王様の耳はロバの耳

言いたいけど言えないからここにうずめる

「入野自由マジすごくね」──ミュージカル『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』を観た

先日、ミュージカル『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』を観ました。






あまり作品に関係がないことなのですが、出演されていた入野自由さんに関してもうひとつ強く思ったことがあったので書きます。

※すべて私個人の感想と思い込みです。あと、私が知らないだけっていうのは重々承知した上で書いてます。





おいなんの話だよってところから入りますが、
クドカン以降、等身大の若者の言葉を台詞として書けるテレビドラマ脚本家が出てきてなくて、テレビドラマにおける若者像のアップデートが滞っているような気がしています。


クドカンの書いた『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』の脚本には、2000年代の若者たちの言葉が生き生きとしたリアルな台詞としておさめられていました。

佐藤隆太さんや塚本高史さんはまさに2000年代若者言葉のネイティブスピーカーで、彼らこそがクドカンの書く台詞をリアルにしたと思うし、
ジャニーズの長瀬智也さんや岡田准一さんはこの若者言葉の型にうまくハマったことでわかりやすいキャラクターとしての魅力を放つことができたと思います。


でもいま、2010年代の若者の言葉はまだあまり台詞化されていないような気がしてて、たぶん「マジすごくね?」とか「できますん」とか「ぶっさんの葬式ぜってーいかねーかんな!!」じゃないんですよね、彼らのリアルな言葉は……




ところが。去年、個人的に結構衝撃的な発見をしました。
その未だ台詞化されていないはずの2010年代の若者の言葉を、ネイティブに発話しているキャラクターがいたのです。



おそ松さん」のトド松。
入野自由さんです。




台詞が明確に若いわけじゃないのに、イントネーションやトーン、リズムや間など非言語的な部分がとにかくネイティブ。2010年代の若者の台詞のステレオタイプはこの人から作れるんじゃないかと思ったくらい。


ネイティブスピーカーはたくさんいても、それを芝居の上にのっけて人に届けるレベルで発話できる人はそうそういない。芝居の型ができてない今ならなおさらです。




今回、ミュージカル『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』でそんな入野自由さんの舞台上での姿を初めて見て、なんて端正な演技をするひとだろうかと驚きました。


当たり前ですけど、2010年代の若者らしさなんて微塵も見せない。彼は1880年代のテオであり、ゴーギャンであり、ゴッホの父であり。


なにこの人バイリンガルじゃないかと。清らかな日本語と、雑多な若者語のバイリンガル。文語と口語を軽やかに行き来するひと。
とても面白いと思いました。


もし私が、日常会話でいきなり教科書に載っているような言葉でおしとやかに話し始めたら周りは戸惑うでしょう。
逆に、たとえば結婚式のスピーチなどで「新婦マジすごくね?」とか言い出したらどんなに賞賛の気持ちがこもっていてもとりあえずいったん絶交されるでしょう。それはわかる。
でもじゃあ「僭越ではございますが…」と自分が違和感なく綺麗に言えるか、それを周りに違和感なく受け止めてもらえるかって話です。多分それは、言い慣れているかによる。



同じ日本語でも、その場その場の雰囲気に合った言葉があります。それを正しく選び取ることは、そんなに難しいことではありません。
でも、その言葉に合った発話ができるかどうかは別の話です。敬語、タメ口、文語、口語、お父さんことば、赤ちゃんことば。それぞれに合った発話の仕方があります。普段使い慣れていない言葉は、どうしても違和感が生じるものです。



その点、入野自由さんは「大体言い慣れてる」。




役者として舞台的な台詞回しに長けているのはわかるけど、その裏であんな若者らしい発音ができるんだもんなぁ。
いったいこの人はどれだけの日本語を聞き手に渡してきたのか。声優として、俳優として、歌手として、入野自由として。
齢28にして芸歴25年、その中で発し続けてきた数々の言葉が、彼ひとりの中に積み重なって層をなしてる。




え、入野自由マジすごくね?




しかも!!歌が!!普通に上手い!!!
彼は節のついた台詞すらも、綺麗なビブラートやファルセットを織り交ぜて客席に言葉として届けてくれるんですよ。



こんな役者がいるのだからはやく2010年代の若者を描けるドラマ脚本家が出てきてほしいし、入野自由さんにはそんなことにこだわらずに端正な日本語を話す脚本もそうでない脚本もたくさんやってほしい。



そして、2010年代のうちに今の若い役者さんたちに寄り添うような、彼らにとってのリアルな言葉を紡いでくれるようなドラマが見たいな、とふと思いました。

ハイステ再演全景で思わず巻き戻したシーンメモ

先日、DVD「ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』 Documentary of “頂の景色”」が発売されました。



ドキュメンタリーDVDに特典がついてきたと思ったら舞台本編(以下、「寄り」)で、もう一個特典ついてきたと思ったら舞台本編の全景映像(以下、「全景」)って何言ってるかわからないけど最高なDVDとなっております。


全景のほうを見終えたので、思わず巻き戻してまで見直してしまったシーンメモ。寄りはまだ比較程度にしか見れてないです。


全部書いたら長くなりすぎるのでベスト3にしてみたんですけど、OPは私の中で3万回くらい殿堂入りしてるので省略。
1位のシーンにライビュや配信で気づかなかった私の目は!!!!まじで!!!ふしあなか!!!!!




