王様の耳はロバの耳

言いたいけど言えないからここにうずめる

ここに記念碑を建てよう。「The Last 5 Years」を観た

オフブロードウェイミュージカル「The Last 5 Years」7月2日マチネ(木村達成さん×村川絵梨さんペア)を観劇しました。




なんかもう「ファー」って思っているうちに終わってしまいました。


だってめっちゃ歌うじゃん……木村さんがあんなにずっと歌ってるところを観るのは初めてだったので……


いつもは観劇中に「あのかっこいいお方はどなたです!!??」「アルファエージェンシー木村達成さんですよ!!ファンクラブに入りましょう!!!」って頭の中で小芝居するのにそんな隙もなかったです。



これはただ私がそんな印象を持ったというだけの話ですが、
舞台上で歌い踊り表現する木村さんには、「ミュージカルをやっている」ことへの確固たる自負を感じたので、
私はそれだけで胸がいっぱいになり、
「ファー」しか言えないファー人間になってしまったのでした。



ここに記念碑を建てよう。
私がミュージカル俳優木村達成の誕生を目撃した気がした記念碑。
そこに「ファー」と刻もう。
私が語彙力を失った証。
※ 記念碑の裏面にはこのページへのリンクを載せるよ!












┏━┓
┃フ┃
┃ァ┃
┃|┃
┻━┻





以下、「ファー」をなんとか日本語に訳した感想です。
ネタバレありです。








● キャシー役の村川絵梨さん

まずはこのお方!!!!
本当に綺麗で、かわいくて、とっても素敵でした。
存在感がツヤツヤしてて、ハリがあって、割れないシャボン玉を見ている気分でした。
いつも魅力的だけど、特にぶすくれるとこがチャーミングでめっちゃかわいい!!

この作品中で1曲だけ、目を合わせて愛を誓い会うシーンがあるんですけれども、初めて目を合わせたときの絵梨さんの衣装が本当に素敵で、奥さんのドレス姿を見て泣いてしまうような、そんな感覚を初めて体感しました。
スマートボーイズさんの記事より)


会見で木村さんがこうおっしゃっていたけど、「わかるわ〜………」しかなかったです。白いねえ衣装がねえ本当によく似合っていらして綺麗で……袖のレースが素敵でねえまさに村川さんのためのお衣装って感じで……私も新郎の横に立ってめっちゃ泣いちゃう新婦のお父さんの役やるわ。本番では涙をこらえて教会で腕を組んで歩いて新郎のもとへ送り届けるよ……
(関係ないけど最近の木村さん、コメントでのエピソードピックアップ力がめちゃくちゃ高くなりましたよね……いちいちかなり刺さる、すごい)



あと村川さんのキャシーは冒頭の打ちひしがれているシーンですら「しかし自分の足でしっかり立てる人」であるさまが感じられて、若い頃の木村ジェイミーが女神とか君だけの奴隷になるよ〜とか浮かれる気持ちがめっちゃわかるんですよね。「かわいい!」というより「綺麗だ!美しい!」っていうテンションの上がり方。崇拝まではいかないけどちょっとジェイミーがキャシーを見上げる感じが入っているというか。この村川さんキャシーあっての木村さんジェイミーだなと感じるところがたくさんありました。


こんな溌剌とした村川さんキャシーだからこそ、木村ジェイミーは「一緒に前を向いて進んでいける戦友のようなパートナー」を夢見たんじゃないのかなあと……
一方でキャシーは、「見つめ合いながら歩いていける恋人のようなパートナー」を夢見ていたように感じて(いやわかんないけど)、そういう理想像のすれ違いが「M8 The Next Ten Minutes」の後半?のふたりの行き違いによくあらわれていたなあと思います……「対等でありたい」という願いは同じなのに、「僕のところに来てほしい」と「私の心のそばにいてほしい」の求める立ち位置の違いが見える気がするというか……なんかあの歌の最後でキャシーがジョンレノンの話とかのとこに戻ってるの悲しすぎるんだよな……


