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朗読劇『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』感想メモ

先日、恋を読む『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』木村達成さん・清水くるみさん出演回を観劇しました。


以下、話の展開や演出についてネタバレがありますのでご注意ください。








今回の感想。箇条書きにすると、


・泣いた
・しんどい
・声がいい
・好青年
・清水くるみさんがすごい


という感じです。




もーーめっちゃ泣いてしまったーーー!
始まる前は「なんか現実離れしてそうな話だな…なじめるかな…」と思ってたんですけど、
実際観たらその設定の説明にはあまり時間を割いていなかったので、逆に「なるほどそういうものか」と思わせてくれてよかったです。



二人の間に横たわっていたのは「時間の進行が逆」という特殊な事情なんですけど、
その結果として二人に起こったこと、二人がやったこと自体はそこまで現実離れしていなくて、自分の中にも思い当たる節があったので後半ずぶずぶと感情移入してしまいました。
自分を愛してくれた人が自分のことを「知らない人」と認識する日が来るとか、
相手の認知に合わせて会話をするとか、
目の前のこの人は自分の知っているあの人とは違うと感じてしまうとか、
逆にこの人はあの人なんだとふと気づいた時の罪悪感とか、
もうあの人には会えないんだと思い知らされるとか、そういうの。
かつての記憶があるからこそ悲しい。
もう一度観たらきっと最初からずっと悲しい、私も二人が過ごした時間を知ってしまったので。




木村さん演じる高寿くん、とても好青年で、
この間出演していた坂上みきさんのラジオでの「褒められても謙遜しないスタイル」みたいな雰囲気は微塵も感じられなくて、役者さんってすごいなーと思いました。
ラカージュの時に散々思った「足長っ!顔小さっ!まぶしっ!!」っていうキラキラぼうや感もあんまりなくて、
普通の、「あちゃー」がちょっと顔に出やすい誠実な若者という印象。
「自分に自信がない役もできるんだ…」と、とても新鮮に感じました。
そういう役もまた見てみたい!!



そしてやっぱり声が好きですね……
「一目惚れをした」。
この一言だけで現実から舞台上の世界に引き込まれてしまって、そっからずっと「きむらたつなり声がいい〜〜〜〜好き〜〜〜〜」って思ってました。



で、木村さんこういうのほんと外さない……すごい……信頼性高い……と思ったのが後半の畳み掛けるようなところなんですけど、
何が感動したかってそれをさらに上に引き上げるような清水くるみさんのお芝居!!!!
清水さんの演技が木村さんの手を引いてどんどん駆け上っていくような感じもしたし、呼応する木村さんの打ち返しが清水さんのブーストになっているようにも見えた。
物語の初めから終わりまでを貫く愛美ちゃんの感情の濃淡が見事で、しかもそれを最後に大きなうねりとして舞台上に展開させていくんですよね。
叶うことのない言葉を何度も叫んで、ピンときてない相手に別れを、ってもーーー!!!!せつない!!!!


清水さんの愛美ちゃん、舞台らしい大きな演技なのに大げさな感じは全くなくて、自然体、等身大、普通の二十歳の女の子に見えるのがすんごいなーと思いました。
実在感が強い。
物語的にもお芝居的にも、愛美ちゃんの方が一枚上手で少し前を走っていて、
それを追いかけるような高寿くんがもどかしくも初々しくて良かった。
「もー愛美ちゃんも15歳の高寿くんに全部言っちゃいなよ…!!」って何度思ったことか。
5年後にも相手に事情を話せる高寿と、話せない愛美とでは今回の別れのつらさが段違いすぎる……思い出を相手と共有できない絶望……


ていうか二人の並びめっちゃほんわかでしょ……かわいい……
(◜◡◝)
↑見ててこんな顔になってしまう……顔文字正しく表示されるかわからないけど……


そんな二人を包み込むようなスタッフワークもとっても素敵でした。見守るような距離感。






あと面白いなあと思ったのが、すみません、私はまだ原作を読んでいないのでどの程度原作に忠実に作られていたのかわからないのですが、この物語、本当に朗読劇にぴったりですよね……
舞台上で二人が持っている台本って、もはや愛美のメモだね…………っていう。
高寿が30日目にこと細かに愛美に話した、これから起こることが書かれているメモ。


高寿に教えてもらった通りに振る舞う愛美と、台本を手に持って書かれている通りに演じる役者さんと、で
この物語は二重の意味で約束に縛られ、なぞられているんだなあと思うと、
最後に二人が台本を打ち捨てるシーンもより意味合いが強くなるなあと感じたりました。
愛美ちゃんはメモの予定調和から解放されてなお、高寿くんに「また明日」と言うんですね……愛美ちゃん………



あと高寿がたこ焼きを食べる愛美を見て「やっばり愛美は愛美なんだ」って悟るシーンがあったような気がするんですけど、
これってほんと、今回バラエティに富んだキャストさんが一つの役を交代で演じることで、実践的に証明される感じありますよね……
清水さんの愛美ちゃんは清水さんの愛美ちゃんで、たとえば山崎紘菜さんの愛美ちゃんはきっとまた全然違う愛美ちゃんで。
同じ台本で同じ台詞で同じことをやっても、人によってまったく違うっていうのが多分ものすごい実感できるっていう。
そして逆に同じ台本で同じ役者さんでも、一公演目と二公演目とでは異なる感情が生まれていたりもするだろうし、
そういうの、愛美ちゃんもそうだったのかなあみたいな。
お芝居における可能性、余地、自由の中に愛美ちゃんの幸せがあったであろうことが想像できてしまう。
二人が紡いだ物語と朗読劇という形式の相似性に驚かされました。
というかもう、輪になってる運命のn+1周目が鈴木さん山崎さんでn+2周目が梶さん高月さんでn+3周目が木村さんと清水さん(以下略)なのでは……!!!?!
他のペアも見たかったなあ。






余談ですけど、急にひらパーの話が出てきたのでひらパー兄さんファンの私は妙にドキドキしました。
ひらパー兄さんことV6の岡田准一さんも枚方出身なんです、今年もひらパーをどうぞよろしくお願いします。