第3位 OP前「なんで居る!!?」

ライビュで見たときは、初演と立ち位置逆になったなーなんでだろなーくらいにしか思ってなかった。
でも全景で見ると、位置から照明から徹底して影山の顔を見せないように演出されていることがわかりますね。寄りだと影山の顔も見えるんですけど、ここはきっと「観客は影山の表情を知ることができない」が正しい状態なんだろうな。
その演出意図はわかりませんが、こうなったことによりむしろ影山のもう一人の主人公感が増してるのすごく面白い。初演は運命の二人が出会った(日向に影山が準じている)、って感じだけど、再演は日向が運命の相手に出会った(影山が日向に準じていない、ここで影山の物語は語られていない)、って感じ。
あと初演って「日向も影山も観客側を向いて立ってるけど劇中の二人は向かい合っている」というものすごい演劇らしいお約束を使ってるんですけど、再演は実際に二人が向かい合ってて、うわっ、これが本来の形じゃんっていきなり頭殴られたような気づきを得ました。



第2位 青葉城西戦Starting orderの月島

ポーズに至るまでの動きがめっちゃかわいい。月島らしからぬキュピーン感。
ガチャみたいなデフォルメが気持ちよくてつい巻き戻して見ちゃう。何度でも見れる。ここだけgifにしたい。



第1位 青葉城西戦「今!!!ココだろ!!!」

もともと初演から、「スパイクを打った日向の着地とともに後ろに立つ光の当たらない不敵な影山の姿が現れる」というめっちゃかっこいい演出で好きなシーンではありましたが、再演ではさらに磨きがかかってて興奮しました。


まず影山のトスなんですけど、初演ではボールの動きを表現する照明の煽りだけだったんですよね。ここに再演から追加された緑レーザーがすごい効果的ですよね。。チカッくらいなんですけど、まじ閃光ライオット。わたし以前のエントリーで「日向の速さや高さはもっと表現できるはずやで」的な偉そうなこと書いてたんですけど、このレーザーは変人速攻の速さ、もっというと超常的なことが起こるという予感や非日常性をすごい演劇的に表現してるので気づいてなかったわたしは穴があったら入りたい。



そしてそのあとに続くシーン。私、今更気づいたんです……!!影山の上げたトスを打つために跳ぼうと羽ばたく日向の後ろで、影山も全く同じ羽ばたきのモーションをしていたということに……!!!
こんな大事なモーションを!!!見落として!!!なにが「ハイステ感想メモ」か!!!


色々解釈のしようがあると思いますが、私はこれをどストレートに影山の気持ちも一緒に飛んでいるということであると理解しました。さらにすごいのは、影山は日向の方を全く見てない。日向は顔を上げてるんですけど、影山は下を向いて、羽ばたくモーションだけをやってる。これが……シンクロ………!!!日向にトスを上げた影山が、光の当たらない場所で、日向と同じ羽ばたくモーションやってるって、ほんとこれ以上ない抽象表現じゃないですか…!!!これ見た時「影山飛雄は飛ばないのに飛雄って名前なのこういうことかよ!!!」って思いました。日向翔陽、影山飛雄、日向を翔ばせて影で飛ぶ、そういうことかよって!!!体が名を表している……!
もしくは、舞台上の印象だけをダイレクトに言うなら、「日向の影となって、飛ぶ」。影には顔がないから、彼は下を向いているのかもしれない。





ちょっと思い込み強すぎな面ありますけど、もしかしたら見映えだけの問題だったかもしれないけど、とりあえずこれが影山飛雄をテーマにした創作ダンスだったら百点満点つけてる。身体で表現するって、本当に難しいことなんですよね。
初演だと単純に手を前に構えて屈んで待機してるだけなんですけど、その言ってみれば完全に単なる「余白」でしかなかったところへ、これだけの情緒が書き込まれていたことにめちゃくちゃ感動している。



で、個人的にこれのおかげで付随して綺麗に腑に落ちたのが、町内会戦「思わない!!」のあとの日向と影山が踊るシーンです。演劇的な表現とわかっていても、あそこで同じ動作で2人で踊るのちょっとだけ違和感あったんですけど、これもなんていうかあの羽ばたくモーションの延長線上にある気持ちのシンクロなのかよ……っ!ってなった。ついでに2人が手を離したあと、初演では余韻に浸るように2人向かい合って頷きあってたところを、再演ではお互いのことは見向きもせず、はっと我に返ったように日向は手を上に、影山は手を下に見つめたままぐっと噛み締めるふうに変更したことで、感傷的な面だけでなくリアルにスパイカーとセッター2人の個人がそれぞれ手応えを感じたっていうシーンになっててそこもすごく良かった。




いやでもほんとあの羽ばたきに気づけただけでもこのDVD買ってよかった……



せっかくなのでここで本編ドキュメンタリーの木村さんのあの言葉を振り返ってみましょう。


「影山飛雄です。舞台上で羽ばたいてきます。羽ばたくのは僕じゃないけど。滑走路を作ります、日向に」




この言葉の全てが、あのモーションに詰まってた。





とりあえず声を大にして言いたいのは、

全景映像って、素晴らしいですね。



以上

ハイステドキュメンタリー上映会メモ

先日、DVD「ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』 Documentary of “頂の景色”」の舞台挨拶付き先行上映会に行ってきました。
そのなかで個人的に好きだったくだりメモまとめ。木村達成さん中心、超ニュアンスです。Twitterであげたものに文字数削ったとこだけちょっと加筆してざっくりまとめました。