ていうかジェイミーが過去から現在に順行してキャシーがどんどん過去に戻っていくの、ジェイミーずるくない!?ずるいとは…って感じだけどずるくない?最後の若い頃のキャシーめっちゃ切ないじゃん……なんかキャシーの可哀想感が前面に出てる気がしてつらいんだよな……脚本に憐れまれてるっていうかさー!!構造的には対称的に進行してるんだけど、別れを切り出された側が逆行するというのは全然フェアじゃないと思うんですよね……キャシーの感情の方が見世物にされてる感が強い。
ラスト、ジェイミーがかつてのキャシーとの思い出にもグッバイを告げてる意味合いもあると考えると、やっぱこの話はジェイミー主観でキャシーは客体で、そうするとなんか一方的にいい思い出風にしてんじゃないよ、と思ってしまいますね…
でもキャシーが「ジェイミーは励ましながら憐んでた」みたいなこと歌ってたからまさに最初から最後までその通りの構造なんだけどさ……(でも木村ジェイミー自身からはあんまり憐れんでいるという印象は受けなかった)


ただ村川さんのキャシーはその憐れみすら跳ね除けるパワーとハリがあるので、悲壮感は漂わず、きっとまた最後のシーンのような曇りない笑顔を見せてくれる時がやってくるだろうと感じられるので良かったです。


あと、村川さんのキャシーは、ひとり成功しているジェイミーへの嫉妬心や悔しさ、悲しみみたいなものはそこまで強くなくて、どちらかというと、うまくいかずジェイミーの一部に取り込まれ自分が自分でなくなっていくことへの戸惑いみたいなほうが強く出ていたような気がしました。なんかアイデンティティクライシス的な……その痛みを抱えた状態でジェイミーの隣に立つのは難しいということにジェイミーが気付いて手を取ってくれたらな…と思わずにいられませんが、それでも自分の足で自分らしく立とうともがくキャシーに個人的に共感を覚えました。




このアウェー構造の中でキャシーがジェイミーと対等に立つには始まりにも終わりと同じような重み付けが必要で、村川さんのキャシーの芯の強さはまさにその重みとなっていて良かったです……村川さん本当に素敵でした。



● 脚本と演出の話

20年前初演の作品と聞いて、なんかつい最近もそんな話あったな……と思ったらブロードウェイ版『プロデューサーズ』でした。なるほどなるほどそういう時代感ね……(全然知らんけど)
2014年の映画版を見てて思ったんですけど、この脚本、演出や振付によっては「うわぁ…」ってなりそうな場面が結構ある気がして、数年前なら「男ってバカだよね」みたいに笑ってたかもしれないことも今だと「……(ドン引き)」みたいな。男性だけじゃなくて女性の描き方もそうで。


しかし今作はそういう危うさを無頓着に扱った気配がほとんど感じられない作品に仕上がっていたので、小林香さんの演出って信頼できるなあ……と思いました。
男女のすれ違いなんだけど、男って女ってみたいなのじゃなく個人と個人のすれ違いだなあっていうのが強く出ていた気がしますね……なんだろな訳詞かな……ちょっとその印象の出処がどこなのかは掴みきれませんでしたが。


ほとんどの言葉を歌にのせている分、余計に何をどの程度具体的に表現するかはかなり演出による部分が大きいのだと思うんですよね、どんな物を出すか、どこまで服を変えるか、どの言葉を取り上げて振付で伝えるか、それこそどこまでふたりの役者が実際にやりとりするかとかもなのかな?そこの取捨選択が今の時代感に合っていてとてもスマートだったなあと思いました。「M9 A Miracle Would Happen」とか、やりようによってはすごいえげつないことになったと思うので。



● ジェイミー役の木村達成さん

「衣装が全て似合うな……」
と思いました。村川さんもですけど。
舞台に立っていきいきしていたので、見ているこちらもわくわくしました。
以下、一曲ずつ……


● M2 Shiksa Goddess

ファー!!!(日本語訳:若い。前髪を下ろした髪型がかわいい。若い。かわいい。かっこいい。黄色いシャツが似合う。手錠にテヘッみたいなのかわいい。かっこいい。)
ていうか歌声がめっちゃ好きだよ!!!!
影山役で沼に落ちた時まさかこんな歌うようになるなんて思わなかったよねっていう話またしていい????もういいか!!!!!!


