で今回木村さんの影山を見て思ったのは、何よりまず「見た目が大前提」なのかもしれないなあと。キャラクターのアイデンティティとしての「外見」が少しでも改変されて似ていなかったら、影山の演技も青根さんも縁下さんも受け入れられなかったような気がします。逆にいうと影山はあまりにもぱっと見影山なので(その状態を役者さんが作りこんでくれているので)、少し内面を追求したりしても見た目が守ってくれるというか。それでこの「内面追求」や演出のための改変こそが、原作に忠実にやっていたら起こり得なかった原作へのフィードバックまで発生させているわけで(パンフ参照)、なんていうか2.5次元って奥が深いですね……。「せっかくハイキューをやるなら」と「せっかく演劇でやるなら」のせめぎ合いと、その相互作用。


あと今回の演劇的演出といえば影山のトスですけど、相変わらずのハイスペックで「研磨くんとは対照的に一見してなんかすごいことやってる」っていうのが綺麗に表現されてたのでワクワクっとしたし、ちょっと魔法少女みたいで木村さんの身体表現からたまに発出される非日常性ってとても面白いなと思いました。


音駒が潔子さんを指差してるのに対して照れる女の子っぽい動きをするおちゃめな影山、とか原作では絶対ないですけどめっかわでしたね、舞台サイコーです。



堕ちた強豪 飛べない烏

このシーンのこともネタバレなしの方にちょっと書いたんですけど、とにかく、これを伊達工戦最後に入れてきたことに感動しました。「やってたよ」をラストに持っていくとかは脚本の技術だと思うんですけど、この異名を烏野全員のトラウマとしてここに埋め込むっていうのは単純にセンスだよねと思って!!!技術的にはなくてもいいんですよ。なくてもいいのにここにあるっていうのがほんと素晴らしくて。このトラウマ描写、前作の影山と同じく演劇的な拡大解釈がなされていると思うんです。だからこそ原作にはない気づきがあって、そこに劇団ハイキューの存在意義がある。これを全身で体現する烏野メンバーこそが、ここでしか見られない彼らの価値を生んでるんです。






書いても書いても終わらないので烏野メンバーについての感想は一旦省略しますが、一瞬でも同じところにいないようにするための創意工夫、登り続けるための努力、舞台で動き続けるためのモチベーション、そんなふうに「足を止めない」ことが現実世界でできるんだな、それこそハイキューっぽい世界だな、と思った新作公演でした。
進化し続ける烏野チーム………最高ですよね………ほんと……

怒濤の巻頭カラー2時間半。─ ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!! 』“烏野、復活!”を観た(ネタバレなし)




やりたいことは全部やる、
立ってるものはネコでも使え、
アレしないとは言ってない!!


まさに“雑食”、なんでもござれ。



なんかすごいもん見た。








10月28日、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』“烏野、復活!”を観てきました。
とりあえず第一弾の感想を書きます。ネタバレは極力避けたつもりです。
あらすじ等は公式サイトにて。




私にとっての初・生ハイステ、最高でした。



まずオープニングが…、かっこよすぎて…!!
そもそもオープニングの前も…、かっこよすぎて…!!
以下全部同じテンション。
・烏野が安定すぎて
・合宿が色んな方面にスゲーすぎて
・音駒がしなやかすぎて
・伊達工が鉄壁すぎて
青葉城西とマートさんが可愛すぎて
・演劇としての構成が綺麗に決まりすぎて
・とりあえずなんかあれこれやりすぎてて



ええもう、2時間半の間に色々なことがありました……
目を疑ったことも…耳を疑ったことも…



個人的に感じた前作との決定的な違いは、
前作の要所要所に存在していた「あっここ見せ場だな、力入ってるな」と思わせるレベルのシーンやギミックが
今作ではなんの出し惜しみもなく怒涛のように次から次へと繰り出されて、もはや最初から最後までずっとクライマックスになってるところ。


前作は見せ場がハマればいいけどハマらない観客はだいぶ居心地が悪いっていうところがあったと思うんですけど、今作はなんかもうどれかしら当たるだろコレか!?コレか!?じゃあコレは!?みたいな感じでバンバン見せ場投げてくるんであっハイ、うーん、あっいっすね、えっなんスかソレあっいいと思いまあっめっちゃいいっすえっあっ、ちょ、ちょっ、まっ…!みたいになって余計なこと考えらんなくなるんです。


え、「見せ場」ってそういうもんだっけ?
って思うんですけど、これをキャストさんスタッフさんが全部全力投球できちゃってるから、できるならやるよね、そりゃそうだわってなる。
特に音駒キャストのイメージ体現能力がすごい高くて、彼らがそれをもって「烏野の前に立ちはだかるチーム」としての説得力の具現化に成功したことで演劇ハイキューの可能性が一段上に引き上がったと思う。



そんでまた見せ場の「量」が規格外なら「質」というかやってること自体もほんとあっちゃこっちゃしてて、固定概念ぶっこわせっつって色んなところのジャンルやカテゴリの壁をガンガン叩いて回ってましたね。
須賀健太になんのスキル求めてんだよって思いました。好きです。
なんでもアリすぎて「あれ?これ笑っていいとこ?」って観客の戸惑いみたいなのすら舞台にのみこむ懐の深さが生まれてる。
伊達工はその極みで、手段を問わない演出のもとにスタッフとキャストが総力を結集して舞台上のチームのカラーを作り上げてる感じがあります。伊達工キャストの中にはある種の壁を取っ払うことに抵抗があった人もいるかもしれないと思いましたが、ここを迷いなく、躊躇なく、思いっきりやってくれていて観ていてスカッとしました。あれはすごい。



もうひとつ感心したのが、舞台から放出されてるものすごい「熱量」、これが「若さ」ではなく「手練れ」によるものであること。
もちろん若いからこそあんなに動き回れるっていうのはあるんですけど、あれ、若さとかがむしゃらさとか勢いで出せるやつじゃないです。
綿密な演出プランのもとに舞台上の役者が頭と身体を使って生み出してる計画的な犯行。一見押せ押せでやってるように見えるけど、烏野キャストが「引くところはかなり引いてる」のとかすごいな、若いし主役校なのにそんなことできるんだなって思います。役者が立つことじゃなくて、演劇としてのバランスを第一に考えてみんなが動いてる。