ステージナタリーさんのレポートはこちら。
natalie.mu




◆登場
司会者さんによる紹介とともに右から日向翔陽役の須賀健太さん、影山飛雄役の木村達成さん、月島蛍役の小坂涼太郎さん、山口忠役の三浦海里さんの順で登壇。司会者さん+4人で並んで椅子に座ってトーク。
その席が右から小坂さん、須賀さん、木村さん、三浦さんだったので、小坂さんがキョロキョロしながら須賀さんの横に移動していって早速可愛い。



◆最初の挨拶
木村さん「おはようございます!影山飛雄役の木村達成です。今日はこんなに広い会場で…アイアシアターくらいあるんじゃないかっつってねよろしくお願いします!」
自分でぶった切っていくスタイル



◆一足先に映像を見た感想(須賀さん)
須賀さん「みんな若いっていうか、初演の時のたつなりが!たつなりがまんまるで!」
三浦さん「でも健太くんも(自分の髪の毛をななめに触って)こんな感じで」
須賀さん「いや髪型とかの話じゃなくて」



◆一足先に映像を見た感想(小坂さん)
小坂さん「見てて、ああ僕らここで仲良くなったなーみたいなのはありましたね」
須賀さん「そんなのあった?あっ、この時!みたいな?」
木村さん「そんなターニングポイントみたいな」
須賀さん「恋愛みたいな、俺たち、ここから…みたいな」
小坂さん「ありました。今度一緒に見ましょう。ここ!って言います」
須賀さん「なんでお前と2人で一緒に見てそんなんやるんだよ。つまんねっ!」



◆公演の思い出
三浦さん「地方だと皆でご飯とか行くじゃないですか。串、串…やき?大阪…串揚げ?揚げ串?食べたよね?串…」
小坂さん「串?」
木村さん「串」
須賀さん「串揚げ?」
壇上で串ゲシュタルト崩壊


三浦さん「串揚げ!食べたりしました。合宿みたいで楽しかったです」


木村さん「公演のあと、皆で銭湯に行って。ここ行こうとかって調べて。疲れをとって、次の日に備えてました。そんであれですよ、最後はコーヒー牛乳!」


小坂さん「健太くんと飲んだずんだシェイクがとても美味しくて忘れられないんです」
木村さん「一番の思い出ずんだかよ」
須賀さん「あんだけ色々あったのひっくるめてずんだシェイク!?」
小坂さん「公演以外です」
須賀さん「(ずんだシェイク)行きと帰り飲んだからね」



◆初演から変えたところ
木村さん「この間久しぶりにバレーやったんですけど、くっそほど疲れました」
という話の流れから
木村さん「初演と再演の違いなんですけど、座るようにしました」
須賀さん「座るから俺が行かなきゃいけないんですよ」
木村さん「座ることによって他の人が来てくれて変化が生まれるので、(演出の)ウォーリーさんも面白がってくれて。これがベストかなと」
須賀さん「あなたにとってはベストかもしれないがおれは…?」



◆役作りで苦労したこと(木村さん)
木村さん「うーん、ぼくはまんまですから」
司会者さん「クールで熱いというような」
須賀さん「クールではない」
素早い否定


木村さん「クールではないんですけど、これやったらあとでどうなるとかは考えないですし、言いたいことは言います」


木村さん「だからアドリブをバンバン入れるのも抵抗ないですし、でもあえて変えずにいたところもあります」
須賀さん「でも舞台上で一番笑うんです」
木村さん「ぼくはゲラなんですね。そしてマイクがうまいこと拾ってしまうと」
司会者さん「影山が笑ってる!?と思った方もいたかもしれませんね」
木村さん「笑いますよ!人間ですから!」



◆役作りで苦労したこと(小坂さん)
小坂さん「疲れてるから肩で息したいんですけど、月島はそういうの出さないからできなくて、鼻で(息をして)ンフー、ンフーって。あとは、眼鏡がずれるとか…」
四人「……」
木村さん「…ボール投げるとこだろ!」
壇上全員それな感


木村さん「日向影山と月島山口が初めて会うところで、ピリッとしなきゃいけないのに、ボールを変なところに投げるんですよ」
須賀さん「ボールを後ろに投げなきゃいけないんですけど、一回こうなった時があって(自分で自分の額にボールをあてる)」
須賀さん「ボールが前の客席にいっちゃって、えええ!?みたいな。お客さんにとってもらったんですけど。そのシーン、唯一、舞台上全員俯いてました」
木村さん「田中役の塩田さんもゲラなんで、プスって音をマイクが拾いましたね」
小坂さん「僕はこうやって一生懸命(クールな)顔を作って。あれからボールを投げる練習しましたね。」
木村さん「こっち(右後ろ)かこっち(左後ろ)にやるだけだろ!」
三浦さん「最終的にバッグのせいとか言ってた」



◆ウォーリーさんに言われて印象的だったこと
木村さん「僕は『たつなりはいつ本気になるの?』と言われて。いや、本気ですけど、って言ったら、『俺にはそうは見えないんだよね。一番いい時を知ってるから』って」


須賀さん「俺は一度も褒められたことないんです」
木村さん「打ち上げとかでもないよね」
司会者さん「信頼の証という感じでしょうか」



◆一番ギャップがあった人
三浦さん「僕はたつなりくんです。猪野広樹くんという人もそうなんですけど、(木村さんのほうを見て確認しながら)人見知りなんですよね。だから話しかけんなオーラみたいなのがあって、絶対怖い人だと思ってて。でも喋ったらなんか結構、ユーモアの人で」
木村さん「ユーモアの人」