● M4 Moving Too Fast

★好きな英語部分ランキング★
第1位 impression
第2位 out of control
※ なかなかの接戦です。今後変動があるかもしれません。


木村さんの「調子に乗る」お芝居ほんと最高だなって思いました。キレキレじゃん。有頂天役者じゃん。バックに上昇気流が見えるじゃん。


そんでこの曲めっちゃ似合うじゃん……この曲めっちゃ似合うことご本人わかってるじゃん……これはもうジャニーズのコンサートだったら自担じゃないのに延々とリピートしちゃうソロのやつですよ……V6でいうところの剛くん健くんのソロだしキスマイでいうところの藤ヶ谷太輔さんのソロですね……「わかってる」んですよ……


木村さんのデビュー10周年記念パーティー(パーティー?)の一曲目はこれにしましょう。二曲目は「世界の王」です。よろしくお願いします。
あとフードあるからにはやっぱり被ったりしますよね最高ですあと足捌きも素敵ですありがとうございます。


● M6 The Schmuel Song

腕を伸ばして時計の針に見立てて動かす振付がとてもかわいいですね……


なんかこの歌、映画版で見たときはとても微笑ましい場面のように思えたんですけど、木村さんジェイミーのはおじいちゃんが何度も断ってるのが強く印象に残って「本当にシュムールはしあわせな気持ちになったんだよね…?」と少し不安になってしまいました。
 
たぶん映画版のジェレミー・ジョーダンのシュムールはちょっと偏屈そうな感じ?で本当は時計の提案に心惹かれてるけど断ってるみたいな印象が強かったのかなと思うんですけど、木村さんのはもう少し気弱そうなおじいちゃんで、本気で「いや大丈夫です、いいです」って断ってる感じがしたのかなあ……
しかもそれが物語と時計をプレゼントされるキャシーにも重なって、「キャシーは本心から喜べたんだよね…?」とちょっとざわざわしてしまいました。微かだけれどあきらかに不穏な空気を漂わせていた。ジェイミーの価値観みたいなものがすごくよくあらわれているシーンだったんだなあと。




● M8 The Next Ten Minutes

物語前半後半はほぼ一人ずつ歌う一人芝居のような感じで、ここで唯一ふたりの目が合うんですけど、私の席が前方下手寄りで、上手側のキャシーを見つめている木村さんの表情があまり見えなくてちょっと残念でした……いやわかる、ここはやっぱりふたりは真正面から向き合わないといけないから、頭しか見えないのは仕方ない……


でもとにかく白い衣装に身を包んだおふたりがとてもお似合いで素敵でした。同じ色で同じ時を過ごすのがここだけって、ふたりのすれ違いをこんな残酷でロマンチックな形であらわすのか……と。
あとはキャシーのところで書いた通りです。表情がもうちょっと見えれば……!!と思うけど、もしかしたら素敵すぎて気を失っていただけかもしれない。
あ、陰でセットを動かしている時もワクワク感とかその時その時の感情が見えて好きでした。



● M9 A Miracle Would Happen

映画で見た時はもっと浮気心大爆発みたいな歌だった気がするけど木村ジェイミーのはなんか必死に一途でいようとする歌みたいになってて「歌のポジションが違う…!」と思いました。ジェイミー頑張っててえらい…!みたいな気持ちになった。


あとこれは記憶違いか理解が追いつかなかったのかもしれないんですけど、映画ってこの歌の最後でキャシー仕事終わったら行くからねみたいなこと言って結局他の女性のとこ行ってませんでしたっけ??気のせい?木村ジェイミーはそういう空気感ではなく本気でキャシーに会いに行こうとしていたような気がしたのですが……


だからこのあとジェイミーがキャシーから編集者との仲を疑われたシーンですごく「(まだ全然浮気してないのに)キャシーが先に疑いをかけてしまった」感が強かったんですよね……映画版は「ジェイミーが先に浮気をしてキャシーに猜疑心が芽生えた」という印象だったのですが。


● M11 If I Didn't Believe in You

似合ってるなあと思ったのはM2、M4だけど、強く訴えかけてきたのはこちらかもしれません。


木村ジェイミー、キャシーに対してすごく強く出るんですよね。きっとキャシーが村川さんだったからこその、抑えても抑えても抑えきれない感情の圧みたいなものがあったなって……ジェイミーにも、木村さんにも、キャシーに話を「(プロポーズの時は10分だったのに)2分でいいから聞かせる」ための表現についてもう選択の余地がなかったのだなと感じるような、怒りや苛立ち、余裕のなさ、若さ、切れかけた何かの最後の一本に縋るような切実さ。低めの歌声にその想いや心の形状がすべて籠められていて。
なんかねえ。ファー………です。語れる言葉が見つからない。


ただ、この曲だったか、いくつかの曲の歌詞にあった気がするけど、ジェイミーが戦って勝つことにすごく執着しているというのが木村ジェイミーの言葉の発し方からよく伝わってきて、そういうところはキャシーをあまり明るい気持ちにはさせないだろうしそのこだわりゆえにキャシーの言うことだってジェイミーの気持ちには届いてないんだろうなあとは思いました。



