王様の耳はロバの耳

言いたいけど言えないからここにうずめる

【配信開始】演劇「ハイキュー‼︎」を家でみよう

はじめに

2016年5月8日に行われた、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー‼︎」“頂の景色” (通称ハイステ)の大千秋楽ライブビューイングを観てきました。

 

今のお前は

ただの「ちょっとジャンプ力があって素早いだけの下手くそ」だ

大黒柱のエースになんかなれねえ

でも

俺が居ればお前は最強だ!

ーー「ハイキュー‼︎」3巻より

 

少年ジャンプの三大原則といわれる「努力・友情・勝利」すべてが内包されたこの台詞。大好きなんです。これをまさかの生身の人間で再現されて、不満に思わない日が来るなんて思わなかったよね。

 

個人的な感想を一言で表すなら「幾重にもハイパープロジェクションしたわぁ〜」。

舞台に映像が投影されるように、役者にキャラクターが、アクションが、物語が、他のキャラクターからの思いが投影されて、さらにそこに役者たちのリアルが投影されて、クロスオーバーしていくこの感じ。とても2.5次元的な体験だし、アイドルのコンサートにもよく似ていると思いました。

 

公演映像の配信について

5/20から公演映像が配信されるそうなので、「興味はあるけどわざわざ足を運ぶ気はない」もしくは「観に行きたいけど、あの作品の実写映画化みたいなことになってたらと思うとこわい」という方にお伝えしたいことをこのエントリーにメモしておきます。配信サイトへは公式サイトから。ストリーミングは7日間で1,250円です。

ちなみに配信動画、早速見ましたがカーテンコールまでカットされずに収録されていました…!!出演者全員の挨拶も、影山役の木村達成さんが何か持ってきちゃって叱られてるところも、日向役の須賀健太さんと木村さんがノープラン丸出しで並んで漫才コンビみたくなってるところも全部見られますよ…!!ライビュで見にくかったシーンのカメラワーク等も修正されていました。

全部で2時間30分くらいあります。見てて30分くらいでスガさんのアホ毛が気になり出します。何かのコードとか巻きつけたくなる。かわいい。

 

ローラーで沼に突っ込む可能性がある

私はどちらかというと3次元メインなので、ほんとちょっと覗くだけのつもりだったんですが。結果としてはもうまんまとはまってしまいました。偶然4月に自分の中でハイキュー熱が再燃したのでなんとなーく舞台にも興味を持ち、キャストビジュアルを見て「!?」、うっかり初演のDVDをポチって再生して「!?!!!??!!!?」、そのまま再演のライブビューイングチケットを購入、伝説を目の当たりにして「ええ、控えめに言って最高でした^ ^」という流れです。

何に驚いたかって、そりゃもう「影山まじ影山」という点ですよね。ここ「及川さんまじ及川さん」とか「嶋田マートまじ嶋田マート」でもいいんですけど、同じような流れ辿った人きっといっぱいいるんだろうなぁ。私、今「青学7代目やべぇな」のとこです。

 

キャラクターはだいたい無事

自分の好きな漫画やゲームが実写化or2.5次元化“されてしまう”。

そんな時、自分が見に行くにしろ行かないにしろ、どうしても気になってしまうのが「自分の推しがアレなことになってないか」ということだと思います。だから、ここで舞台を見ていないハイキューファンの方々にお伝えしたい。

あなたの推し、無事でしたよ!!

今回は烏野、青葉城西、町内会の面々が登場しますが、キャラクターの再現度や役者さんの演技力については全員問題ないと思います。推しが理不尽に「ナニアレw」とか言われるようなことにはなっていないです。むしろ、本当によくキャスティングしたなあと思う人ばかり。

たとえば東峰旭役の冨森ジャスティンさん、一見「旭さんってハーフだっけ?」と思うかもしれませんが、舞台では見た目から仕草からまじで旭さんなんですよ。あと、及川徹役の遊馬晃祐さんは初演が俳優デビューだったらしいのですが、よくこんな人見つけてきたなとかいうレベルじゃなく、むしろこの人よくそれまで世間に見つからなかったなと思うくらい無駄にキラキラが散乱してた。銀幕越しにそれ浴びて、映画館出るとき虚空を見つめながら「及川さんはおったんや…」て言ってる人いっぱいいた。

個人的な尺度でいうと、私はニコニコ動画テニミュが流行っていた時代の跡部加藤和樹さん)は「跡部様まじ跡部様」と思ってたんですが、それに匹敵するレベルで影山まじ影山だし、他にもそのくらいの再現度のキャラが結構いました。

変な話、めっちゃ似てるラルクのモノマネ見てるみたいな感覚ある。

ただし、縁下だけは、おそらくお芝居のバランスをとるためだと思いますが、キャラクターや立ち位置が若干変更されています。ここは個人的に少し残念だったところ。でも後続のストーリー展開に大きな支障が出るほどではないので、次回以降の公演に期待したいです。もしかしたらこの変更、今後の使いようによっては舞台版の胸熱ポイントになるかもしれない。

 