三浦さん「あと健太くんにも偏見あって、いっぱい仕事してるから絶対コレ(天狗)だと思って」
須賀さん「偏見の塊じゃねーか」
三浦さん「でも全然そんなことなくて優しくて。俺ひねくれてんなー!烏野はそういう人多いです」
須賀さん「もはやお前の問題だよ」



◆特技披露タイム
司会者さん、須賀さん、木村さん、三浦さんの「特技をお持ちの方がいるとか?」という無茶振りの流れで
小坂さん「得意ではないんですけど、誰もディスらないラップを…」
小坂さんの言動はとても平和



◆ラップ披露
テーマは『烏野一年生』
小坂さん「yo,輪廻転生,してきた一年生,yeah,ユーモア,ユーモア,健太くん」
会場爆笑



◆ラップ披露後
須賀さん「最初なんて!?」
小坂さん「輪廻転生」
須賀さん「してきてねえから!俺ら別に輪廻転生してきてるわけじゃねえから!」
木村さん「入りのインパクト強すぎてビートも刻めないわ!」
ラップに合わせてボイパやってたたつなりさん(何でもできる)


木村さん「韻も踏んでないし」
須賀さん「輪廻転生、烏野一年生、で踏んでるんじゃね?」
小坂さん「そうです」
須賀一派には伝わってた



◆ドキュメンタリー見所(三浦さん)
三浦さん「初演の頃とかみんな全然顔つきが違って、盛ると、整形したんじゃないかってくらい」
須賀さん「盛るなよ」



◆ドキュメンタリー見所(須賀さん)
須賀さん「先程も言ったんですが金田一役坂本くんの眼鏡を…このサイズ(スクリーン)で。とかいって誰も笑わなかったらどうしよう」
小坂さん「(マイクにのるかのらないかくらいの声で)大丈夫です。絶対、大丈夫です」
後輩からの力強い太鼓判



◆その他、断片的にうろ覚えな発言


・一足先に映像を見た感想
木村さん「初々しい」


・ドキュメンタリー見所
木村さん「これを見ると、ぼくたちがどういう気持ちだったり、意気込みでやってるのかわかっていただけると思います」


・最後の挨拶
木村さん「今日はこんなに広い会場でお話しする機会をいただけて光栄です」
須賀さんがうんうん頷いてた


・役との違い
小坂さん「役では仲悪いんですけど、健太くんにはお世話になってまして」


・役との違い
三浦さん「役でいうと月島はツンツンで山口はデレなんですけど、実際は逆で。僕が結構言う方なので」


・新作公演について
須賀さん「求められるものが多いと感じてますし、人数も増えて、お祭りみたいにできたら」


・ドキュメンタリー見所
小坂さん「寝癖とかです」


・ウォーリーさん
木村さん「ウォーリーさん、一番笑ってくれるんですよ。マイク通して笑ってくれる」
木村さん「ただウォーリーさんだけ笑ってない時あるんすよ」





◼︎とても個人的な印象と感想

・文字でうまく表せないのがとても残念なんですけど、須賀さんのつっこみは、イジリとかとはちょっとニュアンスが違ってなんていうかお兄ちゃんが諭してくれるみたいな感じがあります。


・トークは30分ほどだったのですが、司会の藤田さんがハイステやハイキュー、キャストのツボをきっちりおさえた上で質問・進行してくださるので、とても充実した内容だったように思います。何より楽しかった…ありがたや…


・見た目の印象だけでいうと右から左に行くにつれてどんどんチャラくなっていくのがかわいい。(小坂さん→須賀さん→木村さん→三浦さん)
役だと真逆な感じなので余計かわいい。(山口→影山→日向→月島)


・須賀さんはつねに全体(壇上だけじゃなく、会場のお客さんや関係者含め)を見てバランスをとってる印象。全方向へのつっこみが素晴らしいし、本当にしっかりしていらっしゃる…。
木村さんは自由なようでいて一番「いまレールに乗っているか」に敏感だった印象。話が逸れ過ぎたりぼやけすぎる前に本題に立ち返った回答をしてそれとなく軌道修正をはかっていたような気がしました。茶髪センターわけでちょっと悪そうでかっこよかったです。
小坂さんは本当に三大可愛い後輩感。会場の爆笑はだいたい小坂さんの言動から。あと健太くんにお世話になっておりますオーラがすごい。心底慕ってる感じ……ええ子や……。そして須賀さんの人柄は推して知るべし。
三浦さんはご本人もおっしゃっている通りちょっとウェイウェイしてて、言い回しや語彙も3人とはちょっと違って面白い。常に違った角度から新鮮な風を入れてくれる印象でした。


・「たつなりはいつ本気になるの?」って、役者としての木村さんの本質を言い当ててるような気もして、すごくどきどきしました。気がしただけ。


・木村さん、調整してるかのような声の圧が印象的。軌道修正するときは声がよく通る。



以上

言いたいことはひとつだけ──舞台『Vamp Bamboo Burn』を観た

先日、劇団☆新感線 SHINKANSEN☆RX『Vamp Bamboo Burn~ヴァン!バン!バーン!~』を観ました。あらすじ等は公式サイトにて。言いたいことはひとつだけなんですけど、ネタバレなのでブログに。




