王様の耳はロバの耳

言いたいけど言えないからここにうずめる

彼らはなぜ慢心しないのか──ミュージカル「キンキーブーツ」を観た

デカい。三浦春馬がとにかくデカい。
なんだ、このオーラは……



先日、小池徹平さん・三浦春馬さん出演のブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」を観ました。とにかく楽しかった!2時間半があっという間でした。せっかくなので感想をメモしておきます。内容に関するネタバレは避けてます。あらすじ等は公式サイトにて。






まずは何と言ってもドラァグクイーンのローラを演じた三浦春馬さん。



三浦さんが歌もダンスも出来る方だというのは知っていたけれど、初めて生で見てその迫力にびっくり。



とにかくデカい。
背もデカい。ガタイもデカい。歌声もデカい。ダンスもデカい。
そして何よりその存在感が最高にデカい。



男の中の男。女の中の女。人の中の人。




人の中の人って何、と思われるかもしれないけど。
いまだかつてこんなにカッコいい三浦春馬を見たことがあっただろうか。
歌って踊るローラだけで何時間でも見てられそう。
これ映像畑の人めちゃくちゃ悔しいんじゃないか。




ただこれは彼がその映像畑で成功した、一般知名度の高いテレビスターだからこその驚きであって、もし三浦さんが元からミュージカルスターであったなら、ここまでの感動は得られなかったと思う。



だからこそすごい。誰にでもできることじゃない。



舞台でも通用する技術を身につけていた人物が、お茶の間のみんなが知ってる人気者「三浦春馬」の看板を背負って初めて提供できる意外性と価値。
その名前だって一日や二日で築き上げたもんじゃない。



彼だからこそ為し得た、最高に興奮する“番狂わせ”。




その努力たるやいかばかりか。




いやーでも、ローラという役を演じている三浦春馬さんは「地道な稽古を重ねて数々のハードルを乗り越え……」ってよりは、あらかじめ持ち合わせてた武器や装備をガッチガチに磨き上げて俊敏かつ正確かつダイナミックにぶんぶん振り回して500の敵を仕留めるみたいな超楽しそうな挑戦をしてる感じだったな。



「キャラが立ってる」とかそういうレベルじゃなく、一種のアイコンの域に達していて、これだけ自分の強みを生かして全力で対峙できる役に出会えるって幸せなことだなと思った。



映像での成功はおろか、うまくいかなかったといわれるいくつかの仕事ですら凄みを増すための布石だったのではないかと思わせるほど、彼のローラとしての佇まいは全てを跳ね除けてあまりある。



歌やダンスはもっと進化していきそうだし、それ以外もまだまだ解釈によって変わっていきそうなので、ほんと三浦さんのライフワークにしてほしいなー。
何度でも見たくなる演技でした。






次に、チャーリーを演じた小池徹平さん。



これは三浦さんにも思うことなんですが。



彼らは何をモチベーションに役者をやってるんでしょうか。
顔がよくて、歌も上手くて、視聴者に絶大な人気があって。
特に小池徹平さんは、ジャニーズを凌いで「小柄でかっこいい」の頂点を極めた数少ない人だと本気で思う。
それでなぜ、慢心しないんだろう。
少しくらい驕って、調子に乗って、
「演技なんてちょちょっとやっとけばキャーキャー言われるんだぜ」
とかってチャラチャラしてくれたって全然おかしくないのに。
なぜ、ひたすら上を目指すことができるんでしょう。




小池徹平さんは歌声も演技もひたむきでのびやかで、ローラの強烈なオーラに惑うことなく主人公に徹していてとてもよかった。
これはとても勇気と自信と、技術を要することだと思う。
下手をしたらローラに感化されて、引きずられて、役割がぶれて台無しになる。
ミュージカル俳優としての矜持が垣間見れて、すごく素敵だと思いました。
嫌なことも損することもあるだろうに、“分を弁えている実力の伴ったイケメン”でいることができるって何それどういうことなの。


ただ、たださぁ、この言い方は語弊があるかもしれないけど。
小池徹平さんの歌声にはまだ少しだけアイドル発声っぽいところが残っていて、それが無茶苦茶に色っぽくて切なくて大好きなんです。ミュージカル俳優としてはもしかしたらあまり良くないのかもしれないけど、言ってみればこの「エモさ」、間違いなく彼の大きな強みなんだよなぁ。




その他いろいろ。
ソニンさん、もっと抑えてもご本人のキュートさが出てくるんじゃないかとも思ったけど、元々の役があんな感じなのかな。求められていることを期待以上に演じられていて、やっぱり巧い方なんだなあと再認識。
玉置成実さん、玉置さんと小池徹平さんといえば映画「ラブ★コン」ですよね…!!!!!のぶちゃん!あれから10年後の今、ふたりがミュージカルで丁々発止とやってるのなんていうか目頭が熱くなる。憎まれ役な分、最後に歌うところも綺麗事じゃない迫力があってかっこよかった。
エンジェルス、見応え聞き応え満点!!
ミュージカルって知らない曲だと聞き慣れる前に終わっちゃったりするのですが、シンディ・ローパーの曲は素養のない私の耳にもすっと馴染んでしまってさすが。だから気分も乗るし盛り上がれるんだろうな。




思い出してたらもう一回見たくなったなー。



まるで異形の者かのように登場したローラ。
大仰な演出がその先々の展開にまで効いていて、その物語のど真ん中に立ち続けていた三浦春馬さんの俳優としての強度に病みつきになる感じが気持ちいいんだよなぁ。



ローラの歌・ダンス・存在感どれかひとつでも欠けたらこの舞台は成立しない、そんなポジションにテレビスターの“若手イケメン俳優”を持ってきたのは大きな賭けだったと思うけれど、勝算はどのくらいだったんだろうか。




結果は歴然、
最後にローラが登場した時の



「よっ、待ってました!!」



とでも言わんばかりのあの空気。
観客は完全に彼を待っていて、
あれだけで三浦春馬さんの勝ちだった。




これだけの賞賛を浴びて、彼らはなぜ慢心しないでいられるんだろう。
これが映像ではなく舞台である、というところにヒントがあるんだろうか?
今回もきっと公演を重ねるにつれてさらに良くなっていくんだろうな。