ストーリーは大筋なぞってる

「キャラ同士の細かいやりとりや試合を積み重ねてこその関係性なのに、2時間やそこらでおさめるなんて無理」。それはほんとそうで、漫画でいうところの読み切り型な舞台はそこは不利です。でも原作が週刊連載漫画なだけあって短期的な引きやフックも考慮して物語が作られてるので、ある程度切り取ってもやっぱ面白いんだなあって。

で今回の脚本ですが、様々な制約の中での最大公約数という感じで、ちゃぶ台ひっくり返したくなるような改変はなかったです。「あの台詞聞きたかったのにー!」っていうところはいくつかあったけど、大切なところは大体掬ってくれていて、概ね満足できました。でも「俺の後頭部に」のくだりは見たかった。あそこは意外さもあってキャラ描写として結構重要なシーンと捉えてたので。あと、潔子さんがいない。仕方ないけど、いない…!!言い出したらあれもこれも出てきちゃう、くらいにはカットされてる。原作でいうと1〜3巻、アニメでは1〜10話にあたります。

一番最初にDVDで見たときは原作のいいところを切って繋げたダイジェストみたいに感じたんですが、これはおそらく演出や演技によるところが大きくて、再演ではもっと場面ごとのメリハリ、雰囲気の緩急や濃淡がついていたのでそれほど気になりませんでした。(もしかしたらこちらがテンポに慣れてしまったのかも)

 

歌わないけど踊る

よろしければ、まずはこちらをご覧ください。再演のゲネプロ(リハーサル)映像です。

 

youtu.be

 

これだけでも舞台舞台してて「うっ」となる方がいると思います。

演技が大げさ!なんで急に踊り出すの!?なんでポーズとるの!?もっと普通でいいのに!!

わかる、わかります。影山は試合中にステップ踏んだりしない。逆にスガさんの髪の色は原作に忠実なんだけど違和感あったりしますよね。DVD見てて後ろから家族に「なんで一人だけおじいちゃんおるん」って言われても「スガさんやで」としか言えない(答えになってない)。

これは予想していたけど、試合表現に占めるダンス要素は結構多いです。それ以外にも、いかにもな舞台的違和感はそこそこ強め。なんかわからないけど知り合いが出てる演劇で身内のがむしゃらな姿を観てる時みたいな感覚もちょっとあって、苦手な人もいるかも。テニミュとかのほうがそのへんの抵抗感は弱い気がしている。

しかも、この舞台はプロジェクションマッピングライブカメラなどの新しい技術を取り入れる一方で、すっごいアナログな演出手法を使ってきたりもするので、こっちの受け入れ態勢が整ってなくて結構びっくりする。日向の速さの表現とか目を疑ったもんね。まじかーーー!!!ってなる。いい意味でも悪い意味でも、印象に残るんだよなぁ。この人力具合が肌に合う合わないのひとつの分岐点になってると思う。人によってはかなり頑張って向こうの文脈に飛び込まないといけないです。

パンフを読むと、演出やダンス、フォーメーションなどは俳優さんたちから出てくるものやディスカッションを通じて作り上げたところが多いようで、なんだかワークショップっぽい。ポージングとか自分でやってみるとわかるけど意外とバリエーションないし超絶恥ずかしいから、それ乗り越えてひとつの劇を作り上げてるってことはやっぱ2.5次元の人たちってただの柔なイケメン俳優じゃないんだなぁ。これ本当にすごいことだと思うんです。しつこいけど、人前で「ぼくのかんがえたかっこいいポーズ」いくつかやってみたらわかる。カンパニー感溢れてたのも納得。

「今誰々は前衛にいないから〜」みたいなこと考えながらシーン作ってくの、ほんと部活みたいで、本人たちも思い入れが強まるだろうなぁ。というようなことを考えてたらどのシーンも愛おしく見える。かも。

 

原作を知らなくても楽しめる

と言いたいところですが、原作を知らないより知っていたほうがさらに楽しめる演出です。読んだことのない方はぜひ、原作から入ることをおすすめします。

普通に面白くてクセがないので、お茶漬けみたいにサラサラ読めます。社会人になってから、それがどんなにありがたいことかわかったよね…。アニメも原作のイメージを損なうことなく丁寧に作られているのでおすすめです。1話だけならGyaoなどの配信サイトで無料で見れます。

gyao.yahoo.co.jp

 

舞台版は合わない人もいると思いますが、箱推し体質の方は楽しめるような気がします。私はV6ファンなんですけど。「やだ…ハイキューもコートの中6人…どれだけ6人組すきなの…」って思ってたけど、そういやV6のVはバレーボールのVだったって最近気づきましたよね。あと、シンメやコンビ好きの方。そんな方には是非オススメしたいです。

舞台上で…同じユニフォームに身を包んだ若い子たちが…ひたむきに一つの目標に向かって…恥も外聞もなく全力出して駆け回ってるんやで…。セッターが…最強コンビのスパイカーに…トスを上げるんやで……!!そんで、そんでさ!!スパイカー役の俳優さん5歳からずっと芸能界で活躍してる元天才子役しっかりした21歳(166cm)でさ、対するセッター役の俳優さん18歳でデビューしたまだ経験が浅くてちょっと変わり者眼光鋭い22歳(180cm)で!なんの因果かそんな正反対の二人が出会って!!凸凹コンビさながらに!!!ハイキューという作品を引っ張ってってるわけ!!!!