以下ネタバレ感想。

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彗星は時代を並走する──映画『君の名は。』を観た

先日、映画『君の名は。』を観たので、その感想をメモ。ネタバレなしです。






新海誠」と「RADWIMPS」は、ある層には絶大な人気を誇るけども、一般的な知名度はそれほどではないという状態だったとの認識です。


その2つを掛け合わせて、
新奇性だけじゃ人は手を出せないから
「男女が入れ替わる物語」と「神木隆之介」という鉄板設定による親和性をぶらさげて
相変わらずの「長澤まさみの正しい使い方レクチャ」も忘れず
ついでに「上白石萌音」という才能もくっつけて大衆に売り出す。



それで興味を持たせて、結果みんなに面白いと思わせるってどんな能力なの?って思うんですけど、
この映画のプロデューサーである川村元気氏は26歳で企画した映画『電車男』(2005年)以降ずっと「マイナーぎりぎりにあるコンテンツを一気にどかんとメジャーに押し上げる」「ファン以外の人をその気にさせる」ということをやってるので、相変わらずすごいな、手練れだなと思います。




RADWIMPSが宇宙をキミにぐわんと結びつけてしまうように、新海誠が神をキミにそっと結びつけてしまうように、
川村元気氏が新海誠RADWIMPSとわたしたちの2016年の夏を大量のテレビCMによるぜんぜんぜんせからぼくはーで結びつけてしまった。



これから先あの歌を聞いたらたぶん連鎖反応的に『君の名は。』、2016年夏、『ポケモンGO』、『シン・ゴジラ』、「庵野やめろ!俺より面白いものつくるんじゃねえ!!」が思い出されるんだろうなぁ。



これが「ヒット作を生む」ということか。
よく「時代を彩るヒット作」とかいうけど、狙ってヒットさせるのってほんとすごいよなぁ。





と、映画を観る前は感嘆とともに若干うがった見方をしてたんですけど、
実際見たらもう、もう・・・!



新海誠の描く世界のきらめきがまぶしくてスクリーンが直視できない。
RADWIMPSの歌が響き渡るその余韻を邪魔したくなくて息ができない。
神木くんと上白石さんの声が可愛すぎて身悶える。



死ぬかと思った。



「一生に一度のワープをここで使うよ」的な世界観が映画館という空間で完璧に再現されてた。



そんでまた川村氏によって引き合わされた2つのコンテンツが相互にプレゼンし合ってるというか、
新海誠RADWIMPSの歌の聴き方を教えてくれているしRADWIMPS新海誠の映像の見方を教えてくれている。


これこそ最高のプロモーションビデオ。



ヒット作に御託はいらない。
いいものはいい!!



大勢の人が同じものを見て、様々な感情を抱き、自分の中だけには抑えきれない衝動に駆られて、記憶や体験を共有していく。


まるで彗星を見た時のように。


時代の中で輝き大衆の視線を集めるもの。
大衆の共通体験であるからこそ、のちに「あの年はこんなだったね」って、誰かと語り合えるもの。


これがヒットするってことなんだなあ。
















同じく川村元気氏の手掛けた今年公開の映画『何者』。
予告編で見たんですけど、同世代の憧れ或いはトラウマであろう朝井リョウと米津玄師に中田ヤスタカを掛け合わせるって、ほんと業が深い。

私がドラマ『弱虫ペダル』を推せる31個の理由(画像あり)

BSスカパー!で絶賛放送中のドラマ『弱虫ペダル』について、個人的に推せるところを31個書きました。
1話、2話と様子見して下書きに留めてたんですけど、3話のウェルカムレースがめっちゃよかったんです…!!

(9/14追記)
公式から提供されているツール「ドラマ弱虫ペダル写真集メーカー」を見てたら使い道これしか浮かばなかった。

https://sptv-yowapeda.jp/share/2011sptv-yowapeda.jp


上記写真集のページ(P.1~31)と、こちらの記事の通し番号(1~31)が連動しております。
表紙と中表紙を経て、4枚目からがP.1。該当する写真がなかったものはロゴ。
最後の方、別に飽きたわけじゃ…ない……32~34は箱学用にとっておきました。



スカパーって初回加入料3,024円なんで結構高いんですけど、あとは一番安いチャンネル契約すれば月々900円くらい?で見れるっぽいので興味のある方は是非。


つたなくてきらきらしてる、民放では無名の若手俳優たちの青春ドラマが見れます。


以下、順不同。



1.小野田坂道を演じる小越勇輝のなんでもこなせちゃう感
ミュージカル『テニスの王子様』で越前リョーマ役として通算500回の公演出演を果たしたプリンス・オブ・テニミュでおなじみの小越勇輝さんがこのドラマの主人公小野田坂道を演じています。
映像作品でも違和感なくお芝居をこなしていて、ママチャリで坂も上るし転ぶし吹っ飛ぶし、ごはんもりもり食べるし、今泉と鳴子になつくし、ふふっ、かわいいね。なんでこんな前髪長いのって思ってたけど、ドラマで見るとこれがいい感じにオタクっぽさを出しているというかプリンスっぽさを隠しているので髪型大事。小越さんって、ほんとうに、感情を身体で表現するのがうまい。


2.今泉の初期泉感
今泉の初期泉感。いろんな意味で一番定着してない雰囲気が余計に初期泉くん。
演じるのは木村達成さん。ミュージカル『テニスの王子様』(海堂薫役)、演劇『ハイキュー!!』(影山飛雄役)に続いての黒髪つり目役です。結構映像慣れしてない感じが出てるように思うんですが、この伸びしろがすげー熱い。確変いつだろう。。。テニミュでの確変にリアルタイムで立ち会えなかったので、今回こそはとワクワクしている。っていうかすでに2話の「小野田、お前…!」の顔とか超よかったからね。あの顔よくなかったですか。表情筋の動きでいうと全然笑ってないのにめっちゃうれしそうなの伝わってきて、ほんとこういうまさかな瞬間あるから青春ドラマって最高です。演技もナレーションも、1話より2話、2話よりも3話と確実に上達しててリアルに昨日よりは今日今日よりは明日なんですよマジで。3話かなりきてたな……こいつ…あほみたいに成長してやがる……!!


