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ミュージカル『ファントム』感想メモ(11/16)

ミュージカル『ファントム』(11/16マチネ)を観ました。
めっちゃ泣いてしまった……


以下、感想です。
ネタバレありです。












恥ずかしながら、今まで『オペラ座の怪人』関連の作品にほとんど触れたことがなく、むかし映画(たぶん2004年版)を見たくらいだったので、『ファントム』に関しても予備知識皆無でした。
追いきれてない部分があるのでとんちんかんなことを言ってると思います。すみません。


● フィリップ・シャンドン伯爵(木村達成さん)

かわいいよ〜〜〜〜〜〜〜


見ていてたくさん伸び代があるなあと思ったんですけど、パンフレットを読んでいたらご自身が一番自覚している様が伺えたし、課題の見極めも的確に思えるし、きっとこの役者さんもっともっと上手くなるのだなあと思いました。
インタビューや対談で語られている今回の役作りのヒントとなった疑問や葛藤も面白くて、何度も「確かに!!」と思ったし、そこからたどり着いたのであろう今日のシャンドン伯爵像を振り返って「なるほどな〜」と深い納得感がありました。
まじでむちゃくちゃ応援したい。
推したい!!!(推してる)



それを踏まえて、木村さんのシャンドン伯爵ここが素敵だったよベスト5を選びました。


第5位
胸を撃ち抜かれたジェスチャーをしていた(気がした)時


見間違いかもしれないんですけど、ビストロでクリスティーヌが歌っている時、どこかで右手で左胸を抑えたような気がしたんですよね……
「あっハートを撃ち抜かれてる……! シャンドン伯爵そんなベタなジェスチャーするようには見えないのに……このお方、今、あきらかに浮かれていらっしゃる……!!」と、
つまり、「かわいい」と思いました。



第4位
ビストロの後クリスティーヌと歌って踊っていた時


「この人めっちゃクリスティーヌのこと好きやん」と思いました。
踊りめっちゃかわいいなあ。好きだなあ。
大好きな女性と2人で歌い踊る、というのはラカージュの時と似ているけど、あの頃より歌と踊りがブレないというか、芯がしっかりしている感じがしました。2幕の立ち回りも動けてて綺麗だった。


あと歌に入ってくる台詞っぽいところすごい好きだったんですよね、なんでだろう、すごいときめきました。境目があんまなくて良かった。
「クリスティーヌ」の名前の呼び方とか愛しくて仕方がないっていうのがむちゃくちゃ伝わってくる。目の前のクリスティーヌにうっとりしてるから甘い声になるんだけど、それ聞いてクリスティーヌもうっとりしちゃうみたいなハッピー無限ループ。
そのあとエリックが同じように歌の中でクリスティーヌの名前を呼ぶところで、ああこんなにも2人は遠いのだと感じました。多分同じ「愛」という感情に突き動かされて、同じ名前を呼んでいるのに、こんなにも違うのだと。


そうそう違うといえば、街灯……
このシーンの街灯は、幸せの絶頂にいる2人を照らし出し、際立たせる光。
じゃあエリックの「楽園」にある街灯は……? という。
カラフルな街灯と、優しいグリーンの街灯、後者は一見くすんで見えるけど、ピクニックのシーンを思い出すと、そういう単純な対比ではないのだなあと。
本作の色遣い、個人的には好きでした。ラデュレ資生堂パーラー! って思ったけどそういうことではなかった。パンフに色々書いてあって嬉しいです。



第3位
1幕最後でクリスティーヌの方へ手を伸ばしていた時


「意識が朦朧としていてもクリスティーヌのことを守ろうとするんだ……本気なんだ……!」と思いました。
えっと私も恋に落ちました(単純)。



第2位
おでこにキス


めっっっっちゃ可愛くないですか!?!?!?!!!?
あの短さが最高。
あんな可愛いおでこにキス見たことない。
木村さんと木下さんは天才。



第1位
笑顔


シャンドン伯爵の笑顔すごい好きだなって思いました。
『伯爵とクリスティーヌ』のどこかの歌詞で口の形が「いー」ってなったと思うんですけど、そこで満面の笑みになるのが最高で。


屈託無く笑えるってものすごい才能だと思うんですよね。
木村さんのシャンドン伯爵は、恵まれていて、当たり前に与えられてきた人で、与えることが当たり前にできる人で、好きなものを好きと言える、翳りのない人。
個人的な印象としてはこの「翳りのなさ」が闇(エリック)に対する光として明確に対比になっていたと感じました。
と同時に、そんな彼が恋に落ちた時の「無垢さ」がまた、エリックの幼児性との近似に繋がっていたようにも思えました。
エリックに感情移入していてもシャンドン伯爵のことを憎めないのは、クリスティーヌのことで頭がいっぱいいっぱいな、彼のピュアさ、善良さのせい。