そんな手練れ集団の中で、一人だけわかりやすく未熟さを身に纏っている人がいました。
松田裕さんです。
常波高校の池尻隼人を演じる彼は、あきらかに主役級のオーラではないのに一人で場違いなスポットを浴びていて、なんて、なんて勇気のいる佇まいなんだろうと思いました。
まるで素人が舞台に上がってきてしまったような、意図的な未熟さ。巧く見せることを禁じられた人。
彼が出てくるたびに空気はグラッといびつになって、舞台上でこんな役割を担うって、どれだけ恐ろしいことだろう。
会見でのコメントを見て、彼が背負っているものの大きさを知りました。


◼︎ 松田裕 池尻隼人役
タイトルが“烏野、復活!”なので、烏野がどのような出会いと経験を経て復活するのかがもちろん描かれますが、裏に隠されたもう一つの側面があります。スポーツは勝ち負けですので、烏野が復活するということはどのような人たちが存在するのか、という面にも注目してもらえたらうれしいです。

シアターガイドより



“タイトルの裏側”にある、池尻隼人という存在。
その役割を全うする覚悟がうかがえて、とてもいい役者さんだなと思いました。
未熟さを「表現する」という点において、彼の演技はまだまだ進化しそうな気がします。





今作も前作再演に引き続きライブカメラが使われてるんですが、これに新たなセットの仕掛けが加わったことでかなり明確に漫画の「コマ」の概念が導入されています。
今回役者さん29人いるらしくて舞台上もかなりごちゃごちゃしてるんですけど、対象を囲むことによる観客の注目の限定と、大写しにすることによるインパクトの増幅とで、あの人数とやってることにしてはだいぶ情報のトラフィックがコントロールされてるように思います。視線を誘導するギミック的な工夫もたくさんあって、基本的な立ち位置や照明もバリエーション持たせつつ見やすい。
ただ、どうしても原作を知らない人が見たら「バレーボールの試合として何が起きてるのか」がわかりにくいところもあるだろうなーとは思いました。日向の囮のとことか、もっと行ける気がする!





そして同じく漫画の舞台化という点で面白いと思ったのは、普通に「ストーリー」を追うということに加えて、原作を「イメージ」レベルで立体化しようとしてるように感じたこと。漫画の物語部分だけじゃなくて、ジャンプの表紙とかコミックスの装丁とか扉絵とかそういうのもひっくるめてぜんぶえいやっ!で二次元から引っ張り出そうとしてるというか。
あの巻頭カラーカッコいいんでまるごと演劇でやっちまいました!!!みたいなノリ。
一休さんが縄持って「屏風から虎を追い出してください」っていうとんちあるけど、ヤベーほんとに虎出てきたみたいな。2時間半、その驚きの連続です。
原作の持つイメージカットや比喩的表現、台詞の字面の力が無視できないくらい「あまりにも強い」っていうのが多分にあると思うんですけど、漫画的なイマジネーションと演劇的なイマジネーションがぶつかりあってなんかすごいもんが生まれようとしてて、こんな前次元的な舞台化がありえるんだ…!って…!!ジャンルを超えた融合とクリエイション…!(それっぽいカタカナ使いたいだけ…!)


その立体化の手段として、役者、セット、照明映像とかの目から入ってくる情報はもちろんなんですけど、知らないうちに耳から入ってくる音響がめっちゃ効果的で良かったです。
音楽は相変わらず全力で素晴らしかったけど、それにのるSE(効果音)がほんとうに効いてた。聴覚刺激は漫画にないものだし、音楽に乗って煽ってくるSEはアニメでもそんなにないと思うので、かなり演劇版ならではの見どころ(体感しどころ)だと思います。
嗅覚も使うからほんとにこの舞台は五感に畳み掛けてくる。






(これでもしぼって)いろいろ書いたんですけど、実は具体的なことはあんまりよく覚えてなくて、「なんかすごいもの見たな」という感覚だけが残っています。
ただひとつだけ今でもふっとよぎる光景があって、観てる時強烈に感じたわけでもないのにどうしてこれが目に焼き付いたんだろう。じわじわと思い起こされる、











…影山の足。










いや変態かよ!











ってそうじゃなくて、


なんかおかしな角度に曲がった、仰向けの影山の足






あんなのもう、動けないのでは…?














ああ、「堕ちた」ってそういうことだ。
「飛べない」って、そういうことだ。





“堕ちた強豪”
“飛べない烏”


この異名が何を意味するのか、こう呼ばれるということが一体どういうことなのか、影山の体勢と目から滲み出ていた気がします。
私は今までこの言葉の持つ本当の残酷さに気付けなかった。




“烏野、復活!”
というタイトルの裏側にあるもの、
そしてタイトル以前にあるものがこの舞台を支えていて、
それがあるからこそあの「熱量」が舞台上にとどまるんじゃなくて客席に届くんだろうなあと思いました。




役者さんの話やオープニングのかっこよさは、別のエントリーで密かに書きます。
ハイステだけで何万字書くんだ。

ハイステ前作のメインテーマについて書く

“負け”は
弱さの証明ですか?
──『ハイキュー!!』8巻より


最近電車の中でもっぱらアニメ『ハイキュー!!』と演劇『ハイキュー!!』のサントラを交互に聴いて泣きそうになるのをこらえるっていう合理性に欠ける行動を繰り返してるんですけど、
いよいよハイステの新作公演まであとわずかということでなぜかこのタイミングでハイステ前作のメインテーマについて書きたいと思います。


そのことによって!!!木村さんのファンクラブイベントに落選したかなしみから!!!目をそらす!!!
(それにしてもさすがの人気でした…!すごい!!)