3.鳴子がめっちゃ鳴子
鳴子がめっちゃ鳴子。野生の鳴子。鳴子ってメインキャラの中では一番少年漫画っぽいデフォルメの効いた造形だからドラマへの変換は難しいでしょと思ってたんですけど、これがまさかのいい塩梅にリアル三次元に着地してる。赤髪、眼差し、八重歯、喋り方、どれもこれも絶妙な三次元具合に調整されている……「カッカッカ」って笑い方すらそんな違和感ないからすごい。
演じるのは深澤大河さん。少年ハリウッドから派生したアイドルグループ「ZEN THE HOLLYWOOD」(通称ぜんハリ)のメンバーとのこと。そっとTwitterを拝見してたんですけど、ドラマの撮影中も舞台『ダイヤのA The LIVE』(小湊春市役)の稽古に加えて、ぜんハリのライブとかもやってるみたいでしてね…ええ…ライブとドラマと舞台掛け持ちって、これぞアイドルな多忙スケジュール…おつかれさま…そんな中で鳴子くんを三次元に出現させてくれた奇跡に全力で感謝したい。


4.幹ちゃんの出すぎないヒロイン感と綾ちゃんの綾ちゃん具合
幹ちゃん(桜井美南さん)、男性チームもののヒロインポジションを嫌味なく努めててすごい。なんて可愛いの…!そして綾ちゃん(野口真緒さん)のディスりやデレが炸裂するのも最高です。綾ちゃんの綾ちゃん具合がこのドラマを救う。


5.寒咲通司がいけめてる
寒咲通司(安里勇哉さん)がいけめてる。いま私の中で一番いけめてる。一言二言しか喋ってないのにその台詞の言い方めっちゃカッコいい。ハズさない男寒咲通司。


6.金城真護の違和感のなさ
金城真護(郷本直也さん(36))の違和感のなさ。36歳で高校生やってるのにそんなに違和感なかった。年齢よりものすごく若く見えるとかではない。金城さんが大人すぎたんや……郷本さんから優しさがにじみ出てるのすごく素敵。
※すみません。3話のメガネに制服は無茶苦茶に違和感あって好きです。


7.田所さんの身体のライン
田所さん(友常勇気さん)の丸みを帯びた身体のラインがかわいい。あと、前髪のラインもかわいい。狭い車内でギャーギャー騒いでるのかわいい。このドラマきっての癒し系。


8.幸薄そうな巻ちゃん
巻ちゃん(馬場良馬さん)、原作イメージよりだいぶ髪の色うっすいんでなんか幸薄そうに見えるんですけど、ドラマの風景になじんでて「三次元における緑髪の限界ライン」をつきつめてくれた感じあってうれしい。喋ると普通にイケメン。


9.郷本さんと小越さんの、舞台版を背負っている感
この二人が、別に何言うわけじゃないんだけど舞台版に出演してきたキャストの誇りを背負っている感じがあって、だからこそ私はドラマ版を見ていられる。


10.チーム2人
言葉では言い表せない二人の雰囲気を漂わせてくれてて最高。


11.古賀さんがいる
古賀さんがいる。


12.杉元が杉元
やたら板についている最高にほどよいアニメ演技。杉元が一番2.5次元かしれない。


13.総北高校自転車競技部の空気感
T2(鯨井康介さん、八島諒さん)、古賀さん(輝馬さん)、杉元(平井浩基さん)、ピエール監督の醸し出す空気感が自転車競技部を立体的に体現させてくれてて、「総北は本当にあったんや」感あります。


14.エンディングがキャラソン
総北高校自転車競技部の「The DAY」と箱根学園自転車競技部の「Winning Tracker」。
ドラマ界隈ではもはや絶滅寸前ですけど、エンディングがキャラソンってアツくないですか?

youtu.be



15.主題歌がアニメと同じバンド
MAGIC OF LiFEの「スキルフラワー」。わかりやすい世界観の共有!!!!

youtu.be



16.本編の盛り上がってきたところで主題歌が流れる
ドラマのいいところで待ってましたとばかりに主題歌流れるとちょっと「フフッ」てなるんですけど、このドラマは本編も曲もアニメっぽいので気にならない。でもまさかあそこでキャラソンまで流れるとは思わなかった……!めっちゃ熱い展開だった………!!!