● M13 Nobody Needs to Know

さっき言った通り、舞台版はまだ浮気してないのにキャシーにしつこく疑われたみたいな流れに見えたので、他も色々あってなんか仕方なかった気もするよね…みたいな気持ちでした(不倫していいというわけでは決してないけど)


「居場所がほしかったけど彼女はそれを矢で打ち抜いた」?みたいなこと言ってて、わからないでもないなあって……でも結局新たな居場所を見つけたような顔にはなっていなくて、シェルターに逃げ込んだような……どうしたらいいかわからないというような表情で。前の曲とは打って変わって抜け殻の中に何かを注いでるみたいな……なんか……一本気な人なんだなあと。ああ、でも村川キャシーもそうかも。ふたりとも一本気だったのかな……なんかどっちが悪いとかじゃないよなと思うしキャシーはこのままジェイミーとよりを戻しても大変そうだなって思います、木村ジェイミーはたぶん折れないから村川キャシーが何かを折らなきゃいけなくなる。でも誰かと一緒に同じ時を歩むって多かれ少なかれそういうとこあるのかな……しらんけど。


● M14 Goodbye Until Tomorrow / I Could Never Rescue You

いい思い出風にしてんじゃないよ(2回目)と思ってしまいそうですが、木村ジェイミーの痛みを抱えた表情からはまだいい思い出風になっているわけではないということがわかるので大丈夫でした。
救うっていう感覚からして多分もう違うよ……と思うけど、なんかジェイミーってキャシーと出会ってからすべてうまく行き始めて、キャシーに運を引き上げられた感覚があるから自分もキャシーをって思っちゃったのかなあとかはちょっと思ったり……それに本気でキャシーが魅力的だ世界に見つかるんだって信じてたんだよね。時に身内の「信じてる」は何よりも重いね……身内以外誰も私のこと良いなんて言ってくれないよみたいなウッ


木村ジェイミーは普通にいい人でひたむきで努力家で悪い人じゃないし、でも別に存外に優しいわけでも器が大きいわけでもなく、殊の外強い人なわけでも、しかし並外れて無神経なわけでもなかった。だから自然にこうなってしまったと感じられて、ジェイミーという人が劇的に仕立てられてはいないからこそ良いなあと思いました。


そして始まりと終わりのワルツ。
私は三拍子大好き芸人なのでジェイミーとキャシーの運命の環が交錯し離れていくのをめちゃくちゃ表している〜〜〜〜!!!!と心の中で机をバンバン叩きました。
この作品の音楽は、全体的に少しいじわるだなって。そこがいいんだろうな……。




● ファー

全編を通して口もとに感情が強くあらわれているように感じることが多くて、ジェイミーもつらいよね……と思うなどしました。
5年という歳月の経過を感じさせる木村さんのお芝居が新鮮で、話が進むにつれ徐々に顔つきが変わりその存在感に深みや奥行きが出ていることに感動しました。


演出の小林香さんとのラジオで「ジェイミーは俺なんです」と木村さんがおっしゃってましたけど、そう思えるような役にリアルに同年齢ドンピシャのタイミングで出会えたのがなんだかすごいなあと(木村さんが27歳、ジェイミーが大体23〜28歳)。ハイステの時の「俺が影山なんで」とは似てるようでまたちょっと違いますよね。気質というよりジェイミーの経験そのものを自分に重ね合わせている……気がする。
わかんないけど、本当に今だからこそ木村さんの中から出てきたお芝居なのだろうと思いました。ジェイミー役の一人にアミューズ所属ではない木村達成さんを見出してくださったアミューズさん本当にありがとうございます……



そして冒頭の話、本当にただ個人的に感じただけですが、木村さんが「ミュージカルをやっていく」、そのスタートラインに立っているのを見ている気がしました。
うまく言えないのですがお芝居としてのミュージカルへの挑戦から、ミュージカルそのものをやっていくみたいな……チャレンジャーからプレイヤーになる覚悟を見たみたいな……もしかしたらすごく失礼なことを言ってるかもしれません、すみません。
言葉にするのが難しいけど、少なくとも自分の中では、新しい木村さんをたくさん見せていただいた気がして、そこには驚きが溢れていて、「すっご!!!!!!!!!!!」って感じでした。
すっご!!!!!!!!!!!!




そんなわけでここに記念碑を。
歌い踊りお芝居をする木村さん、とても素敵でした。




以上