何度でも何度でも同じこと書くんですけど、ハイステのオープニングは最高なんですよ!!(1024回目)
原作を投影する演出も、俳優さんのキャラクター性も、ノスタルジーを感じさせる効果音も、全てがそこにあったかのように重なり合ってひとつのプログラムに仕上がっている。
そしてその土台となっているのが音楽
ハイキュー!! 〜ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」Main Theme〜』です。



以前のエントリーでは、この音楽について以下のような感想を書きました。
・仁花ちゃんのポスターに似ている
・日向が「飛んだ…!」と感じたところから、着地するまでのほんの一瞬を切り取った音楽のよう
・日向を観ている人の心象風景なのかも


その思いは今も変わってないんですが、ここのところアニメのメインテーマと聴き比べていたら「それだけじゃないな」、と。観ている側だけじゃない。やっぱり「やっている側」、つまり当事者の心象もあるよなと感じまして。



なんでそう思ったかというと、演劇版のメインテーマには救いがない気がするんです。救いって何かって、明るさとかコミカルさとかみたいな、空気を少し逃して音楽の圧を下げるような要素でしょうか………唯一、冒頭のクラップ音くらいかなと思ってます。それ以外はもうずっと、息抜きも忘れて真っ向勝負で正面突破し続けるみたいな感じでものすごく「真面目」な曲なんですよね。


逆にアニメ版の方は比較的明るくて伸びやかで、爽やかさや眩しいところ、キュッと切ないところもあって。全体的に開放感や何かが報われそうな希望があるんです。


この差は面白いなぁと思っていて、これは青春に対する距離感の違いから来ているものではないかと。
アニメ版のほうは、青春を振り返って捉え直しているようなスタンスに聞こえるんです。私たちにもこんなことあったよね、つらいこともあったけど、今思えば楽しかったねって。なんか他の人に比べて話しかけやすくて相談したら「大丈夫」って言ってくれる優しいOBの先輩みたいな。
それに対して演劇版は、今まさしく青春してる人たちの感覚で、「青春してるわぁ」なんてみじんも思ってないような当事者たちの、辛くて苦しくてでも魅了されて無我夢中になっているさなかの心象風景。そして同時に、その姿に引き込まれて青春のしんどさを思い出した大人たちの心象風景でもある。


原作の台詞でいうなら、アニメ版の距離感は町内会戦後のOBたちの「いや〜よくわかんないけど青春だったな〜」「高校生かっけえ!」「俺らオッサン組のおいてけぼり感ときたら!」ってやつ。あとは山口の練習につきあうマートさんとか。茶化しつつ、温かく見守りつつ、作品に客観性を持たせつつ、ちょっとだけ感化されながら、日向たちが青春真っ只中にいることの価値を高めてる。


じゃあ演劇版は、というと、まさにこれなんです。

負けた時にさ
「いい試合だったよ」って言われんのが
嫌いだったよ
「でも負けたじゃん」ってさ

けど いざ 声掛ける側になった時
それ以外に妥当な言葉ってわかんねぇもんだな



青春には痛みが伴うこと、その痛みは幸か不幸かもう自分たちとは遠くにあること、を思い出させてくれる、滝ノ上さんの真摯な言葉です。



以前のエントリーで書いた「根幹」を感じたのは多分ここの部分だったんだろうな、と思います。
曲中何度も繰り返されるモチーフに、逆境の中でも不利でも負けても歯を食いしばって戦い続ける姿と、それを観ているもう戦えない側の人たち(または望んでいた場所とは違うところで戦っている人たち)を私は連想したんだろうなぁと。


個人的に、ハイキューはその両方の意味での敗者たちを描いた作品だと思っているので、音楽が率先してその部分を掬い上げていたことに胸を打たれていたような気がします。
主人公が負けたところから始まるこの音楽は、敗者たちのその先にあるものを示してくれている。その頂点が多分、重力に打ち克って“飛ぶ”瞬間なんだろうな。




アニメ版は30分×25回と長丁場なので、ずっと真剣じゃつらいし絶対に救いと距離感があるべきなんですけど、
2時間半、生、メインテーマがかかっても数回、の演劇ならこの息の詰まるような距離まで迫って青春の臨場感を再現するのはすごく有効だよなーーー、と思いました。


そんできっとこの青春と音楽との距離感は、ハイステの舞台と客席との距離感に限りなく近いような気がしていて
今度初めてハイステを生で観る私は、この曲にあるような憧憬と羨望の眼差しを持って舞台上の彼らを、木村達成さんを観ているんじゃないかなあという予感がしています。



たのしみ!!!!




劇場で観られるのは1公演だけなので、しっかりと目に焼き付けなければ。
新作でこのメインテーマが使われるのかアレンジされるのか全く新しいテーマになるのかどれかなーーー、わくわくするなーーー。

Sexy Zoneが『よびすて』という名曲を出していることを誰も教えてくれなかった

みなさん!!!
Sexy Zoneが!!
とても良い曲をシングルで出しています!!!!


私はファンでもなんでもない外野なんですけど、せっかくなので感想を書きます。ただの一個人の思い込みによる戯言です。




たまたま見かけたテレビCMでなんか5人の男の子がエモそうな感じだったので「嵐の新曲かな?」と思って見ていたらSexy Zoneでした。
その名も『よびすて』。タイトルから即決鷲掴みだし、15秒だけどなんかすごい名曲だったような気がして早速「セクシーゾーン よびすて」でググったんですけど、PVとか!!見られない!!ジャニーズだから!!!
公式でジャケット写真見れただけでもありがたいと思わないといけないですね。仕方ない。



そこでPVはあきらめて直接曲を買おうと思ってiTunesで検索したんですけど、全然!!出てこない!!そっかジャニーズだから!!!
まあ…そんなのわかりきってたことですからね。仕方ない。仕方ない。



しかし私には奥の手があるのです。ドワンゴジェイピー。なんてったってV6ファンなのでジャニーズ楽曲をダウンロードできるサイトはおさえてます。んですけどショート音源しかない!!なんで!?発売したばっかだから!??!
私にはどうしても!!セクシーゾーンの『よびすて』を聴くすべがない!!!!




仕方ないので別件で録画していた「シブヤノオト」を見ました。ちょっと聞きたかっただけなのに、それに辿り着くまでのハードルがあまりにも高い。こんなことでいいのか。アイドルの歌はもっと手を伸ばしやすい場所にいてくれるべきなんじゃないのか。



いや、CD買っちゃったけどさ。



今週MステとかCDTVとか出るみたいだから見たい…。これタイアップついてないのすごく勿体無いなぁ。




さて、Sexy Zoneといえばそのグループ名の意味不明さとキャッチーな楽曲、中島健人さんの突き抜けた王子キャラから私の中では「イロモノ」的なイメージがありました。
グループとしての方向性が見えてこないよりはよっぽどいいと思うので、(運営に対して疑問を覚えた部分はあったものの)個人的にそのイロモノ路線自体は特に間違っているともなんとも考えたことはなかったのですが、デビューから5年、定着したイメージに対する「慣れ」や「マンネリ」は確かにあったかもしれません。