17.ヒメヒメが舞台『弱虫ペダル』と同じ
わかりやすい世界観の共有!!!!(2度目)


18.東宝マーベラスが関わっていることによるこれぞ本来のメディアミックス感
ふつう実写化作品とアニメ化・舞台化作品はだいたい断絶せざるを得ないんですが、この作品は両者が関わっていることで上記のような世界観の共有が可能になっていて、ここにさらにドリマックスというメジャーなとこが入ってきてるのってすごく珍しい体制なんじゃないでしょうかどうでしょうか。


19.ロードバイク監修協力ワイズロードさんの熱意が最大限に発揮されていること
公式サイトなみの充実度…!!!なかなかここまでの内容の特設サイトは作れないと思うので、いろんな意味でありがとうございます。

www.ysroad.co.jp



20.ロードバイクへのこだわり
「二人の仲を連想できるようにホイールもあえて巻島と同じシマノの『シマノ WH-9000-C24』を使用しました。」
(公式キャスト紹介 クライマー東堂尽八の自転車紹介より)

www.bs-sptv.com



21.小道具、ロケーションの原作再現度
鳴子の机の落書きとか、激坂のすべりどめとかもこだわっているそうです。


22.話もだいたい原作のまま
一番簡単そうで一番難しいこのことが実現されているのが一番うれしい。


23.坂道、鳴子、今泉の身長差
昔「君を見上げて」ってドラマあったんですけど、この言葉に詰まってるロマンなんなんですかね。
坂道165cm、鳴子165cm、今泉181cmに対して
小越さん168cm、深澤さん162cm、木村さん182cmらしいのでだいたい忠実。


24.気になる合成
合成は気になる。やっぱ気になる。でも回を重ねるごとにその粗さをごまかす技が発達しててちょっとおおって思ってます。


25.そういえばキャストがロードに実際に乗っている
実際に役者がロードバイク漕ぎながら演技してるので、合成が目立たないシーンだとかなりリアリティがあります。坂道が初めてロードに乗ったシーンとか、その軽さが目に見えてわかったもんね。めちゃめちゃペダル回してるのもよく見えて感動した。あと本気になった今泉がロード乗りながら噛んでジャージの胸元開けたのすごいよかったです最高ですありがとうございます。


26.オープニングが2.5次元ドラマみ出てる
オープニングのアニメっぽいエフェクトみたいなの2.5次元ドラマっぽくてすごくいいんですけど、途中でCDTVアー写そのまま使った映像みたいになるのだけちょっとフフッてなる。


27.なぜかナレーションが檜山修之
なぜかナレーションが檜山修之。全7話で今3話まで終わってるけど、檜山さんが冒頭でこれまでのあらすじ全部教えてくれるから途中からでも見られるよ!!


28.箱学がまだ出てない
こんだけ書いたけど、箱学まだ出てないから。出てなくてこれだから。4話から出るそうです。


29.「キャラクター」だけを後ろ盾に選ばれているキャスト
ドラマへの出演、特にメインキャストでの出演というのは、それなりの後ろ盾がないと難しいのではないかと思うのです。実績とか、事務所とか。お金をかける、その信用に足る何かがないと、こわいじゃん。
でもこのドラマのキャストは、どうやらかなりの割合で「キャラクター」、もっというと「キャラクターを3次元に実体化させられる可能性」だけを後ろ盾に選ばれているように私には見えて、これぞ2.5次元メソッドの応用ではないかと。そしてこれは要するに、制作陣が原作を信頼してくれているということなんですよね。


30.なによりやっぱり、原作が尊重されていること
これに尽きる。


31.あと個人的に、これが連続ドラマであること。
リアルタイムで「今、その時」の活動を見られて、それがだんだん目に見えて良くなっていって、しかも約束された「次」を楽しみにできるって、何かのファンをやっててこれにまさる喜びはないんじゃないかなって気がしています。




第1話は無料で見られるので、どうぞ。


http://gyao.yahoo.co.jp/player/03000/v00534/v0000000000000003189/gyao.yahoo.co.jp

あなたと共に私は生きるの──舞台『ビニールの城』を観た

誰かの夢とか、理想とか。
空想、未来の恋人とか。
もうここにはない笑顔とか。


誰かが心に思い浮かべ、
どこかの紙に描いたもの。


舞台とは、
荒唐無稽の有様を
この世で唯一
突きつけることのできる場所。











ポエミーかよ。


先日、V6森田剛さん・宮沢りえさん・荒川良々さん出演の舞台「ビニールの城」を観ました。なんとなく感想をメモしておきます。ネタバレあり。あらすじ等は公式サイトにて。




突然ですがアイドルとはなんでしょうか。
一般的な定義は置いておいて、私はこんなふうに考えています。


・若くして世に出ることが叶い、
・大人からおもに歌という名の言葉を与えられ、
・それゆえに一定の大人から軽んじられる人。


この「わたくしのかんがえたあいどる」に当てはめると、森田剛さんと宮沢りえさんはまぎれもなく私の中のアイドルであり、荒川良々さんはその範疇から外れています。
この三人が朝顔、モモ、夕一(ゆういち)として配置されただけで、私にはいびつな三角形が見えて仕方ない。


今回の作品は、森田さんと宮沢さんが共通して持つアイドルという経歴とそれにまつわる醜聞とを、まとめて喰らって飲み込むような舞台に仕上がっていると感じました。




人形(夕顔)を探し続ける腹話術師・朝顔役の森田剛さん。
そのへんの百均で売ってるそっけないグラスのコップみたいだな、という印象。
演出家の注いだものが、何が変わることなく、何を失うこともなく、そのまま表現に出てしまう。ものすごい稀有な才能。
今回個人的に目を見張ったのは、朝顔が水槽の上から「諸君」に語りかける演説シーン。疾風怒濤のような彼の言葉は多くの固有名詞が繰り出されるにも関わらず概念的すぎて、こちらはうまくその意味を理解できない。それなのに、私はなぜか胸を打たれ、会場の雰囲気は静かに高揚し、彼の存在は代え難いものとなった。
つまり彼は、発する言葉の意味が受け手に伝わらなくとも問題ない、「もはや注がれるものはなんでもいい」ことすら身をもって証明してしまった。言語的矛盾は彼の実在の前に無力。おそろしい。