あとは全編を通して、足が長くて腰が細くて顔が小さいなあ……と。


あとカーテンコールの時の髪型と衣装が好きすぎてひっくり返りました。
びしっと整ってる髪型もいいけど、若干スキのある髪型っていうんですかね……漫画とかの前髪上げキャラがたまに下ろした時みたいな。
それと青の衣装があいまってほんと貴公子でしたね。お忍びの貴公子、華やか過ぎて全然忍べてないみたいな。
みんなで手を繋いでお辞儀をする時、片足だけ一歩下げたの「すごく貴公子で良い」と思いました。解釈の完全一致でした。
推したい!!!(推してる)



そういえば聞き間違いかもしれないですけど、劇中でシャンドン伯爵が「シャンパンの王様」と紹介されてて、
「コート上の王様がシャンパンの王様に!!」と感慨深かったです。
木村さん、わりといつも身分が高い。





● クリスティーヌ・ダーエ(木下晴香さん)

いやいやいやすごすぎる……リアル天使じゃん……赤坂オペラ座に天使いた……
キャリエールがベラドーヴァについて「彼女が歌えるなんて知らなかった」みたいなこと言ってたけど「それな!!!」って思いました。木下さんが踊れるなんて知らなかった……!!
事務所のプロフィール見たらほんとに特技:ダンスって書いてあって、あとこちらの対談読んだらバレエも少しやったけどジャズダンス歴が一番長くてヒップホップも好きと……え……見たい……木下さんのヒップホップ見たい……


木下さんのクリスティーヌ、結局フィリップとエリックどっちが好きなんだろうと疑問に感じなかったことにちょっと感動しました。
個人的な印象ですけど、彼女はフィリップに恋をして、エリックには家族のような愛情を抱いたというように見えました。微妙な接し方や距離感の違い。母性とはまた違うんですけど、傷ついたお父さんに寄り添いたい、という気持ちに似ているというか……うまくいえないな。
そして恋は家族の愛(血縁なくても)には敵わないんですよね、ウチとソト、それを感じさせるシャンドン伯爵の引き下がり方だったなと。
フィリップとエリックへの感情が近しいものに見えるとかなりモヤモヤしそうなので、そうなってなくてすごく良かったです。


いや本当に言葉が見つからないんですけど、
最初の方の少女っぽさもベラドーヴァの母性も、そして最後の救いを与える姿も、遷移の段階それぞれすべてにこんなに説得力があるなんて、と……
まだ20歳……すごい……私20歳の時なにやってたかなって思いました。寝てばっかいた。

● エリック(城田優さん)

先に演出の話なんですけど、城田さんって本当に演劇が好きなんだなあって思いましたね……
「役者をやってるからこその演出」だけじゃなくて「観客をやってるからこその演出」もあったように感じるんですよね。オタク目線というか。「みんな(観客)もこういうの好きでしょ!?」っていう。そして「あー、それ好きです」と思う私。
個人的に好きだったのは舞台上にオーケストラがいることが明かされる演出とタイミングですね!! あれ良かったー!


そして、知ってるけど、歌とお芝居が上手い。
2幕、我慢してたけど泣いてしまった。
すごいなあ。木村さんすごいカンパニーにいるねえ。
城田さんエリックの人物像については考えたいことがたくさんある。


● ゲラール・キャリエール(岡田浩暉さん)

岡田さんすごすぎ。
回想シーン、やたら他人事で語るからすごい突っ込みたくなるじゃないですか。台詞覚えてないけど、
キ「しかし神は聞いてくれなかったのです」
私「いやあんただよね!?」
キ「ひどいところに連れていかれたのです」
私「いやあんただよね!?!?」
みたいな。
やることなすことひどいし。
それなのに最後は、彼の父親としての愛を疑う余地がまっっったくないんですよね。
岡田さんのお芝居、城田さんの感性の波長に完全に合わせていて、本当にすごい。


● みなさま

次見た時の感想で詳しく書きたいんですけど、舞台上に立っていた全員が全員、ご自身の役どころをまっとうしている感じがスカッとしました。
埋もれない。出過ぎない。
「この役いる?」みたいなのがなくて、絶対にみんな居て欲しい。もっと見たい。どなたでスピンオフを作っても面白くなりそう。
演出と役者さんの特長がかっちりハマっててすごくいいなーと思いました。





以上。また見ます!楽しみ!!!