今回の『よびすて』は、そんな彼らのイメージをドラスティックにアップデートする、超・正統派アイドルグループとしてのSexy Zoneの姿を見ることができるのです。




まず曲調はSexy Zone初のミディアムバラードだそうで、私の言葉でたとえるならなんていうか……KinKi Kidsの『ボクの背中には羽根がある』を麺棒で真っ直ぐにした感じですね………
絶対他にもっといいたとえがあるんですけど、ここまで出かかってるんだけど出てこない。歳だから。



“君の名前 よびすてで呼んでみた”
そんなほんの一瞬の気持ちの揺らぎをとらえた歌詞、心がさざめくような哀愁を帯びたメロディ、もう少しあざとく盛り上がってもいいんじゃないかと思うような真っ直ぐな曲展開、そしてCHOKKAKU氏による間違いのない鉄板アイドルアレンジ。
なんだかとっても聴きやすい……。




驚いたことに、今回は途中で「セクシー」とか「好きなんだよマジで!」とか言わないんです。彼らのキャラクターアピールは控えめに、歌が先に立っている。
その結果、アイドルなら一曲は歌ってほしいジャンルランキングがあったら、第3位くらいにはつけそうな見事な正統派青春ラブソングに仕上がっています。




そもそもSexy Zoneといえば、最年長の中島健人さんが22歳、最年少のマリウス葉さんが16歳というまだとても若いグループ。
加えてルックスも非常にレベルの高い美青年・美少年揃いです。
一旦色々忘れて冷静に考えると、真っ直ぐなラブソングを託されるのにはうってつけの正統派アイドルグループなのです。




さらにいうと、今回のSexy Zoneの一番すごいところは「このぴったりな歌と巡り会えた」ことではなく、その一歩先、「この歌を若さや稚拙さで彩らせていない」という点です。
こういう真っ直ぐなラブソングをアイドルが歌うなら、技術的に未熟でも逆にそれが味になるもの。


でも彼らは、その若さに頼らず、これまでに磨いたスキルをもってこの歌を「仕上げに来ている」。これはすごいことです。



このチャレンジを大真面目にこなす彼らの佇まいには、もはや「ファミレスに王子が集団で来てる、白馬で」みたいな凄みと面白みがあります。かっこいいけど笑っちゃうみたいな。かっこよすぎて笑っちゃうみたいな。佐藤さんの唐突な口笛とか、その最たるものです。



彼らが培ってきた、表現力。あざとさ。憂い。二面性。色気。儚さ。その全てが、『よびすて』のパフォーマンスには詰まっているような気がします。
何より、5人が横一列に並んで踊る、その光景が切なくて眩しい。私ほんとこういうのに弱いんです。歳だから。



単なる正統派路線回帰では終わらせない。これは彼らの従来のイロモノ路線を踏まえた、超・正統派路線の第一歩となるのではないでしょうか。




白馬の王子様なんて、現代ではもはやイロモノです。
でも、なんだかんだいってやっぱりかっこいいものはかっこいい。


5年間磨いた武器を携えて、まさかの正統派という路線に乗り込んで来た彼らのこれからがとても楽しみです。




アニメ『ハイキュー‼︎』青葉城西戦の音楽について書く


※このブログは一個人の見解です。




他のエントリーでも書いたのですが、今『ユーリ!!! on ICE』という男子フィギュアスケートアニメにハマっています。
で、ディーン・フジオカさんの歌うOP『History Maker』が頭の中ぐるぐる鳴ってて離れないんです。



これ。
youtu.be




個人的にこの曲の何に一番感銘を受けたかって、三拍子っぽいところなんですよね。ワルツ的な。(実際にはたぶん三拍子じゃなくて8分の6拍子かなと思いますが)優雅さもありつつ、3人の運命みたいなものを感じさせるんです。



それで改めて思ったのが、ワルツの醸し出す数奇な運命感は異常ということです。
なんなんですかね?
巡り巡るみたいな、運命に弄ばれているみたいな、輪廻から抜け出せないみたいな、宿命と対峙せざるを得ないみたいな、彼らが巡り会ってしまったことみたいな、歴史は繰り返すみたいな。
この感覚って勝手に人類共通のものだと思ってたんですけど(日本に住む人が桜見ると感じる気持ちみたいな)、なんか知り合いに言ったら「は?」「この表紙の及川さんカッコよくない?」って言われたので、私のワルツ論は机上の及川さんに勝てない。



そんなわけで、私のワルツイメージから入って最終的にアニメ『ハイキュー!!青葉城西戦の音楽について書きます。話題がとっ散らかってますが一応繋がっているつもりなので上から読んでいただけると幸いです。


伊達工戦の音楽についてはこちら。
osmnmmhrb.hatenablog.jp




● 私の中の「ワルツ」①

はじめに、私の中でワルツといえばこれです。
映画『ハウルの動く城』メインテーマ、『人生のメリーゴーランド』
まじあの曲やばくないすか。
聴いているだけで胸が張り裂けそうになります。あっ、なんか初めてこのブログでそれっぽい感想書けたかも。
映画自体はそこまで好みではなかったのですが、劇中でこの曲が流れるだけで込み上げてくるものがありました。すみませんこれは単純に趣味や好みの話ですが、この音楽がこの映画を名作の域に連れていっているのではないかとすら思っています。まるで空中のソフィーをエスコートして歩くハウルのように。
ナウシカ久石譲宮崎駿に抜擢された」ことが果たして偶然が重なった奇跡だったのか予め決まっていた運命だったのか、そこのところ考えちゃうんですよね……
そしてタイトルが本当に秀逸。人生のメリーゴーランド。
もう一度書きますけどなんなんですかね?
巡り巡るみたいな、運命に弄ばれているみたいな、輪廻から抜け出せないみたいな、宿命と対峙せざるを得ないみたいな、彼らが巡り会ってしまったことみたいな、歴史は繰り返すみたいな。
ワルツの醸し出す数奇な運命感は異常
これこのエントリーのサビです。


