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ハイステ “飛翔” 感想メモ

ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー !! “飛翔”』を観ました。


良かったー!!!



今回烏野メンバーが代替わりしたということで、一体どうなるのかな? と思っていましたが、見終わったあとのこの高揚感。
個人的にはハイステをまだ見たことのない人にもおすすめしたいです……!!


以下、個人的に感動した点です。
ネタバレなしになっていると思います。


● 面白い

掛け値無しに面白いと思いました。
前作が春高予選の白鳥沢戦で終わっているので、今作はそこから……の物語ですが、シンプルに脚本が良かったです。
多少違和感を覚えるところもありましたが、原作の面白さをしっかり残してくれたという印象。


連載ものの一部を切り取って2時間にまとめるとなると、始まりや着地の仕方などどうしても流れを変えなくてはいけない部分が生じてしまいますが、今作はそこを逆手にとって物語の巧みなパッチワークを完成させています。


よくできたダイジェスト、というとあまり聞こえが良くないかもしれませんが、精緻に切り貼りされた物語、映像、音楽、照明、舞台装置、役者たちによる怒涛のパフォーマンスを見せられ、圧倒され、最後にふっと息をついた時、「ああ、これはこういう物語だったのか」という、俯瞰の瞬間が訪れる。そんな、「夢中」と「余韻」と「発見」をくれる舞台でした。


● “キャラクター”から人間へ

私はこれまで、2.5次元舞台が提供してくれる唯一無二の価値は「2次元であるはずの“キャラクター”が目の前に存在している」という体験をさせてくれることだと思っていました。
ハイステでも数え切れないくらい「国見ちゃんがいる」「あまりにも大将優」「圧倒的影山」などの経験をしてきたものです。「フィギュアが動き出したみたい」とか、「扉絵から抜け出てきたみたい」とか、何度同じ話をしたことか。


しかし、今作は少し違いました。
言うなれば、
「彼らがリアルにいたらこんな感じかも……!」
“キャラクター”というより、なんだか佇まいがリアルな人間っぽいのです。
もちろん漫画的デフォルメや台詞回し、大仰さはちゃんとあるのですが、それらをもってしてなお残る、舞台上の彼らのまとう「現実の人」感。


人間(役者)をキャラクタライズする方向じゃなくて、キャラクターをヒューマナイズしましたって感じで「こんな顕現のさせ方もあるんだー!」と驚きでした。どちらがいいとかじゃなくて、後者を見たのが初めてだったので個人的に新鮮でした。
またこれが変人コンビの醍醐さん赤名さんが2人とも19歳だから、そのアプローチがぴったりなんですよね。日向と影山が高校生であることに恐ろしく説得力があった。高校生キャラじゃなくて、高校生。2人ともすごい良かったです。
(醍醐さん、主役をやる人、真ん中に立つ人という感じがしたし、赤名さんは天才という役がぴったりだった、すごいコンビだ)


ウィッグの質感のせいもあるのかな? キャラクターを崩壊させない絶妙なリアル加減が全員(本当に全員)素晴らしくて、その中でも個人的に好きだったのは佐久早さんです。「あ、佐久早さんってこんな人だったんだ」ってポンと腑に落ちました。


あとやっぱりどうしても書かずにはいられないのは、
「潔子さんってリアルにいたらこんな感じかー!!!!」
っていう感動がほんとすごかった。
個人的に木村達成さんの影山を観た時と同じくらいの「!?……!!!!!!!」でした。(言葉にできない)
見た目も声もなんだけど、モーションが美しい。潔子さんを再発見した。ほんとに。
ライブビューイングも行こうって思いました。また観たいから。


● チームとしてのまとまりのよさ

これもどっちがいいとかじゃないんですけど、前作まではわりと役者さんたちの個性やスキルがあっちこっちで突出していたように思うんです。だから情報量が多かったし、目が足りなかったし、そこが良かった。
でも今回は、新生烏野含め全体的に均質化されているように感じました。しかもすごくハイレベルなとこに揃っている。チームとしてのまとまりが良く、バランスも良く、落ち着いて見られる。
でんじろう先生の空気砲があちこちからくるか、一つどーんとくるかの違いみたいな……(伝われ!!!!
チームとしての(印象の)まとまりが出て、それと振付との相乗効果で「みんなでやる」ことの青春感みたいなのが上がってて。文化祭とかを思い出すような空気がありました。


● そこに残ったもの

新生烏野、というだけあって、本当に全てが一新されています。
でもその中に、残されていたものがいくつかありました。
たとえばダンスのモチーフ。何度も繰り返されるそれを見るたび、過去の2人を思い出しました。
たとえば和田俊輔さんの音楽。託され、繋ごうとする彼らを抱きしめるような、祝福するようなストリングスは、なんだか、子に対する親の愛みたいでした。
泣いちゃう。
あと、烏野じゃないんだけど金田一が喋るとなんか泣けた。金田一〜〜〜〜!!


● これまでのハイステを見ていない人でも見やすい

のではないかと勝手に思いました。
烏野キャストが代替わりし、演出、音楽等々いろいろ新しくなったことで、これまでのハイステの文脈から解き放たれているので、過去作品を見なくてもこの作品から普通に見られます。


個人的には、普段あまり演劇を見ない人が「ちょっとそのノリはわからない、ついてけない」みたいに思うところがだいぶ少ないんじゃないかなと思いました。


「舞台を観に行くほどじゃないけどちょっと気になる」方にはぜひこの機会にライブビューイングをおすすめしたいです……12月15日(日)18時から全国の映画館で今作の生中継を見られますので……ぜひ……鷲匠鍛治先生のかわいさを見てほしい……


● ポテンシャルがすごい

2時間すごい楽しくて、彼らのポテンシャルの高さをひしひしと感じました。
3年生の安定感とかむちゃくちゃ好き。まんなまだまだ見せてない部分がたくさんありそうなので、すぐにでも次回作をやってほしいです。
また楽しみが一つ増えたな〜。



















(11/4追記)
書こうかどうか迷ったけど、やっぱり備忘として明記しておきます。
今回のハイステを見ていて浮かんだ言葉は、
「スター不在」
そして
「紛れる」。



「● チームとしてのまとまりのよさ」に関わることですが、
新生烏野はみんな上手いしちゃんとしてるけど、圧倒的すぎる存在感、スキル、華、そういったものを感じさせる人がいないと思いました。
否、「いないのかな?」と思って見ていましたが、最後まで見て、「ああ、そうじゃないのかも」と思いました。
どうやらここにスターはいる。
この人もあの人も、多分その人も。


紛れている。
この人たちの、飛び出す瞬間が見たい。
だから、これからも見続けたいと思ったのでした。