(11/17 追記)

ほかのキャストさんについて。


● ジャン・クロード(佐藤玲さん)
大好きでした。(告白)
パンフを読んでもともとは男性が演じていた役と知ってなるほど、と。ジャン・クロードが自分のことを話す台詞なんかないのに、佐藤さんがインタビューでおっしゃっていたことを劇中でもかなり感じていたので、細かな表現に長けた方なのだなあと思いました。


今回この人物を佐藤さんが演じたことによって「クリスティーヌに同性の味方がいる」という事実が端的に提示されてたのって、物語を見る上で実は結構ものすごく大きかったんじゃないかなあと。
序盤でジャン・クロードのようなしっかり者の女性がつい助けてあげてしまいたくなるようなクリスティーヌ、というインプットがあったからこそ、私はクリスティーヌを心置きなく可愛い可愛いと思えていたんじゃないかと思いました。
同性に僻まれる彼女と異性にサポートされる彼女しか知らなかったら、もっと印象が違ったのかもしれない。わからないけど。


そしてジャン・クロードさんのシャンドン伯爵へのきっぱりした接し方が最高なんですよね、ここでまた好感度が上がるし、自動的にクリスティーヌへの好感度も上がるという。
個人的な趣味ですけどシャンドン伯爵とジャン・クロードのバディものが見たい。絶対に面白くなる。2人の並びのビジュアルが好き。
というか木村シャンドン伯爵、木下さんクリスティーヌとの並びも最高に可愛らしくて好きだし、なんなら隣に女性がいる時の木村さん、いつもとても素敵なんですよね……どなたと並んでもしっくりお似合いで……あれは……あれは一体なんの能力なのだろう……



● ルドゥ警部(神尾佑さん)
立ち姿が綺麗。出てくるとピシッとして気持ちがいい。
この作品の人物はわりとみんなふわふわしてるので、ルドゥ警部によって空気が引き締められていたなという感じがします。
場内アナウンスが面白かったし、あれがあることで劇中の彼が真面目な顔して言うことがちゃんと冗談なんだってわかるのが安心感ありました。
彼とキャリエールが並んでいると、2人のバディものが見たくなりますね……(またか)



● カルロッタ(エリアンナさん)、アラン・ショレ(エハラマサヒロさん)
「出過ぎない」の匙加減が一番難しかっだのではないかと思うこのお二人、何が好きって夫婦の仲が良いことなんですよねー!!
もしカルロッタがアランさんのことも利用してのし上がったとかだったら絶対見てられなかった。

今回のファントムの演出のいいなと思ったところはそういうところで、「登場人物たちによる必要とは思えない悪業」みたいなのがすごく少なかったなあと……
もちろん毒を混ぜたり、賄賂渡したり、ダメダメのダメなんだけど、その本人の信念のために突き進む以外の「なんでそんなことするの???」がなかったことが救いだったんです。


アランはカルロッタが大好きだし、カルロッタもアランに好かれていることが嬉しい、そこに一点の曇りもなかったから余計なストレスなく見られたと思います。そしてカルロッタの最期はとても悲しい。アラン、これからどうするの……


エリアンナさんもエハラさんも、歌と笑いというご自身の得意分野で「全力で」かつ「出過ぎない」ことを徹底されていて、すごいよーーーープロだよーーーーー!! と思いました。目指すところが「歌や笑いで自身の力を見せつける」ことではなくて、「お芝居の世界を作り上げる」ことなんですよね。見ていて「ありがたい……(?)」という気持ちになりました。



● 少年エリック(大前優樹さん)
短い出演時間で強烈なインパクト。すごかった。歌が上手いというか、それこそ、芝居歌ってこれだよねっていう……歌とお芝居の境目がない。
「画竜点睛を欠く」って言いますけど、まさに彼の歌がこのお芝居の竜の睛(ひとみ)で、それを欠くことなくしっかり力強く描かれていることに感動しました。



● アンサンブル
大前さんのエリックが睛ならアンサンブルのみなさんは竜。竜あってこその睛です。「劇場中をオペラ座に」、その発想を見事に実現させ世界観を作ってくれていて、心地良かったです。「一歩足を踏み入れると、そこは……!」みたいなの、何歳になっても楽しい。




以上、ざっとですがキャストさんについてした。


今回、Wキャストの廣瀬さんのシャンドン伯爵は見られないのですが、もう絶対素敵ですよね、わかる、見たら絶対惚れる。
ゲネプロ動画ループ止まらなかったです。
だってかっこいいもん……かっこいいが踊ってるもん……めっちゃ大人だもん……


観劇前、城田さん、加藤さん、廣瀬さんと来てなぜ木村さんなのか、その答えが欲しいと思って劇場に向かいましたが、その役作りは期待以上でした。
これからもっともっと上に行く木村さんが見たいです!!