● 私の中の「ワルツ」②

私の中でもう一つワルツといえば、あれです。
ハチャトゥリアン組曲『仮面舞踏会』より、ワルツ。
2008-2009シーズン(フリースケーティング)、2009-2010シーズン(ショートプログラム)で浅田真央選手が使用したあの曲です。私はフリーのほうのプログラムが大好きなんですけど、特に3分過ぎたあたりから始まる45秒間のステップが鳥肌もので。素人なので何やってるかは全くわからないのですが、最初は運命に翻弄されるヒロインのようだと思って見ていました。
でもその完成度に磨きがかかっていくにつれ、そうじゃない、逆だ、と。彼女は運命に流されているのではなく、その濁流に飲み込まれまいと必死で抗っているのかもしれないと思うようになりました。
その運命とはもちろんヒロインが毒殺されるという悲しい結末のことでもあるんですが、そこに浅田選手自身の天才ゆえの苦悩とか女神に愛されているかとかみたいなメンタル的なものと、3分という時間帯ゆえの疲労や体調や重力みたいなフィジカル的なものが勝手に重なって見えて、ああ彼女は常に何かと戦っているんだなと思うともう手に力が入って仕方ないんですよね。ぐっとこう握っちゃいますね。手に汗を。
ここ、もしサーキュラーステップだったら多分もっと印象が違ってて、それこそ巡り巡る数奇な運命に飲み込まれていくヒロイン像になった気がしますが、リンク上をもがき切り裂いていくようなストレートラインステップだったからこその、運命に立ち向かう姿勢なんだと思うんですよ……。
巡り巡るみたいな、運命に弄ばれているみたいな、輪廻から抜け出せないみたいな、宿命と対峙せざるを得ないみたいな、彼らが巡り会ってしまったことみたいな、歴史は繰り返すみたいな。
このワルツの醸し出す数奇な運命感を、この人は断ち切ろうと今も戦っているんじゃないかと思って、浅田選手が出場しているとどうしても応援してしまいます。


青葉城西戦で流れる音楽

さて、ここからが本題で、アニメ『ハイキュー!!青葉城西戦の音楽について。それとこれとを同列で語るなと言われそうですが、私自身の中では自然な流れのつもりなのでご容赦ください。また、ハイキューセカンドシーズンまでの重要なネタバレがありますので、未見の方はご遠慮ください




烏野vs青葉城西の試合は今のところ練習試合、インハイ予選、春高予選と3回行われていますが、今回は主に後ろ2つについて取り上げます。



● 予言の自己実現という運命



── 飛雄
急速に進化するお前に
俺はいつか負けるのかもしれないね




ハイキュー!!』8巻より、及川さんのモノローグです。

私はハイキューって投擲というか未来に向かってキャストするような言葉が多いと思っていて、キャラが何か言ってそれがのちのちの展開で実現するという、種を蒔いて育てて収穫するやり方が丁寧だよなぁと毎回感心しております。
わかりやすいのは山口の「1年俺だけハズレた…」という台詞がやや反語的ニュアンスを含ませる形で明記されてから覚醒するまでの流れで、いやこれは漫画なのでメタ的にいえば古舘先生による伏線とか布石とかエピソードの丁寧な積み重ねではあるんですが、なんかこう、最初の種がモノローグやスローガンに近い言葉で登場することが多いせいか、なんとなく予言めいたものに思えてしまうんですよね。なので勝手に「予言の自己実現」と呼んでるんですけど。(言葉の見た目がそれっぽいと思ってるだけで実際の意味合いとは異なります。)
山口の例でいうと、8巻の嶋田さんの「でも初めて試合でサービスエースを決めた時思ったよ」のくだりとか、予言っぽい。「ああ、これをいずれ山口も経験するのかもしれない」と事前に想像させておいてくれるんです。
この予言がなければあの運命はなかったなっていう、物語捻じ曲げるくらいの強い自己実現力を感じたのは、やっぱり木兎さんのツッキーへの予言ですね。





そしてその中で、最低最悪の予言、と個人的に思っているのが先程のモノローグです。
これはもはや「呪い」。


この試合で勝つのだから、こんなことを言わせる必要はなかった。そんな悪い予感を口に出す理由はなかった。メタ的にいえば、こんなところで今後の展開をほぼネタバレするような謂れはなかった。
「それは今日じゃない」という本題があったとしても、この前置きは念が強すぎる。
それでもここでこの台詞を及川さんが言ったというのは、これこそがこの時点での及川さんの本質だったからではないかと思っています。
天才に負ける。
それが及川徹というキャラの本質。


しかもこの予言、アニメだと及川さん自身が明示的にキャッチしてるんですよね。
春高予選準決勝で影山がツーアタックを決めた時、這い蹲って漏らした台詞「知ってるよ」
俺が天才に負ける運命であることなんて、知っている。
この台詞コミックスにはなくて、アニメオリジナルなのかな?すごい言葉追加してきたなぁと思いました。


● 決着にまつわる音楽について①

さて、この呪いの言葉が発せられたシーンは、アニメだと1期 第24話『脱・孤独の王様』の後半部分にあたります。インハイ予選第3セット、青葉城西のマッチポイントでいよいよ決着かという場面です。
このシーンでかかっているのが、その通り『決着』という表題の曲、アニメ『ハイキュー!!メインテーマの三拍子アレンジです。
いや実際にはたぶん三拍子じゃなくて8分の6拍子だと思うんですけど、私の耳にはわりとワルツっぽいリズムにも聴こえるので印象は近いよね!!!!!私の耳はふしあななんで!!!
だから上にも書いた通り、私はCM明けにこの曲が流れてきてもう、巡り巡るみたいな、運命に弄ばれているみたいな、輪廻から抜け出せないみたいな、宿命と対峙せざるを得ないみたいな、彼らが巡り会ってしまったことみたいな、歴史は繰り返すみたいな、そんなことを感じてしまったわけなんです。
翻弄感が強いからこのシーン見るたびにどっちが勝ってもおかしくないんじゃない?今回こそはもしかして烏野が勝つんじゃない??と思っちゃうんですけど、運命とは残酷なもので、最後はこの曲ぶった切られて日向の速攻もドシャットくらうんですけどね……。毎回毎回。


メインテーマがモチーフってところがまた大詰め感あって、見終わった後「ふー」ってなります。毎回毎回。


で、これを最近音楽に注目して改めて見返して思ったのが、「ひょっとして、春高予選の決着シーンでも同じ音楽が使われているのではないか?」ということ。
あの試合こそ、どっちが勝ってもおかしくなかった。運命に翻弄される、歴史は繰り返す、その状況に相応しい音楽なのでは?