朝顔に思いを寄せるモモ役の宮沢りえさん。
突如として現れた鈴を転がすような声に耳を疑い、その発信源が宮沢りえさんの口であったことに目を疑いました。なに、その、声。とにかくあどけなく美しい。最後のビニールの城のシーンはその声が発せられていないのに全く同じ感想で、まるで赤ん坊のように横たわる宮沢りえさんの身体はやはりあどけなく美しい。



朝顔の演説とモモの籠城、この二つに共通するのは物理的な位置の「高さ」で、やっぱり人は見上げると崇めたくなるんですかね。
反対に地に足が着いていたのは、夕顔になりきろうとする夕一役の荒川良々さん。私荒川さんってめちゃくちゃ上手くて場の空気を支配できる俳優さんだと思ってるので、今回もその才が如何なく発揮されてるのに森田さんが持っていかれていなくて結構びっくりしました。
森田さんって、アイドルじゃないの?舞台役者さんに、太刀打ちできちゃうの?



私のこの疑問は、アイドル=演技が下手、という大人の偏見によるものです。私はV6のファンで、これまでにも森田さんの演技を拝見しているので、その認識が誤っていることをもはや知っているのに、それでも毎回驚いてしまう。ファンだからこそというのもあるかもしれません。歌って踊って、あんなにキラキラしてるのに、その一方でそんなに澱んだ空気を身に纏うの?と。
宮沢りえさんにしても同じです。伊右衛門でしょ?初代リハウスガールでしょ?そんなあられもない格好しちゃうの!?あれ、でもそういえば……



アイドルにはスキャンダルがつきものです。そして彼らはそれを、超えてゆく。




嘔吐を促そうとモモの口腔に入れられた朝顔の指先に、そこにいた800人の観客の視線が釘付けになっているのを感じました。



私のような即物的な人間にはまったくもって理解不能な世界観にもなんてことなく馴染んでそこにあり、理解し難い台詞にも決して振り回されないこの二人。
アイドル、元アイドルのイメージを覆す、れっきとした舞台人なんだと思いました。



しかし、しかしですよ。
なぜか、この二人、歌うときだけは稚拙さが顔をのぞかせるのです。



ああ、そんなんじゃアイドルだということがばれてしまうよ。





って、それが狙いなんだろうなあ。
二人の歌が、本来しっかり組み上げられたであろう土台の骨を五、六本抜いたような不思議なグラつきを生んでいて、そのおかげでこの舞台は不完全な完全体として最高の魅力を放っている。
実際のところ二人とももう少ししっかりと声が伸びると思うので、これも演出であるとわかってはいるのですが、それでもふらふらとした二人のアイドルの歌声に心を掴まれずにはいられませんでした。












ところで、夕顔と朝顔はまあ現代だと本音と建前とか子供と大人とかネットとリアルとか、この文でちらつかせてるアイドルとその中の人とか色々な見方ができると思うんですけど、吐瀉物はなんなんでしょうね。
モモが朝顔の口に指を入れて吐かせてあげた、その逆もあった、その吐瀉物とは。朝顔の声と夕顔の声、二つの声を塞ぐもの。二つの声の出処が同一であると証明するもの。
考えてもこれという正体には思い至りませんでしたが、ただこれをそのまま放置すれば死につながるとすると、複数の声の同一化は実は不自然な末路であるということでしょうか。


私の声と、私の中の私の声と、私の中のあの人の声。
確かに、私もいくつもの声を聞きながらこのブログを書いているかもしれません。

じゃあ朝顔たちの中の声、森田さんたちの中の声って、いったい誰の声なんでしょうね。



そういえば今回の舞台では、朝顔やモモたちと同じ地点には立っていない、まるで無関係のような人が何度か登場して喋っていたような気がします。

朝顔やモモからは離れたどこかから語りかける、
それはまるでなんだか、“蜷川さん”のような人。
えも知れぬ、遠くからきた人。


私たちは複数の声を抱え、それゆえに生じる矛盾に苦しむこともままあります。
でも無理に消化する必要も、忘れる必要もなく。
ただ聞こえるうちはその声を聞きながら、時に耳を傾けながら、彼らの声と共に生きていっていいのだよと、そんなふうに言われているように、少しだけ感じました。






アイドルは大人たちから言葉を注がれた傀儡で、中身が空っぽに見えるがゆえに大きくなっても心は子供だと揶揄されることが多い世の中です。


しかし、彼らは大人たちから注がれた言葉をそのまま垂れ流していたわけではありません。そこに言葉は、“彼ら”の声はとどまった。


言語的矛盾は実在の前に無力。
言葉の定義は時代とともに移り変わり、大人になったアイドルたちはたまにぞっとするような場所から反旗を翻します。



ここはアングラ演劇最高峰。
私がこの目で見たものは、
アイドル風情の成れの果て。




1985年の夏はどのくらいの暑さだったのかな。
2016年の夏は、ホント、“蜷川さん”の台詞のそのまんま。
ああ今日も、なんてじめじめした陽気だろ。