話が逸れましたが、この勢いで語りたいコンビが他にもいっぱいいる。それって演劇の楽しみ方じゃないと言われそうだけど、でもやっぱりファンって、役者さんがその時そのタイミングでひとつの役に出会ったその意味を、どうしても考えずにはいられないですよね。

で彼らがほんとなんのスポーツだってくらいめっちゃ動く。役者さんみんな汗だく。ひたむきさとか一生懸命さとか青春とか大好きだから、もうそんな集団見てるだけで泣けてきちゃうんですよね…。なんらかのグループやチームが好きな方は、なんとなく感じ入るところがあると思います。

あ、あと腕の筋とか好きな方にもおすすめします。

 

音ハメ地獄

この舞台、音楽がやばい。先にアニメ版の話をすると、そちらは原作のイメージ通り、期待以上の音楽がつけられてます。第1話の回想からのオーバーラップで日向が最初にとぶとこの流れ、ホント鳥肌立ちましたよね…「突破口」大好き。アニメ版の劇伴は原作のイメージに寄り添い、雰囲気や時間の流れに緩急をつけ、ストーリーを盛り立てる最高の音楽だと思ってます。

それに対して舞台版の音楽は和田俊輔さんなんですが、こちらは盛り立て役でありつつ、舞台上を支配する王様でした。個人的にはお芝居と音楽のハマり具合かなり見応えあった。というか、シーンによってはもう音楽に合わせて台詞を言っていると言ってもいいくらい。それに気づいてからは音ゲーやってる人見てるみたいな気分になりましたよね。何これズレたらどうするの。こわい。

実際には演技だけじゃなくてプロジェクションマッピングや音響照明すべてが同期してるわけで、まさに「歌のないミュージカル」。ミュージカルはある点では感情表現が歌に縛られるわけですが、この舞台はミュージカルでもないのに台詞にタイミングの制約があって、ただそれが若い俳優さんたちの瞬発力を大いに引き出している。これ、すごくいい巡り合わせだなあと思いました。

想像の100倍くらい音楽ありきの舞台だったのでなんでこんなことに…と思ったら、再演パンフのウォーリー木下さんのコメントを読んで納得。

和田くんがすごかったのは、試合シーンのデモに全部自分で台詞も入れて持ってきたんですよ。この曲のこのタイミングでこの台詞を言って、バシッとボールを打って…っていうのがもうそこにある。

もう演出しちゃってる。作曲家の所掌範囲を超えてる。最高。

パンフでは稽古場での作業はミュージカルを創るのに近かったと書かれていますが、ひょっとしたらこれ、音楽とのハマりによる快感を追求しているという点ではファンがアニメや原作の素材を使ってMADを創る作業にも近かったんじゃないかなぁ、と思いました。あれも、ひとつの解釈を通した音楽優位の再構築なんですよね。音にハマった時の快感を使って観てる側の感情を煽ろうとする。私はちょうど煽られ世代なんで、非常に気持ちよかったです。そして素材が生身の人間であることに何度でも驚く。その点では、フィギュアスケートのプログラムにも近いかな。

 

原作の絵が投影される

「ハイパープロジェクション演劇」と銘打ってるだけあって、劇中は後ろのホリとか舞台の床に映像が映し出されるのですが(雨シーンの足元は裏方さんのエゴが出ててすごく好き)、今回の公演では原作の絵や台詞が投影されることがあります。

正直最初に思ったのは「どこかの層にケンカを売っている」。

漫画の力を演劇で使っちゃってる

え、それダメでしょ、ずるいでしょ!!と思う自分と、いいぞもっとやれ!!と思う自分がいました。最終的には後者が勝ったけど。これもMADの感覚と一緒なんですよね。だってやっぱ、台詞が文字で出てくると違うんだよ。文字に感情が宿って見えるっていうか。原作絵が出てくると思い入れも強くなるし。まぁそれなら漫画読めばいいんだけど、逆に漫画だと音も、音楽も流せないんだよね。ボールとシューズ音があるだけで臨場感が全然違う。「俺が居ればお前は最強だ」って言ったらやっぱ音楽流れてほしいけど、漫画じゃ無理だから。漫画でできないことの敵討ちを、舞台で俺らがやるぜ!ではなくて、漫画も一緒に連れてきてやってくれた感じがあった。

特にオープニングは原作と、俳優と音楽と、関わる人の想いと思惑とがすべてが綺麗に合わさったコラージュのようで、個人的にはここだけでも観てよかったと思いました。

 

最後に

最近は舞台公演の映像がネットで見られるのですね。演劇はなんだかんだチケット取りにくいし金銭面、学校や仕事の都合、体調など様々な事情で行きたくても行けない人も多いと思うので、こうした取り組みは今後もっと流行ってほしいなぁ。