結論から言うと全然違ったんですけど。




● 決着にまつわる音楽について②

春高予選の青葉城西戦はセカンドシーズン第20話から第24話までをかけて描かれています。こっちはこっちで音楽めっちゃ熱くて、歴代おなじみBGMのいけいけどんどんアレンジバージョンもいくつかあるのでもはやボス戦BGM集の様相を呈しています。
第24話『極限スイッチ』の決着シーンは、伊達工戦音楽のエントリーでもご紹介した『チームの地力』のアレンジバージョン、『真っ向勝負』でした(多分)。ドラムアレンジ激アツすぎるでしょ……



じゃああのワルツは!?『決着』は!?…というと、実は別の場面で使われてまして。「うっはーここかよ!!!言われてみればここしかないよね!!!!」って思ったんですけど。
第22話『元・根性無しの戦い』、第2セットを青葉城西にとられたあとです。
「こいつらとはフルで戦る宿命」という、互いに運命の渦中にあることを自覚した台詞を、メインテーマのアレンジであるこの音楽にのせて言わせちゃうんですよ……!!!しかも大地さんと及川さんのWキャプテンのモノローグが『君の名は。』のCMばりに交錯するの最高だし、え、やだ、アニメハイキュー!!めっちゃ面白くない???


そして追い討ちをかけるように、実はもう一箇所この曲が登場するシーンがあるのです。こっちで流れたのは個人的にかなり意外でした。それが、先程少し触れた及川さんの「知ってるよ」、の、あとです。

“自分の力はこんなものではない”と信じて
只管まっすぐに道を進んで行く事は
“自分は天才とは違うから”と嘆き
諦める事より
辛く苦しい道で
あるかもしれないけれど


及川さんが謎の指導者から言われたこの言葉。
ここで『決着』が流れていることに気づいた時、私はようやく矢巾さんの「及川さん最近変わったよな…?」の意味が理解できたんです。そして「知ってるよ」、の本当の意味も。




俺が天才に負ける運命であることなんて、知っている。
「けど俺は、負けない。」


及川徹は天才には負けない。



前回の台詞と似ているようで違うのが、「でもそれは今日じゃない」とかの時期を先延ばしするような言葉を繋ぐのではなく、明確に「負けない」と言い切っているところです。
つまり、キャラの本質が変化していることを表す台詞だったんですよね…!!


彼は運命に抗い始めたのです。
これまで以上にがむしゃらに、なりふり構わず。




これもまたアニメのオリジナル描写なんですが、及川さんから岩ちゃんへの超ロングセットアップのシーンで、トスを放ってパイプ椅子に突っ込んだ及川さんが再び駆け出そうとした時に「一瞬足元が滑る」という動きが追加されています。このスマートさのかけらもない、スガさんの言葉を借りれば「クソみっともない」無我夢中さ。なんてかっこいいんでしょう。




前回の試合でもし青葉城西が負けていたら、及川さんはそこで終わってしまいそうなイメージがありました。にっくき天才ウシワカとトビオちゃんに負けて、おわり。
でも今回は違う。青葉城西がこの試合に勝っても、たとえ負けても、それで終わりではない。及川さんにはもうすでに新たな予言がなされていたんです。そして彼は変わった、だからこその彼の中の『決着』。
彼は自分でかけた呪いを突き破って、また新たな呪いをかけていた。
「才能は開花させるもの」、「センスは磨くもの」。
いつかチャンスを掴むその日まで、及川徹は天才には負けない。
たとえ試合に負けたとしても。


及川さんは自分自身で運命の連鎖を断ち切って、決着をつけていたんですよね。その結果、今回の試合の決着でワルツは流れなかった。試合はどっちが勝ってもおかしくなかったけれど、及川さんはすでに数奇な運命には翻弄されない、次の境地へ行っていたから。
だから運命にとらわれっぱなしの私のワルツ論は、机上の及川さんに勝てないんです。


● 「戦いは終わらない」

及川さんが呪いから解放されるきっかけとなった指導者の言葉は、漫画『ちはやふる』の原田先生が太一君に言った言葉、「“青春ぜんぶ懸けたって強くなれない”? まつげくん 懸けてから言いなさい」と似た類の発破ではないかと思うんですが、私ほんと及川さんと太一君に言いたくなるんですよね「君は天才ではないのかもしれないが!!君たちのような努力を!!!凡人は続けることができない!!!!」って。たびたび三次元から二次元に大声で叫んでますね。リアルに声出すとあれなんで心が叫びたがってますね。


春高予選の試合や前後の描写からは、及川さんがこれからも「どこか」でバレーボールを続けて行くであろうことが窺えます。
及川さん自身もウシワカに「俺のバレーは何ひとつ終わっていない」と宣言していますが、この予言でもあり辛く苦しい呪いをコミックス17巻番外編で二重に掛け直しているのが、他でもない、「阿吽の呼吸」の岩ちゃんです。
ワルツ論は及川さんに通用しなかったけれど、私は性懲りも無く番外編のこのシーンであの音楽を思い浮かべて、巡り巡るみたいな、運命に弄ばれているみたいな、輪廻から抜け出せないみたいな、宿命と対峙せざるを得ないみたいな、彼らが巡り会ってしまったことみたいな、歴史は繰り返すみたいな、そんなことを想像せざるを得ないなぁと思っているのです。




番外編の中で岩ちゃんは及川さんに対してたくさんの呪いをかけていて、その中のどれが予言になっているのか、もしかしたら全てなのか、今はわからないけれど。


でも、この番外編のタイトルが作品の冒頭ではなく最後に示されているということが一番の明確な呪いであり、祝福であると。そう確信しています。



番外編のタイトルはぜひ、コミックス17巻で。



ドラマ『弱虫ペダル』で手嶋さんがちょっと間抜けに見えたことについて考える

※このブログは個人の感想です。




先日ドラマ『弱虫ペダル』第6話が放送されました。
合宿3日目、1年生と2年生のインターハイ出場を賭けた戦いです。
アニメ版を観たときはもう2年生にボロ泣きだったんですが、ドラマ版を観ていたらあれっ?と思うところがあったのでこっそり声を大にして言いたいんですけど、






いや手嶋さんそんな間抜けじゃないし!!!







そんなわけで今回「なぜ私は手嶋さんがちょっと間抜けに見えたのか」について本気出して考えてみたので書きます。ただ単に私自身の心の整理がしたかっただけ。
先に言っておくと最終的にはドラマを絶賛します。






● 間抜けに見えた理由


振り返ったところをまともにリプレイされたから。




いきなり答え書いちゃった。
でもこれに尽きると思うんです。


1年トリオが手嶋さんを追いかける最後の登り900m。
万策つきて、仕掛けたのは小野田坂道。
この追走劇は手嶋の作戦通り60秒で幕をおろすのか!?それとも……っ!?
っていうあのシーンです。
今更ですがネタバレがありますので未見の方はご遠慮ください。





「3‼︎2‼︎イチぃ‼︎ゼロ‼︎」……
60秒間リードを死守しきった手嶋さんは、安堵し思わず後ろを振り返ります。
ところがまさにその瞬間。
手嶋さんの横を小野田くんが抜き去っていったのです!!!



のとこです。もっと細かく言うと



「3‼︎2‼︎イチぃ‼︎ゼロ‼︎」……
60秒間リードを死守しきった手嶋さんは、安堵し思わず後ろを振り返ります。 ←ココ ‼︎
ところがまさにその瞬間。
手嶋さんの横を小野田くんが抜き去っていったのです!!!



ココまともにリプレイしちゃうのどうなんでしょうかね。
これリプレイされたら、私が手嶋さんだったらクッション一発くらい殴ってる。
しかも2回リプレイ……だと……
せめて1回目はわかる、小野田くんの件映したいもんね、でも2回目の後ろからのリプレイなくてもよくない!?!!!!全部で3回だよ!!ねえ!!!そんでもう後ろにいなくて「!?」ってなって前に向き直るところもリプレイされちゃってるのなんなの!!!私ならクッションの中身出してる!!(破ると掃除が大変そうなのでやめておく)
私もう手嶋さんに完全感情移入しちゃってるから、ここで主題歌流れて盛り上がってる感出されてもそのグルーヴにうまく身を投じられないですよね。。。あんなに好きだった『スキルフラワー』、このシーンだけはちょっぴり甘酸っぱい。ひょっとしてこれが…初恋…?



さて、おさらいするとドラマ版の流れは下記の通りです。「←」はなんかカメラワーク的なもの。


・ゼロで手嶋安心(スロー)
・はぁっと一息ついて後ろを確認 ←前から(スロー)
・後ろを確認リプレイ1 ←ちょっと引きの前から、横を小野田が過ぎる(スロー)
・後ろを確認リプレイ2 ←後ろから、同じく横を小野田が過ぎる
・小野田がいないと気づいた手嶋、前を見る ←後ろから
・前を見るリプレイ ←前から
・手嶋前方に小野田確認 ←前から(スロー)
・走り抜ける小野田 ←前から、スロー解除で主題歌イントロ流れる





あれ?なんかこうやって冷静になって見てみると、別にそんなに悪くないような気がしてきますね。じゃあ何が私をエントリー一個作るまでに駆り立てたのか。
せっかくなのでここで、アニメ版を見てみましょう。


● アニメ『弱虫ペダル』 RIDE.16 一点突破


アニメ版の流れは下記の通り。


・ゼロで手嶋安心
・「やった…ふり切った…」
・はぁっと一息ついて後ろを確認 ←後ろから
・小野田の声「うわああああ」 ←まわる車輪アップ
・後ろを確認している手嶋 ←横から、後ろを小野田が過ぎる
・小野田が手嶋を抜いた瞬間(手嶋は気づいてない) ←上から、スロー
・手嶋抜いていく小野田の気配察知、確認 ←アップ(スロー)
・遠ざかっていく小野田 ←後ろから



あ、やっぱりこっちの方が好きかも。ドラマ版よりかなりスマートな印象です。


見比べるとドラマ版で手嶋さんが間抜けに見えた理由がすごくわかりやすくて、ひとつはさっきから書いているように「リプレイを多用していること」。そのために、映像が冗長でモタついた印象になってそれがすべてリプレイ対象の動作をしている手嶋さんのイメージに覆いかぶさってしまっている。2つ目は、「小野田が抜いたのを手嶋が知るよりも大分早く視聴者に教えてしまっていること」。後ろを確認するところのリプレイ1でもう小野田くんが映ってしまっているので、視聴者はそれを知った状態でリプレイ2と、手嶋さんが前に向き直るくだりを見ることになります。さらに3つ目は、その手嶋さんが前を見る前に「一瞬、横を見た」こと。たったワンアクションなんですけど、これがあるだけで手嶋さんがキョロキョロしている、つまり「小野田がどこにいるか全くわかってない」感が増してしまっている。これ、ここでまだ画面に小野田くんが映ってない時なら全然いいんですけど、私はもう手嶋さんが小野田くんに抜かれたところを2回も見ちゃってるので、それでもまだ気づいてない手嶋さんが鈍臭く思えてしまうんですよね。


対してアニメ版はというと、手嶋さんが振り返ってすぐ「手嶋が振り返っている間に小野田が抜いていく」という画になって、私が「あ、抜いたんだ!」と理解した時には手嶋さんもすでに気づいて小野田くんを目で追っています。カット割りのテンポがいいので「手嶋が気づいていない」という描写も抜き去るほんの一瞬を捉えた感があって「自分が死んだことに気づいてない」みたいな味が出ているし、そのあとの手嶋さんの目線から察するに気づいたのは「抜かれきった後」ではない感じなのでそのほんの一瞬の間に手嶋さんは状況を理解したんだ!という「普段はものすごく仲悪いけどいざっていう時あいつの速さに唯一ついていけるライバル」みたいな味が出てて、なんていうかあれです、要するにアニメ版には「志村後ろ!」タイムがないのです。「手嶋〜、うしろうしろ!」つって私そんなことのためにスカパー加入したんじゃない!!!
もしかしたら、ストーリーを全く知らない状態で見たらドラマ版くらいリプレイがあってちょうどいいのかなと思うんですが、個人的には、状況を飲み込むためのタイムラグはアニメ版の小野田くんの声と車輪のアップを挟むだけくらいがしっくりきます。


でもドラマ版は小野田くんが抜いたという感動を噛み締めるだけの余韻があるし、手嶋さんのこの時点でのヒールっぽさが増して立ち位置的にわかりやすくはあるので、どっちがあるべき姿とかではなく、どの描写に重きをおいてほしいか、どういう解釈で物語を見せてほしいかっていうものすごい個人的な好みの話なんですけどね。すみません。





では原点に立ち返って、原作ってどんな感じだったっけというのを見てみます。



● コミックス『弱虫ペダル』6巻 RIDE.53 限界60秒


原作の流れは下記の通り。


・ゼロ‼︎
・「………」
・「やった…ふり切った…」
・後ろを振り返る手嶋と横を抜き去る小野田
・見開いている手嶋の目
・遠い小野田の背中と手嶋の背中



このシンプルさ。なんとたった8コマ、およそ3ページです。しかもそのうち2ページは見開き1コマ。
ドラマ版でいうとこれくらいになります。



・ゼロで手嶋安心(スロー)
・「やった…ふり切った…」
・はぁっと一息ついて後ろを確認 ←前から(スロー)
・後ろを確認リプレイ1 ←ちょっと引きの前から、横を小野田が過ぎる(スロー)
・後ろを確認リプレイ2 ←後ろから、同じく横を小野田が過ぎる
・小野田がいないと気づいた手嶋、前を見る ←後ろから
・前を見るリプレイ ←前から

・手嶋前方に小野田確認 ←前から(スロー)
・走り抜ける小野田 ←前から、スロー解除で主題歌イントロ流れる




これを見ると、漫画がいかに時間を削って削って描かれるべき瞬間だけを切り出しているかがよくわかります。そして、動かなければいけないアニメやドラマが、いかにその削られた時間を補間しているのかも。
ここのシーンに限るとドラマのほうは補間というより繰り返しを足しちゃってるんですけど、それを取り払ってみると実はひとつひとつのカットやアングルはかなり原作に忠実です。逆にアニメの方は結構オリジナルの演出になっていますね。アニメーション表現においてはこちらのほうが小野田くんが抜いたという事実が映えるのだと思います。



それにしても原作、今更ながらにスピード感と迫力がすごい。
抜かれたシーンの見開き、たった1コマで瞬間を切り取った画のはずなのに、手嶋さんの顔の横に描いてある「〃」だけで手嶋さんが振り返ったアクションまで見える気がするのほんとすごくないですか。iPhoneのなんかちょっとだけ動く写真かよ。
でも一番ハッとしたのはその前のページで手嶋が安心したところで、抜かれるとこ1コマなのに手嶋の安心の描写に3コマ使ってるんですよね。ここの手嶋の気の緩みが時間の流れの弛緩にも繋がってて、読者も油断してページをめくらせてからのドーン見開きっていう、この振り幅…!!緊張と緩和の逆バージョンみたいな、緩和させてからの緊張っていうそういうテンションの緩急のつけ方がめっちゃ巧みですよね……ドラマ版は緊張前の緩和にあたる台詞(「やった…ふり切った…」)をカットしていることで、話の展開のダイナミズムが弱まってメリハリがうまくついてないように感じられることも、手嶋さんの間抜けに見える面を助長している気がします。台詞だけ見たら完全に勝ったと思ってる漫画のほうがよっぽど間抜けなはずなんですけどね。キャラクターイメージを形作るのは見た目と台詞だけじゃないんだなって思わされます。




● ドラマ版について


ドラマ版ディスって終わりみたいの嫌なんで念のため付記すると、ドラマ『弱虫ペダル』、他にも「5人全員だ!!!!」のとこ正面から撮ってほしかったなとかなんか色々あるんですけど、全体的に原作に忠実で尊重されてて、とってもいいです。


だって、原作とコマレベルで比較できるってすごくないですか?あれですよ、知らないうちに手嶋さんが女キャラになってたとかないんですよ。6話だけじゃないんです、1話からずっとそんな感じです。すごくないですか????今まで原作もの見てるとき「なんでそこそーしちゃったの!!!!!どうして!!!!!やめて!!!!」のストレスめっちゃ大きかったんだなって気づかされたレベル。これだよ……この精神だよ私の求めてる実写化…………。


それに加えて背景が私たちの生きてる現実世界(しかもカラー)になってるので、修善寺サイクルスポーツセンターのドローン使った映像とかはリアルな景観の壮大さや自転車の爽快感みたいなのが出ててかなり良かったです。


キャラクターに関しても、若干解釈違いみたいなのを感じるところもありましたが、俳優さんの演技見てたら全然気にならなかった。このシーンではちょっと間抜けに見えてしまったけど、T2ほんと良かったんですよ……。鳴子の赤髪と巻ちゃんの緑髪と真波くんの髪型の落とし所はほんと綺麗に決まりすぎてて大好き。あと箱学のみなさんのキラキラ感なんなんですかね?それでいてキャラクターのイメージを損ねないとか夢かよ…。


個人的には2.5次元ドラマの夜明けぜよくらいに思ってて、若干安っぽいけどだからこそ大人の事情の介入を受けない超原作尊重もの、このジャンルはまじでもっと発展してほしい。




しかしこうやって映像と比べながら読むと、漫画って本当に表現技法が豊かですね……。このあとの「RIDE.56 最後尾の小野田」で今泉と鳴子がちぎられた小野田を助けに行くかどうかで揉めているところとか、吹き出しの形やガサガサ感で声のボリュームや勢いがわかるしフォントの使い分け、傍点、文字の大きさ、吹き出しの色で言葉のニュアンスや強調したいところも伝わるし(実際に声に出した時にその台詞に強いアクセントがつくとは限らない)、コマの大きさや形、ありとあらゆる手段を使って時間の流れにメリハリをつけて読者の意識や注目点を操作している。

「ロードレースには常に勝者は1人しかいない!!」
「3人で仲良く敗退することに意味はない!!」
「あいつは追われるよりも追いかける時の方が格段に速い」


すべて同回の今泉の言葉ですが、もし台本に起こしたらさらっとこうなってしまうこれらの台詞、文字だけだと一番下はビックリマークがついてないからそんなに重要ではなさそう、上2つはまあ同じくらいの気持ちかな?くらいの印象ですよね。でも漫画で読むと全然違う。
これをアニメで声優さんがどう演技しているか、ドラマで俳優さんがどう演技しているか、そして原作の表現とその印象にどう違いがあるのか、見比べるとかなり楽しいです。メディアミックス作品全てが原作を尊重しているからこそ成立する奇跡の遊び……何より、その源流に位置する舞台版『弱虫ペダルの漫画とは違う削ぎ落とし方とい っ た ら …!!!ウェルカムレースとか漫画・舞台・アニメ・ドラマの三つ巴ならぬ四つ巴でまじで表現の異種格闘技戦です。ドラマはあと1話しかないけど…。



あっそういえば2017年1月18日(水)に!!ドラマのBlu-ray & DVD BOXが!!出るんだった!!!!


www.bs-sptv.com



レンタルは2/15からだそうなので、ちょっと興味を持たれた方は是非。